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07 楽しみ
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「あのね。私はもうすぐ、ジークの鍛え上げられた肉体の筋肉を堪能出来る初夜が、もうすぐそこっていうこの時に、絶対に婚約解消なんてしたくもないし、石に齧りついたとしてでも、絶対に死にたくなんてないのよ!! 婚約してからというもの。十年もの長い間、結婚する時を楽しみに待って、ずっとずっと……キスだけの関係だって、我慢をしていたのよ!! ジークの美しい鍛えられた身体を隅々まで愛でる夜を、もし死ぬんだとしたなら、その前に一回は絶対に体験したいの!! 良い? 死んでしまうというのならその前に、私にその素晴らしい肉体を愛でさせて!!」
「え。あ。う……うん。わかった……」
私のこんな私欲にまみれた欲望を知らなかったジークが驚き戸惑い、有り得ない程の激しい勢いに押されて思わず頷いてしまったのはわかってはいるけど、私だってここまで明け透けに言って、もう引くつもりはない。
先程勢いでしてしまっただろう肯定を、これから先も有効に活用させて頂く。
「私だけのために、ジークが身体を鍛えた訳じゃないことは、知ってるけど……ずっとずっと、本当にずっと。心から、楽しみにしていたのよ!! 苦手だった淑女教育だって、優秀なジークとお似合いだと言われて結婚するためにと思って、死ぬほど、頑張ったし!! ここで、その全てが何もかもダメになってしまうなんて、耐えられない!! 絶対に、嫌!!」
「そ……そうなんだ。それは、知らなかった」
さっきまで憔悴して真っ青な顔色をしていたはずのジークは、あけすけな私の正直な欲望を初めて聞き照れているのか。若干、頬に赤みが差して来た。
それを手放しで喜んで良いところなのかは、私も迷うところだけど。
もう後から思い返せば、死にたくなるくらい恥ずかしくなることを言っていたとしても、なんだって良いわ。
ジークがこれからも生きようとする気力を、少しでも取り戻してくれると言うのなら。私は痴女だって道化にだって、何にだってなれる。
それに、私は嘘はひとつも言ってない。
ジークと甘い夜を過ごしたいというのは、心からの私の願いだ。というか、結婚式後で、彼と二人でイチャイチャする蜜月だって、本当に本当に心から楽しみにしていた。
それが、こんな良くわからないことでダメになってしまうなんて、私のすべてがもう耐えられない。
「わかったわ……もう、本当に訳がわからないけど、これから何か私に悪いことが起きるんでしょう? ……私本人が、なんとかするから、ジークは心配せずに、ここで安心しててくれたら良いから。良い?!」
「……え? レティシアが? 自分で……? でも、それは……」
か弱き女性は守られるものであるという、古風な考えを持つ騎士ジークは、彼にとっては守るべき存在の私が、自分を救うために動くと言っていることを聞いて、渋っているようだ。
そういう騎士道精神の持ち主なところも私から見ると、とても可愛くて好きなので、殊更彼の前では私はか弱い令嬢演出をすることを躊躇わないし厭わなかった。
弱い振りをして、よりジークに愛されるなら、いくらだってしても良い。
けど、世界一大好きな彼と、別れるかどうかの瀬戸際で、意味のない猫を被っている場合ではないのは……確か。
「ねえ。ジーク。聞いて。私がジークを好きになってから、何年経ったと思う? なんと、十年よ! 二桁越えている年数よ! いよいよ募りに募らせたジークへの積年の想いが、成就するっていうこの時に……絶対に、絶対に。私は、別れないからね!!」
「え。あ。う……うん。わかった……」
私のこんな私欲にまみれた欲望を知らなかったジークが驚き戸惑い、有り得ない程の激しい勢いに押されて思わず頷いてしまったのはわかってはいるけど、私だってここまで明け透けに言って、もう引くつもりはない。
先程勢いでしてしまっただろう肯定を、これから先も有効に活用させて頂く。
「私だけのために、ジークが身体を鍛えた訳じゃないことは、知ってるけど……ずっとずっと、本当にずっと。心から、楽しみにしていたのよ!! 苦手だった淑女教育だって、優秀なジークとお似合いだと言われて結婚するためにと思って、死ぬほど、頑張ったし!! ここで、その全てが何もかもダメになってしまうなんて、耐えられない!! 絶対に、嫌!!」
「そ……そうなんだ。それは、知らなかった」
さっきまで憔悴して真っ青な顔色をしていたはずのジークは、あけすけな私の正直な欲望を初めて聞き照れているのか。若干、頬に赤みが差して来た。
それを手放しで喜んで良いところなのかは、私も迷うところだけど。
もう後から思い返せば、死にたくなるくらい恥ずかしくなることを言っていたとしても、なんだって良いわ。
ジークがこれからも生きようとする気力を、少しでも取り戻してくれると言うのなら。私は痴女だって道化にだって、何にだってなれる。
それに、私は嘘はひとつも言ってない。
ジークと甘い夜を過ごしたいというのは、心からの私の願いだ。というか、結婚式後で、彼と二人でイチャイチャする蜜月だって、本当に本当に心から楽しみにしていた。
それが、こんな良くわからないことでダメになってしまうなんて、私のすべてがもう耐えられない。
「わかったわ……もう、本当に訳がわからないけど、これから何か私に悪いことが起きるんでしょう? ……私本人が、なんとかするから、ジークは心配せずに、ここで安心しててくれたら良いから。良い?!」
「……え? レティシアが? 自分で……? でも、それは……」
か弱き女性は守られるものであるという、古風な考えを持つ騎士ジークは、彼にとっては守るべき存在の私が、自分を救うために動くと言っていることを聞いて、渋っているようだ。
そういう騎士道精神の持ち主なところも私から見ると、とても可愛くて好きなので、殊更彼の前では私はか弱い令嬢演出をすることを躊躇わないし厭わなかった。
弱い振りをして、よりジークに愛されるなら、いくらだってしても良い。
けど、世界一大好きな彼と、別れるかどうかの瀬戸際で、意味のない猫を被っている場合ではないのは……確か。
「ねえ。ジーク。聞いて。私がジークを好きになってから、何年経ったと思う? なんと、十年よ! 二桁越えている年数よ! いよいよ募りに募らせたジークへの積年の想いが、成就するっていうこの時に……絶対に、絶対に。私は、別れないからね!!」
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