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08 好き
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そう一気に捲し立てて、はあはあと荒い息をついた私に、今まで呆気に取られた様子だったジークは、やっと小さくだけど笑みを浮かべてくれた。
「はは……レティシア。僕も、可愛い君のことが大好きだ。そういう、僕が全く予想もしないような突拍子もないことを言い出すところも……全部全部好きだ。僕には、君以外……考えられない」
「私も、好きよ……ジーク。だったら」
「でも、君を目の前で喪うなんて、もう……耐えられないんだ」
「ジーク……私の言いたいことだけ言って、ごめんね。泣かないで」
また潤んだ金色の目から涙を零しはじめたジークの頬を、私は持っていた水色のハンカチで拭いた。
「情けないところを見せて、ごめん。レティシアが、好きだ。また君をあんな風に喪うなんて、耐えられない」
ジークは悲しげに啜り泣くようにして、そう言って長い時間、泣き続けた。
彼の隣で背中を優しく撫でていた私はと言うと、良く分からぬ状況を特に絶望したり、落ち込んでいたりもしていなかった。自分でも驚いてしまうくらいには、冷静だった。
落ち込んで、悪い事態が良い方向に向かうのかと言われたら、私だってそれを検討しなくもないんだけど。絶対、そんなことなんてないだろうし。
そんなことより、彼をこんな目に遭わせた犯人を見つける方法で。
現在私には全く状況が掴めていないけど、落ち込んでいるジークから言葉を引き出して……作戦を練らねばならない。
ここ十年。
主にジークに好かれたいというためだけに使われていた、状況に応じて作戦を練り、不慮の事態さえも計算に入れた完璧な計画を策定し実行する能力を、大事な今こそ使うべきなのかもしれない。
私の涙ぐましいジークの隣に居るための十年間の頑張りをすべて無にするなんて、例えこの国の頂点に立つ王様が犯人であったとしても……絶対に許さない。
ずっと啜り泣くようにして泣いていたジークがようやく少し落ち着いて、ポツリポツリと言葉を絞り出すようにして、彼が味わった地獄にも似たこれまでの経緯を少しずつ話してくれた。
そうして教えてくれた、ジークの身に起こっていた私の知らない、とても信じ難い幾つかのこと。
もうすぐ私は、ジークの親友であるアルベールと恋仲になって、彼を裏切る。そして、世間的にはとてもとても許されない関係性の二人は、傷付いたジークに見せつけるようにして、死後の世界で結ばれるためにと共に心中を選ぶことになる。
そして、そういった悲劇の一連の流れを、今ここに居るジークは、何度も何度も数え切れない程に繰り返した後らしい。
けど何も彼だって、ただ悲劇が起こることを、手をこまねいて見ていた訳ではなかった。
もしかしたら、こうすれば上手くいくかもしれないと思い、繰り返す中で何度も選択肢を試行錯誤して選ぶことを繰り返したらしいけど、最後に行く着く先はどうしても同じ結果になってしまうらしい。
そして……ジークにとっては直近の悲劇の最後で、私にとっては三日前のあの時に戻る前。
とても……口には出せないような酷い死に方の私を、彼は目の当たりにしてしまった……だから、それを見せつけられたジークは、ついには心を折られてしまったらしい。
これまでずっと、裏切ってしまう当の本人である私には言えなかった事を、ようやく言えたと思い安心したのか、心にあった重荷を少しは降ろせたらしいジークは泣き疲れて、そのまま眠ってしまった。
ここのところ食事も食べていないし、ろくな睡眠も取れていなかったらしいからゆっくり眠って欲しい。
「はは……レティシア。僕も、可愛い君のことが大好きだ。そういう、僕が全く予想もしないような突拍子もないことを言い出すところも……全部全部好きだ。僕には、君以外……考えられない」
「私も、好きよ……ジーク。だったら」
「でも、君を目の前で喪うなんて、もう……耐えられないんだ」
「ジーク……私の言いたいことだけ言って、ごめんね。泣かないで」
また潤んだ金色の目から涙を零しはじめたジークの頬を、私は持っていた水色のハンカチで拭いた。
「情けないところを見せて、ごめん。レティシアが、好きだ。また君をあんな風に喪うなんて、耐えられない」
ジークは悲しげに啜り泣くようにして、そう言って長い時間、泣き続けた。
彼の隣で背中を優しく撫でていた私はと言うと、良く分からぬ状況を特に絶望したり、落ち込んでいたりもしていなかった。自分でも驚いてしまうくらいには、冷静だった。
落ち込んで、悪い事態が良い方向に向かうのかと言われたら、私だってそれを検討しなくもないんだけど。絶対、そんなことなんてないだろうし。
そんなことより、彼をこんな目に遭わせた犯人を見つける方法で。
現在私には全く状況が掴めていないけど、落ち込んでいるジークから言葉を引き出して……作戦を練らねばならない。
ここ十年。
主にジークに好かれたいというためだけに使われていた、状況に応じて作戦を練り、不慮の事態さえも計算に入れた完璧な計画を策定し実行する能力を、大事な今こそ使うべきなのかもしれない。
私の涙ぐましいジークの隣に居るための十年間の頑張りをすべて無にするなんて、例えこの国の頂点に立つ王様が犯人であったとしても……絶対に許さない。
ずっと啜り泣くようにして泣いていたジークがようやく少し落ち着いて、ポツリポツリと言葉を絞り出すようにして、彼が味わった地獄にも似たこれまでの経緯を少しずつ話してくれた。
そうして教えてくれた、ジークの身に起こっていた私の知らない、とても信じ難い幾つかのこと。
もうすぐ私は、ジークの親友であるアルベールと恋仲になって、彼を裏切る。そして、世間的にはとてもとても許されない関係性の二人は、傷付いたジークに見せつけるようにして、死後の世界で結ばれるためにと共に心中を選ぶことになる。
そして、そういった悲劇の一連の流れを、今ここに居るジークは、何度も何度も数え切れない程に繰り返した後らしい。
けど何も彼だって、ただ悲劇が起こることを、手をこまねいて見ていた訳ではなかった。
もしかしたら、こうすれば上手くいくかもしれないと思い、繰り返す中で何度も選択肢を試行錯誤して選ぶことを繰り返したらしいけど、最後に行く着く先はどうしても同じ結果になってしまうらしい。
そして……ジークにとっては直近の悲劇の最後で、私にとっては三日前のあの時に戻る前。
とても……口には出せないような酷い死に方の私を、彼は目の当たりにしてしまった……だから、それを見せつけられたジークは、ついには心を折られてしまったらしい。
これまでずっと、裏切ってしまう当の本人である私には言えなかった事を、ようやく言えたと思い安心したのか、心にあった重荷を少しは降ろせたらしいジークは泣き疲れて、そのまま眠ってしまった。
ここのところ食事も食べていないし、ろくな睡眠も取れていなかったらしいからゆっくり眠って欲しい。
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