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第75話『一人の王』
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…………血……ひやりとした、床の感触。
……私は……負けたのか。
使用した確殺型迎撃遺物は3つ。
『魔弾の手套』:因果を逆転、必ず先手を取る
『小さな鍵』:この本に触れたあらゆる物を本の世界に封じる
『奈落の小片』:落ちるという概念しかない空間に通ずる洞《アナ》
まず、『魔弾の手套』でベオウルフの神速に先んじる。
因果逆転。光速を超える斬撃であっても先手は確定。
次に、『小さな鍵』が、曲刀を囚《とら》える。
瞬時に触れた対象は『小さな鍵』に封じ込められる。
最後に、『奈落の小片』に『小さな鍵』を落とす。
これで、……勝利できるはずだった。
・・・・・・・・・・。
これは、自信のある……必勝戦法。
だったんだけどなぁ。はは……。
シンという、召喚した使い魔。
ヤツは復活と復活時超強化のスキルを有する。
『黄金道十二宮』『救世主福音書』
つまり、殺せば殺すほど強くなる。
長期戦は圧倒的に不利。
だから初手で本に封じ奈落に落とし無力化。
……つもり、だったんだけどなぁ。
傭兵王の鉄の曲刀――三日月刀に、断ち斬られた。
…………完全なる決着。私の敗北。
この流血の量。……もって、あと18分程度。
13分後には血液不足で意識の混濁が始まる。
自分の正確な死期がわかる。
ふふ……やはり、勉強しておいて良かった。
最後に語り合う時間をくれたということか。
ありがたい。私の自慢の友だ。
「……ベオウルフ。君の勝利だ。そして、私の、敗北だ」
「……十分にシンを屠《ほふ》れる、完璧な連携技だった。ハッたりでも、無謀でもない、ちゃんと考え、よく練られた、エゲツないほど確殺の連携技だ。……あんたがアイツとマジで対決しても、アレに勝てたんだろうなぁ……」
「お世辞はいい……、――――いや……やっぱり、お世辞でもいいから、君からの称賛の言葉は……聞きたいなぁ……私はね、ギルドマスターと居た冒険者時代……そして、王になったあとも、……本当の意味で……私を、認めてくれてる奴はいなかったよ……どこか、みんな、心の底で……馬鹿にしてるみたいでさ……そりゃまぁ……私だって……目を見りゃ、相手がどういう風に思っているかくらい、わかるよ……はぁ……まぁ、正直……それなりに、……そういうの、こたえたよね……ははっ」
「あんたの周りはクソ野郎ばかりだぜ。キザったらしいギルドマスター、あんたを侮り罵倒した冒険者時代の仲間、影でせせら笑っていた臣下、みんな、クソ野郎だ」
「はは……仕方ないさ、私は元平民……それに、実績、出せなかったからなぁ……」
「……俺が、あんたに勝った理由はただ一つ。それは、世界で一番、あんたに関心を持ち、興味を持ち、誰よりあんたに詳しい、採掘王殺しの、専門家《スペシャリスト》だからだ」
「君も、変わり者だな……私に関心を持ってくれたのは、世界で二人。……妻と、君……他の者が、私の名を出す時は、……はぁ……まぁ、もう、そんなこと……どうでも、いいか。……それは光栄だ……つまらない、人間だっただろ……叡者《えいじゃ》。……努力した凡才。そんな私に、興味を持ってくれて、ベオウルフ、君に、感謝だ」
「あんたの遺物を使った連携技。完璧だった。俺に曲刀《カムシーン》を抜かせたその事実だけでもあんたは大した戦士だ。その闘志に敬意を示そう。あの化け物も殺せた。俺がアレを打ち破れたのは、ちゃんとタネがある。物事には、必ず理由がある」
「……その手品のタネを聞かせてくれないか」
「単純な手品《トリック》だ。あんたの所有遺物《アーティファクト》はな、その特性、材質、弱点、……事前に調査済みだ。さらに、あんたの使える剣技、魔法、得た知識、行動パターン、そのすべてを完璧に予習。精神面の弱点も含め、完璧に対策した。まぁ……何の対策もせず、初見だったら殺されてたのは俺だったな、ははっ! まぁ、俺も俺で、死ぬほど勉強してんだよ。殺しの専門家《スペシャリスト》は、絶対に油断はしない。あんたと同じように、仕事の前には、可能な限り徹底的に準備をする。目の前の野蛮な男は、実は意外と勤勉な男だったんだぜ? 根っこのとこでは、あんたと、俺は似た者同士だったつーこったなぁ」
「似た者同士か。嬉しいよ……最高の褒め言葉だ。まぁ、……違うのは、私は……君と違って、勇敢じゃない。……だから、シンに対して確実な勝機がなければ……最初から、私は頭を下げ、君にお願いしていた……でも、君はきっと……完全な勝機がなくても……闘うのだろうね」
「……――俺は、自分の罪を自らの手で消し去ろうとしていた、あんたの心意気、決意を無にした。すまない。……だから、あんたを殺した俺は、あんたの代わりに、――――いや、それ以上に、完璧にアイツを、肉体だけでなく、心まで破壊し尽くし、討ち滅ぼしてみせよう。それが、……傭兵王流の筋の通し方ってもんだ」
「……ベオウルフ、私の罪の後始末を、……すまない。そして、ありがとう」
……私は……負けたのか。
使用した確殺型迎撃遺物は3つ。
『魔弾の手套』:因果を逆転、必ず先手を取る
『小さな鍵』:この本に触れたあらゆる物を本の世界に封じる
『奈落の小片』:落ちるという概念しかない空間に通ずる洞《アナ》
まず、『魔弾の手套』でベオウルフの神速に先んじる。
因果逆転。光速を超える斬撃であっても先手は確定。
次に、『小さな鍵』が、曲刀を囚《とら》える。
瞬時に触れた対象は『小さな鍵』に封じ込められる。
最後に、『奈落の小片』に『小さな鍵』を落とす。
これで、……勝利できるはずだった。
・・・・・・・・・・。
これは、自信のある……必勝戦法。
だったんだけどなぁ。はは……。
シンという、召喚した使い魔。
ヤツは復活と復活時超強化のスキルを有する。
『黄金道十二宮』『救世主福音書』
つまり、殺せば殺すほど強くなる。
長期戦は圧倒的に不利。
だから初手で本に封じ奈落に落とし無力化。
……つもり、だったんだけどなぁ。
傭兵王の鉄の曲刀――三日月刀に、断ち斬られた。
…………完全なる決着。私の敗北。
この流血の量。……もって、あと18分程度。
13分後には血液不足で意識の混濁が始まる。
自分の正確な死期がわかる。
ふふ……やはり、勉強しておいて良かった。
最後に語り合う時間をくれたということか。
ありがたい。私の自慢の友だ。
「……ベオウルフ。君の勝利だ。そして、私の、敗北だ」
「……十分にシンを屠《ほふ》れる、完璧な連携技だった。ハッたりでも、無謀でもない、ちゃんと考え、よく練られた、エゲツないほど確殺の連携技だ。……あんたがアイツとマジで対決しても、アレに勝てたんだろうなぁ……」
「お世辞はいい……、――――いや……やっぱり、お世辞でもいいから、君からの称賛の言葉は……聞きたいなぁ……私はね、ギルドマスターと居た冒険者時代……そして、王になったあとも、……本当の意味で……私を、認めてくれてる奴はいなかったよ……どこか、みんな、心の底で……馬鹿にしてるみたいでさ……そりゃまぁ……私だって……目を見りゃ、相手がどういう風に思っているかくらい、わかるよ……はぁ……まぁ、正直……それなりに、……そういうの、こたえたよね……ははっ」
「あんたの周りはクソ野郎ばかりだぜ。キザったらしいギルドマスター、あんたを侮り罵倒した冒険者時代の仲間、影でせせら笑っていた臣下、みんな、クソ野郎だ」
「はは……仕方ないさ、私は元平民……それに、実績、出せなかったからなぁ……」
「……俺が、あんたに勝った理由はただ一つ。それは、世界で一番、あんたに関心を持ち、興味を持ち、誰よりあんたに詳しい、採掘王殺しの、専門家《スペシャリスト》だからだ」
「君も、変わり者だな……私に関心を持ってくれたのは、世界で二人。……妻と、君……他の者が、私の名を出す時は、……はぁ……まぁ、もう、そんなこと……どうでも、いいか。……それは光栄だ……つまらない、人間だっただろ……叡者《えいじゃ》。……努力した凡才。そんな私に、興味を持ってくれて、ベオウルフ、君に、感謝だ」
「あんたの遺物を使った連携技。完璧だった。俺に曲刀《カムシーン》を抜かせたその事実だけでもあんたは大した戦士だ。その闘志に敬意を示そう。あの化け物も殺せた。俺がアレを打ち破れたのは、ちゃんとタネがある。物事には、必ず理由がある」
「……その手品のタネを聞かせてくれないか」
「単純な手品《トリック》だ。あんたの所有遺物《アーティファクト》はな、その特性、材質、弱点、……事前に調査済みだ。さらに、あんたの使える剣技、魔法、得た知識、行動パターン、そのすべてを完璧に予習。精神面の弱点も含め、完璧に対策した。まぁ……何の対策もせず、初見だったら殺されてたのは俺だったな、ははっ! まぁ、俺も俺で、死ぬほど勉強してんだよ。殺しの専門家《スペシャリスト》は、絶対に油断はしない。あんたと同じように、仕事の前には、可能な限り徹底的に準備をする。目の前の野蛮な男は、実は意外と勤勉な男だったんだぜ? 根っこのとこでは、あんたと、俺は似た者同士だったつーこったなぁ」
「似た者同士か。嬉しいよ……最高の褒め言葉だ。まぁ、……違うのは、私は……君と違って、勇敢じゃない。……だから、シンに対して確実な勝機がなければ……最初から、私は頭を下げ、君にお願いしていた……でも、君はきっと……完全な勝機がなくても……闘うのだろうね」
「……――俺は、自分の罪を自らの手で消し去ろうとしていた、あんたの心意気、決意を無にした。すまない。……だから、あんたを殺した俺は、あんたの代わりに、――――いや、それ以上に、完璧にアイツを、肉体だけでなく、心まで破壊し尽くし、討ち滅ぼしてみせよう。それが、……傭兵王流の筋の通し方ってもんだ」
「……ベオウルフ、私の罪の後始末を、……すまない。そして、ありがとう」
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