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連載
番外編 与えた影響
「これでようやく今回の問題は本当の意味でケリが付いたか、ウンディーネ、ノームのお二人には協力に感謝する」
「いえ、こちらとしても非常に助かりました……罪なきものを投獄してしまったこちらの非をかなり軽減出来ましたから」
「うむ、ノームとしては罪なき者を罰する事を回避できたのは非常に大きい」
イフリート、ウンディーネ、ノームの当主が一同に介し、ガリッズが行った犯罪の洗い出し、トラップ屋敷となっていたガリッズの倉庫の解体、無実であるにもかかわらず濡れ衣を着せられ投獄されていた者達の開放、事件の真実を一般公表などといった仕事がようやく一段落したのだ。
「幸い、捕まった者達も獄中で手荒いことをされておらずにいたのは助かった」
「むしろ、投獄した側も『なんでこんなおとなしい奴が盗みを働いたのだ?』と疑問にも思っていたらしいですし」
「うむ、最初は禁固刑、禁固に飽きた者を労働刑ぐらいに抑えていてくれて実に助かった。その辺りのさじ加減をした牢屋の役人には感謝をせねばな」
三人が話している通り、ガリッズの変装技術により捉えられた者達は、幸いにして全員が手粗な扱いを受けていなかった。そのため、事実の公表とともに無実が判明し、釈放されて相応の慰謝料を持って街にそれぞれが帰っていったのだが……受刑者にこれと言った深い傷もなく、体が痩せこけて体調不良を引き起こしていた状態でもないため、国や貴族に対しての敵愾心の発生具合がかなり少なくて済んだことは幸運と言っていいだろう。
「同じようなことが今後再発しないように、何としてでも手を打ちたい所だが……」
「難しいですね、これは兵をたくさん置けばいいという問題ではありませんし」
「力よりも技術と知恵が必要ですな、侵入者に対抗できるような技術と知恵が……」
そして三者三様にため息を漏らして黙りこむ。この技術と知恵を持つ者に心当たりがなさすぎるからだ。実際問題、彼らの家を守る門番を始めとした直属の兵士達は正面切っての戦いであれば相応の戦闘力を持っているのだが、今回のガリッズのような盗みを察知することという能力に対しては完全に無力であった。今欲しいのはモンスターや悪党に正面から戦える戦闘力ではなく、侵入者の変装を見破ったり、盗みに入った賊を阻止できる盗賊としての技術力と知恵である。
「──先日の一団を丸ごと全員雇えればすぐに解決するのだがな」
「難しいでしょうね……あれ以来一回もこちらに顔を出しませんし、その上彼らなりの誇りと義でしか動かないでしょう」
「それに金銭で動くような感じでもありませんでしたな、イフリート殿の報酬の話をあっさり蹴るぐらいですから……有益な者ほど手に入らない物であるとは分かっているのですが……こうなると実に歯痒い物ですな」
一番の手っ取り早い解決策は、先日ガリッズの犯行を阻止してくれたあの一団を手駒として迎え入れることである。敵の罠を見破り敵を罠にかける。素早い人質の救助に賊の変装を見破れるだけの目を持つ能力は、ここに居る当主達が今、喉から手が出るほど欲しいものであった。
「盗賊ギルドにこちらから打診……もできぬな、貴族と盗賊では仲が悪すぎる」
「基本的に仲が悪いというより、向こうは表に出ることを嫌いますからね」
「とはいえ、何らかの対策を此方としても練らねばなりますまい。家宝を何処かに隠したとしても、第二、第三のガリッズが出てくれば再びあっさりと奪われかねませんぞ。今回の義賊を名乗るあの一団の手助けは望外の幸運でしかないのですからな」
何時の世も警備と侵入者の戦いは終わりがない。まして価値あるものを自然と貯めこむことになる金持ち、商人、貴族、王族といった辺りはその警備といった問題を常に突きつけられてきている。家宝、国宝、財産……一回でも盗むことに成功してしまえば大きなカネになることを知っている賊は山ほどいるのが現実だ。
「変装は特に厄介だった。いちいち館に来る者に対して顔を触らせろというわけにも行かぬ」
「ガリッズは声まで変えることが出来ましたからね……なおさら見破りにくかったのが厳しいですね」
「割符などではない、もっと別の方法で見破れるようにせねばなりますまい。今の最新技術である水晶球による識別すら、ごまかす賊もいずれ出てくると考えたほうが良いでしょうな」
意見と考えねばならぬ事柄が、この短時間話しあうだけで次々と出てくる現状に自然とため息をつい漏らしてしまうウンディーネ当主。だがそんなウンディーネを責めないイフリートとノームの当主。心境は全く変わらないことを分かっている為だ。
「この現状で無いものはどうしようもない。ともかく兵士の中でも比較的身軽な者に対して、今回あの一団が見せてくれた技術を見よう見まねでもいいから少しずつでも教えねばなるまい」
イフリート家の当主の結論に頷くウンディーネとノームの当主。
「特にボスの方が使っていたスネーク・ソードは覚えさせる価値があるでしょう。使いこなせれば、あのように離れた位置にいる賊の足を切って体勢を崩せるのは非常に大きな価値があります。魔法では詠唱がどうしても必要ですから、速度の面でも不意をつくという面でも劣りますし」
「後は短剣もですな……基本的に取っ組み合いになった時などに用いる咄嗟の攻撃用という程度の考えが一般的だった短剣でしたが、あの小人達の働きを実際に見てしまった以上、今の考えを大きく改めたほうが良いでしょう。 それに、短剣一本でいろんな作業をこなしていたと、商人のカールも此方に伝えてきましたからな。カールの方も、護衛の部下の数名に短剣技術を高めるように指示すると言っていましたよ」
こうしてこの時の話し合いがきっかけで、貴族の兵士の中に盗賊まがいの技術を身につける者が現れ、やがてその兵士たちは密偵としての仕事をするようになっていく。いち早くそういう密偵を育てていたフェンリル家はこの情報を当然掴んでいたが、こちらに対して攻撃をしてくるわけでもなしと考えて静観した。やがてそれなりの時間が流れると、貴族であれば密偵を育てて手駒に持つのが当たり前という考えが妖精国貴族内の暗黙の了解となり、密偵を持たない育てない貴族は、賊に財産をプレゼントしたいようだと言われるまでになる……。
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少々短いですが、これ以上は蛇足にしかならなかったので……。
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