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第73話『チェックメイト』
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「極光加速収束砲《ワール・エンド・クラスター》。君は、採掘都市国家が有するあの超長距離殲滅兵器なら、あの化け物を殺しきれると思うか。戦闘の専門家《スペシャリスト》としての意見を聞きたい」
「俺に助言を求めて良いのか? 俺は、明確に、あんたの敵だぜ」
「かまわない。私は判断をよく間違える。私より、君の言葉の方が信頼できる」
「不可能だ。いや、違う。現時点で、もう、極光加速収束砲《ワール・エンド・クラスター》は使用できない」
「不可能でなく、使用できない。――すまない、説明を願う」
「――ギルドマスターの破壊工作がすでに終わっている頃合いだからな」
「――……そうか、私達が相手にしていたあの4人は、ギルドマスターが極光加速収束砲《ワール・エンド・クラスター》を破壊するまでの間の時間稼ぎの、陽動」
「それは違う。あの4人は陽動ではない、本隊。陽動にあんな過剰戦力は投入しない。どっちも本命。シンとかいう使い魔も同程度の脅威と見積もっているはずだ」
「そうだった。本当に、遊びも無駄もない、そんな指し手をする男だったな」
「俺は、あんたの方が好きだけどな。アイツは、いけすかねぇクソ野郎だ」
「はは、まったくだ。君とは良い酒が飲めそうだったのに、その機会もなく残念だ」
「あんたが使おうとしていた、極光加速収束砲《ワールド・エンド・クラスター》。その兵器の本当の名は、終末世界災厄砲《ワールド・エンド・ディザスター》。そいつは、人の連帯を断ち切り、文明世界を破壊する災厄だ」
「人が正しく管理、運用し、抑止力として自衛のために限定すれば……」
言葉にしながら自己矛盾に気づく。
そんなことは、不可能なのだ。
「もし、王都が同じ兵器持ってたら、あんたは信じられたか」
「……――無理だろうな」
適切に管理運用し、用途は自衛に限定。
それが不可能なことを証明してしまった。
皮肉なものだ。
きちんと考えれば、普通に出せる結論。
極光加速収束砲《ワールド・エンド・クラスター》は『封印指定遺物』。
採掘国は自主的にこの兵器を封印していた。
本当に国益をもたらす遺物なら封印されるはずがない。
物事には必ず意味があり、理由がる。
ソレを理解できるか、できないかは別として。
私が平和ボケと言って排除しようとした穏健派。
今、彼らの存在の意味を理解する。
彼らも自国のために行動していただけ。
一度でも使えば全世界が敵になる。
だから国が衰え、飢えても、なお使用を拒んだ。
それは決して、道徳の話ではなかった。
長期的な視点に立った、国益の話だったのだ。
「超長距離から一方的に他国を消滅させるトンデモ兵器。そんなモンが存在することが世界に知れ渡ったら、もう二度と大勢の人間が一箇所に定住して交流し文化を育むことは不可能になる。国、村、社会、全部消える。ゆるやかに滅びの道へと進む」
「破壊力ではなくその兵器の概念、存在自体が、人に災厄をもたらすということか」
「それによ、難しい話は抜きにしてもだな、俺は容認できねぇ。……俺の国は傭兵業でメシ食ってる国だ。あんなモンを認めたら、俺の民は、職を失い、野垂れ死ぬ。一応な、俺も、こんなんでも王なんだよな。民の不利益になること、できねぇんだわ」
「それは、そうだったな。ベオウルフ、君も王だ。自国の利益を最優先に考えるのは、当然のことだ。……王としての格は、私より、君のほうが上だったようだな」
「私にもう駒はない。――投了《リザイン》。敗北だ」
「終わりってのは、……寂しいもんだな」
「そうだな」
「俺に助言を求めて良いのか? 俺は、明確に、あんたの敵だぜ」
「かまわない。私は判断をよく間違える。私より、君の言葉の方が信頼できる」
「不可能だ。いや、違う。現時点で、もう、極光加速収束砲《ワール・エンド・クラスター》は使用できない」
「不可能でなく、使用できない。――すまない、説明を願う」
「――ギルドマスターの破壊工作がすでに終わっている頃合いだからな」
「――……そうか、私達が相手にしていたあの4人は、ギルドマスターが極光加速収束砲《ワール・エンド・クラスター》を破壊するまでの間の時間稼ぎの、陽動」
「それは違う。あの4人は陽動ではない、本隊。陽動にあんな過剰戦力は投入しない。どっちも本命。シンとかいう使い魔も同程度の脅威と見積もっているはずだ」
「そうだった。本当に、遊びも無駄もない、そんな指し手をする男だったな」
「俺は、あんたの方が好きだけどな。アイツは、いけすかねぇクソ野郎だ」
「はは、まったくだ。君とは良い酒が飲めそうだったのに、その機会もなく残念だ」
「あんたが使おうとしていた、極光加速収束砲《ワールド・エンド・クラスター》。その兵器の本当の名は、終末世界災厄砲《ワールド・エンド・ディザスター》。そいつは、人の連帯を断ち切り、文明世界を破壊する災厄だ」
「人が正しく管理、運用し、抑止力として自衛のために限定すれば……」
言葉にしながら自己矛盾に気づく。
そんなことは、不可能なのだ。
「もし、王都が同じ兵器持ってたら、あんたは信じられたか」
「……――無理だろうな」
適切に管理運用し、用途は自衛に限定。
それが不可能なことを証明してしまった。
皮肉なものだ。
きちんと考えれば、普通に出せる結論。
極光加速収束砲《ワールド・エンド・クラスター》は『封印指定遺物』。
採掘国は自主的にこの兵器を封印していた。
本当に国益をもたらす遺物なら封印されるはずがない。
物事には必ず意味があり、理由がる。
ソレを理解できるか、できないかは別として。
私が平和ボケと言って排除しようとした穏健派。
今、彼らの存在の意味を理解する。
彼らも自国のために行動していただけ。
一度でも使えば全世界が敵になる。
だから国が衰え、飢えても、なお使用を拒んだ。
それは決して、道徳の話ではなかった。
長期的な視点に立った、国益の話だったのだ。
「超長距離から一方的に他国を消滅させるトンデモ兵器。そんなモンが存在することが世界に知れ渡ったら、もう二度と大勢の人間が一箇所に定住して交流し文化を育むことは不可能になる。国、村、社会、全部消える。ゆるやかに滅びの道へと進む」
「破壊力ではなくその兵器の概念、存在自体が、人に災厄をもたらすということか」
「それによ、難しい話は抜きにしてもだな、俺は容認できねぇ。……俺の国は傭兵業でメシ食ってる国だ。あんなモンを認めたら、俺の民は、職を失い、野垂れ死ぬ。一応な、俺も、こんなんでも王なんだよな。民の不利益になること、できねぇんだわ」
「それは、そうだったな。ベオウルフ、君も王だ。自国の利益を最優先に考えるのは、当然のことだ。……王としての格は、私より、君のほうが上だったようだな」
「私にもう駒はない。――投了《リザイン》。敗北だ」
「終わりってのは、……寂しいもんだな」
「そうだな」
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