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「リタ、本当にいいのかい? 君は残ってたっていいんだよ?」

「私は大丈夫。どうしてもカナ様に一矢報いてやりたいの」

 私達は今、カナの屋敷に向かっている。せっかく逃げ出した所にまた戻る私をカルロは気遣ってくれてるが、私はカナが吠え面かく姿をどうしてもこの目で見たかった。ただ...

「あぁでも...ルイス王子の顔は見たくないんで、そっちはカルロにお願いしていい?」

「任せてくれ。もう二度とあのクサレ王子をリタの視界に入れないから」

 カルロがとっても頼もしい! ますます好きになる!

「さて、着いたようだ。リタ、準備はいい?」

「えぇ、いつでも」

 馬車を降りた私達はカナの屋敷の玄関の呼び鈴を押す。私はカルロの後ろに控えて顔を伏せる。屋敷に入った途端、

「カルロ様ぁ~♪ いきなりどうされたんですかぁ~?」

 カナが喜色満面で現れた。案の定、カルロしか目に映ってないらしく、後ろに控えている私の存在には気付いていない。

「カナ嬢、先触れも無しに済まないね」

「とんでもないですわぁ~♪ カルロ様ならいつだって大歓迎ですのよぉ~♪」

「実は...リタが行方不明になってね...探してるんだが、まだ見付からない...それでこうして何か手掛かりがないかどうか、知り合いを訪ねて回ってるんだが...カナ嬢、何か心当たりはないかな?」

「まぁ...そうなんですのね...それはとても心配ですわねぇ...残念ながら私は何も存じませんわ...お力になれなくて申し訳ございません...」

 そう言って、いかにも済まなさそうに顔を伏せるカナは大した役者だと思う。その化けの皮はもうすぐ剥がれるのだけど。

「本当に? 何も知らない?」

「え、えぇ、申し訳ありませんが...」

「これでも?」

 私は顔を上げてカルロの横に並ぶ。
 
「ぬなぁっ!? な、なんであんたがここに!? 地下室に閉じ込めたはずなのに!?...あっ!...」

 面白いくらい見事に引っ掛かってくれた。言質も取れたし大成功!

「カナ嬢を拘束しろ!」

「ハッ!」

「嫌ぁ~! カルロ様ぁ~!」

 カナはカルロの護衛に連れて行かれた。

 ざまぁ!


◇◇◇


 その後、ルイス王子も拘束されて一連の事件に幕が下りた。カルロが言っていた通り、カナとルイス王子は利害の一致で繋がっていた。

 私を誘拐したのはルイス王子が手配した賊で、カナは屋敷の地下室を提供するという役割分担だったらしい。

 カナとルイス王子に対する処罰は厳しいものになりそうだ。 

 被害者である私が厳罰を希望したからね!
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