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死神辺境伯、仲間になりたそうに見つめてみる
しおりを挟むごねて拗ねて半泣きになると、フィアツェンはようやく「アールツナイのやりたいようにさせよう」と酵母おこしの材料を用意してくれた。そしてただいまキッチンです!わあ、道具すっくなーい…。大丈夫!お鍋はある!なんとかなる!
てれれってててて!てれれってててて!と某有名クッキング番組のテーマソングを歌いながら包丁を……
「アールツナイ様、刃物は危ないですよ?」
取り上げられた…。うじゅう…と俺の中の8歳児が癇癪を起こす。よーしよしよし、大丈夫だぞアールツナイ、落ち着けー。
むむむ…たしかに小さいもんね、この手。包丁であの大きなリンゴを切れるかどうか……うーん、無理かなあ…。
「じゃあてをせっけんであらってからおてつだいしていただけましゅか?」
「「勿論です」」
リンクさんとレヒトさんは石鹸で手を丁寧に洗ってスタンバイ。双子が今日も天使のように優しい。
「ねっとうでびんをしょうどくします」
「ショウドク?」
ええ~…そこからかぁ、異世界。
「びんをおおきなおなべでにます。ぐつぐつふっとうさせてごふんくらい」
「はい」
リンクさんが手際よく大鍋を持ってきてお湯を沸かし始める。
「りんごをあらわないでざくざくきります。かわもへたもこにょくらいに」
「はい」
拳をぐっと握って見せると、レヒトさんは程よい大きさにサクサク切り始めた。
「ア…アールツナイ?俺は何をしようか?」
ソワソワとフィアツェンさんが仲間になりたそうにこっちを見ている。
「ふぃあてんさんは、さとうみずをつくってください。いちりっとる…えーと、えー……このおなべにはんぶんくらいのおみずに、おさとうをこのすぷーんろくはいくらいで……ぐつぐつにます!」
「了解した」
男子厨房に入らず…って言うんじゃないだろうけど。所在なさげにキッチンスタッフの人たちがオロオロしてるのは居た堪れないし……あっ、そうだ!
「あ…あの……」
「はいっ!なんでしょう!」
一番高いコック帽を被ったスタッフさんに声をかける。軍隊式に敬礼されちゃった…。
「いつものおにくをですね?」
「はっ!焼きますか!?」
「あの…なまのまま」
「生食はお勧めできませんッ」
ちがぁう!
「なまのおにくを、こう…ほうちょうでたたいてみんち…ひきにくにしてですね?」
「ひき…にく…?」
そこもぉ!?
「「ああ、わかりました。『肉団子』ですね」」
あっ!通じた!さすがリンクさんとレヒトさん!!でも『肉団子』って言った瞬間、キッチン中がザワザワした。えー、なんでぇ?
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