『丘/世紀末症候群‐短編』
アトランティス大陸が海に沈んでから1万8千年後、地球にはわずか400万人の住む島国「ホツマ(秀真)」を残して見渡す限りの大海原が広がっている。島の周囲には捻くれ絡みつく樹木、刺々しい茨等の下生えや毒々しい食虫植物が蔓延(はびこ)り、人間はおろか野生動物の棲息にも過酷な環境だ。支配層の一部は高度な科学技術を駆使する都市国家を形成し、大部分の人々は限定的な生存環境の中で生存している。断崖絶壁の洞窟に住まう丘の住人は、獰猛な肉食昆虫の棲息する立入禁止地帯を、恐れることなく往来する特異な死生観を抱く人々だった。丘の一帯を治める龍口祐乃助(タツノクチ・ユウノスケ)は、先祖代々伝わる古文献を繙(ひもと)き、瞑想に耽る日々を送っている。また、森林パトロール隊4219分署署長の鬼村半兵衛(オニムラ・ハンベエ)は、国家中枢部の役職を兼務し、周囲にはその気振(けぶ)りも見せず半ボケを装いながら、定年間近の分署署長として後継者選びにあれこれ考えを巡らしている。森林パトロール隊隊員2名がパトロール中に不可解な出来事に遭遇、その日を境に都市国家を中心に島国を形成するホツマに異変が起こる。観測機搭乗員が洋上に巨大な大陸の浮上してくるのを目撃、その一報は島中の人々を大いなる期待と共に果てしない不安へと駆り立てる。人口問題解消ならびに文明発展の可能性は――実行力ある為政者を選択できるかどうか――全島民の意志によって決まるからだ。
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