総理大臣 藤堂 光

椎名ほわほわ

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11話

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 話は少々前後する、これは光が総理大臣として最後の国連会議に出席する少し前の話──



 それは、お昼の12時。 突然TVやラジオから首相官邸からの直接放送が流れ始めた。


「どうも、国民の皆様、1894代目の日本国首相の藤堂 光です、お忙しい中ではありますが、ほんの少し、皆様のお時間を拝借させて頂きます」

 ここで光は一区切りおいてから、話を続ける。

「さて、国民の皆様もすでにご存知な方も多いと思われますが、先日国際連合より、『日本国首相は次回の国際連合に出席せよ、出席しない場合は日本を包囲する』との通達が日本に突き付けられております。 このため、私は現日本国総理大臣として、日本時間の5月11日に行なわれる国際連合会議に出席いたします」

 既にラジオやTVの前では殆どの国民が放送を聞いている。

「そして……多彩な方面から状況を確認し、予測を立てた結果、私は99%の確率で日本を出国した後に暗殺行為を受け、日本に生きて帰ることは……絶望的との予測が立っております」

 国民の多くが息を飲んだ。その予想にもだが、それでも行くと決めた光の行動にもだ。

「ですが、ここで私が国連の会議に出席せず、世界各国に日本を包囲されれば、国民の皆様を不安に陥れる事になり、精神的に多大な苦痛を強いてしまう事になります、それは国を預かる総理として許される判断ではございません」

 光の話は続く。この時の日本は、光の声以外の話声は一切聞こえないと言っていいほどであった。

「故に! 私が出向き、例え暗殺をされてしまったとしても! 皆様が向こうの世界に少しでも無事に向かえる様にする為に、私が今出来る事をさせて頂く所存であります。 それから、今は緊急事態でございますので、私の死亡が確認され次第、次の総理大臣が決まる事も確定しております」

 TVやラジオはただただ放送を冷酷に伝えるのみである。

「皆様の未来の為に、祖先の願いの為に、私が盾になれると言うのであれば、本望であります! そして、こたびの話を立ち上げた当人であるというのに、ここでほぼ離脱する事になってしまったこの卑怯者である私は、全ての国民の皆様にここで詫びねばなりません。真に申し訳ない! ──本来ならば、向こうの世界に向かった後に、あらゆる面倒事を片付けるまでは総理を勤め上げる覚悟でありましたが……それもほぼ叶わなくなり、真に無念としか言いようがございません……」

 そして最後の言葉。

「最後に国民の皆様にお願いがございます! どうか、向こうの世界に渡り、日本人の魂を存分に発揮して、大いに栄えていただきたい! そうなれば、ようやく長い祖先からの苦悩が報われるのです、それらを国民の皆様ひとりひとりに今託す事をお許し願いたい! やり遂げて下さい! それをきっと私は……それでは、日本のこれからを……頼む」

 そうして放送が終了した。放送が終了した後に、あまりにも大きなざわめき日本各地でが起きたのは言うまでもない。
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