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連載
グラッドの策
グラッドのあの変身は、獣人連合での戦いでちらりとは見た。あらゆる武器を周囲に浮かし、自分で握って使ったり飛ばしたりすることが出来る。が、飛ばす方はともかく実際に握って戦うとなれば様々な武器に精通していなければその真価を発揮できない事は言うまでもない。そしてグラッドは強くなる為ならば外道行為以外の全てをやる男だ。それこそ、ひたすら修練に明け暮れて使いこなせるようになっているとみるべきだ。
(こちらの全能力が一〇倍になっていても、決して楽観視できる相手じゃない。さっきの飛び蹴りをアーツに頼らず純粋な技術と力でいなして見せたその実力は脅威的だ。こちらも全力で戦わないと危ないぞ)
グラッドの戦闘力の高さは、今までの付き合いと有翼人との戦いで散々見せてもらったし理解させられている。そのグラッドが変身を切ってこうして真っ向勝負してきているのだから、一瞬の油断が命取りと言う事になりかねない。が、それを理解した上で攻めないと話にならない。こっちは一人で六人を相手する側なのだから、弱気になっている時間はない。
突撃した自分に対し、グラッドは周囲に浮いている剣や短剣、槍などの投擲も出来る武器をこちらに向かって多数飛ばしてきた。しかも真っすぐばかりではなく、いくつかの短剣や剣をある程度迂回させて側面、並びに背後から突き立ててくると言った攻撃まで混ぜて、だ。あ、それだけではない──頭上への攻撃まで含まれているぞ!?
(ちいっ!!)
その攻撃にに対して自分が取った行動は、八岐の月とレガリオンの二刀流で必要な物だけをはじき返しながら前進を続行する事だった。さらに前進するにしても左右への揺さぶりをランダムに行って、グラッドが自分を少しでも狙いにくい様に仕向ける。ただ──飛んでくる槍だけは回避に専念した。一回受け流したのだが、予想以上の重さで動きが鈍ってしまったからだ。
「なんだと!? いくら能力が上がってるからって、俺のこの攻撃を一発も喰らわずに突っ込んでくるだと!? マジで狂ってるなてめえはよ!」
グラッドはグラッドで、自分が無被弾で突っ込んでくることに驚きを隠せなかったらしい。これだけの無数の武器を同時に操るのは、相当な訓練を積んだからこそできる事だろう。しかも様々な軌道を織り交ぜているのだから──その常人では届き得ないであろう技術は、恐らく執念と言っていいレベルでの訓練があったに違いない。
その執念を、今自分が跳ねのけている構図になるのだろうか? もっともこちらとて簡単に進めている訳じゃない。短剣すら両手剣かと思うほどの重さを持ち、こちらの判断ミスで一瞬で崩れる薄氷の上を全力で走っている状態だ。そして、グラッドは後ろに下がりながらこの攻撃を続けている。お陰でなかなか距離が詰められない。
(グラッドの技術ならば、インファイトは十分やれる処が一級品なのになぜ近接戦闘を避ける? 近接戦闘になれば、飛ばしてくる武器の操れる数が減るから? いや、それだけでは理由としては弱い……近接戦闘になってしまうと、困る理由がある? 変身能力の問題とかそう言う事ではなくて、連携の問題で──)
と考えた所で、こめかみあたりに寒気を感じた自分はその寒気からくる生存本能に従って後ろに大きく飛び下がった。その直後に、自分が前に進んでいたらいたであろうと予想される場所の候補の一つを通り過ぎる一本の矢が駆け抜けるのが見えた……ジャグドの狙撃か! つまり、この狙撃を通す事が本命であり、グラッドはそれを成功させるための目くらまし役だった訳だ。
「飛んできた方向は、右か」「読まれたか!? ち、行かせるかよ!!」
グラッドはジャグドを逃がすためなのだろう、無数の短剣を飛ばしてくる。が、自分はそれらを無視して走る。自分の背後からいくつもの轟音が聞こえる……もちろんこちらの動きを先読みした短剣もたくさん飛んでくるが、引き付けてからのサイドステップや意図的に走る速度を変える事で先読みをずらす。そして、必死で逃げているジャグドの後ろ姿を捉えた。
「おいおいおい! もう追いついてきたのかよ!」「スナイパーは殺すべし! 慈悲を掛ける必要はなし!」
遠距離から確実に軽くないダメージ、もしくは即死させてくるスナイパーは何時の時代であっても恐ろしく、そして忌み嫌われる存在だ。FPS経験者ならその恐ろしさと厄介さ、そして向けられる殺意なんてものは説明する必要はないだろう。だからこそ、見つけたら確実に切って捨てるか脳天をぶち抜いておかなければならない。自分達を護る為に。
「ジャグド、何とかして逃げろ!」「畜生、振り切れねえ! アースの足が速すぎる!」
慌てたのだろうか、パーティチャットではなく直接の声によるやり取りがグラッドとジャグドの間で行われる。が、もうこちらの弓の間合いに入っている。八岐の月を構え、より一層走る速度を早めて勢いをつけた後にアーツではなく自分の動きでスライディングをして草の上を滑るような感じで移動する。高さが減った分、グラッドの短剣射出による攻撃を受けにくくなるだろうと踏んでの行動だ。そして、ジャグドの胴体、心臓付近を狙って矢を放つ。
「ぐはっ!?」
矢が貫通し、ジャグドを地に伏せさせた。どうやら命中してくれたようだ。不慣れな体勢であったが、何とかと言った所だ。ほとんど曲芸に近かったが、当たればいいのである。当然鎖をジャグドに向かって投げつけて拘束されるまでの間グラッドによる鎖破壊を阻止する。そしてジャグドの救出失敗を理解したグラッドは──全力で逃げを打った。何かしらのアイテムを使ったのだろう、異様な速度で走り去っていく。
(あの異様なスピード、一定時間だけ効果があるがその後に多分反動があるタイプだな。だがら今は逃げるしかないと判断するときまでは使わなかったのだろう。ジャグドと言うスナイパー要因がいなくなった以上、作戦が破綻したから全力で逃げを選択できる……そこもグラッドの侮れない所だ)
変身をしたのだから少しでもダメージを与えたい、そう普通のプレイヤーなら少し欲が出る所だろう。そんな欲を出さず、次の機械に備えて消耗を最大限に抑える選択を取る事はそうそうできる事じゃない。こういう点も、プレイヤーとしての強さの一つと言えるだろう。一方でジャグドは、かなりの遠距離から狙撃してきていた。射撃の射程を伸ばせるアイテムもあるとみて良いな。
(幾つものアイテムが分かってきたな、妨害用、強化用、そして変身補助関連もあるかもしれない。厄介だけど、そう言ったアイテムが無きゃこちらに対抗できないか)
なんにせよ、ジャグドを一時的とはいえ拘束できたのは大きい。レンジャーであるジャグドは、グラッドパーティの中で一番機動力を持っているプレイヤーだ。だからジャグドが欠ければ、グラッド達の探索能力はかなり鈍るだろう。今のうちにもう一人、二人を発見して捕まえてより探索能力を低下させたいところだ。
とにかく、想定外の戦いはあったが当初の目的通り市街地に向かおう。そして宝箱の空きぐらいで探索の度合いを測ろう。移動しながら考えを纏め、市街地に自分は足を踏み入れた。市街地は人族の街並みとそっくりに作られているようで、かなり家が多い。この家を一つ一つ巡って調べるのは骨が折れそうだ。
なので大雑把に家の中を調べてみる。宝箱が開いている割合は四割弱と言った所か。道端の見つけやすい奴はほぼ開いているが、家の中を調べ回っている時に自分が強襲してきたら逃げ場がない事を恐れて避けているのだろうか? と、そう考えた時に一瞬だけ《危険察知》の反応が出た。すぐさま反応は消えてしまったが……このエリアに誰かがいる事は間違いない。
(出会っていないゼラァか、ザットのどちらかかの可能性が高いだろうな。とにかく反応があった付近に移動してみよう)
二人捕まえられれば相手の三分の一を減らしたことになるから、かなりグラッド達側の探索速度を落とすことが出来る。だからこそ、これは逃がしたくない。さあ、今捕まえに行くよ……待っててくれよ?
(こちらの全能力が一〇倍になっていても、決して楽観視できる相手じゃない。さっきの飛び蹴りをアーツに頼らず純粋な技術と力でいなして見せたその実力は脅威的だ。こちらも全力で戦わないと危ないぞ)
グラッドの戦闘力の高さは、今までの付き合いと有翼人との戦いで散々見せてもらったし理解させられている。そのグラッドが変身を切ってこうして真っ向勝負してきているのだから、一瞬の油断が命取りと言う事になりかねない。が、それを理解した上で攻めないと話にならない。こっちは一人で六人を相手する側なのだから、弱気になっている時間はない。
突撃した自分に対し、グラッドは周囲に浮いている剣や短剣、槍などの投擲も出来る武器をこちらに向かって多数飛ばしてきた。しかも真っすぐばかりではなく、いくつかの短剣や剣をある程度迂回させて側面、並びに背後から突き立ててくると言った攻撃まで混ぜて、だ。あ、それだけではない──頭上への攻撃まで含まれているぞ!?
(ちいっ!!)
その攻撃にに対して自分が取った行動は、八岐の月とレガリオンの二刀流で必要な物だけをはじき返しながら前進を続行する事だった。さらに前進するにしても左右への揺さぶりをランダムに行って、グラッドが自分を少しでも狙いにくい様に仕向ける。ただ──飛んでくる槍だけは回避に専念した。一回受け流したのだが、予想以上の重さで動きが鈍ってしまったからだ。
「なんだと!? いくら能力が上がってるからって、俺のこの攻撃を一発も喰らわずに突っ込んでくるだと!? マジで狂ってるなてめえはよ!」
グラッドはグラッドで、自分が無被弾で突っ込んでくることに驚きを隠せなかったらしい。これだけの無数の武器を同時に操るのは、相当な訓練を積んだからこそできる事だろう。しかも様々な軌道を織り交ぜているのだから──その常人では届き得ないであろう技術は、恐らく執念と言っていいレベルでの訓練があったに違いない。
その執念を、今自分が跳ねのけている構図になるのだろうか? もっともこちらとて簡単に進めている訳じゃない。短剣すら両手剣かと思うほどの重さを持ち、こちらの判断ミスで一瞬で崩れる薄氷の上を全力で走っている状態だ。そして、グラッドは後ろに下がりながらこの攻撃を続けている。お陰でなかなか距離が詰められない。
(グラッドの技術ならば、インファイトは十分やれる処が一級品なのになぜ近接戦闘を避ける? 近接戦闘になれば、飛ばしてくる武器の操れる数が減るから? いや、それだけでは理由としては弱い……近接戦闘になってしまうと、困る理由がある? 変身能力の問題とかそう言う事ではなくて、連携の問題で──)
と考えた所で、こめかみあたりに寒気を感じた自分はその寒気からくる生存本能に従って後ろに大きく飛び下がった。その直後に、自分が前に進んでいたらいたであろうと予想される場所の候補の一つを通り過ぎる一本の矢が駆け抜けるのが見えた……ジャグドの狙撃か! つまり、この狙撃を通す事が本命であり、グラッドはそれを成功させるための目くらまし役だった訳だ。
「飛んできた方向は、右か」「読まれたか!? ち、行かせるかよ!!」
グラッドはジャグドを逃がすためなのだろう、無数の短剣を飛ばしてくる。が、自分はそれらを無視して走る。自分の背後からいくつもの轟音が聞こえる……もちろんこちらの動きを先読みした短剣もたくさん飛んでくるが、引き付けてからのサイドステップや意図的に走る速度を変える事で先読みをずらす。そして、必死で逃げているジャグドの後ろ姿を捉えた。
「おいおいおい! もう追いついてきたのかよ!」「スナイパーは殺すべし! 慈悲を掛ける必要はなし!」
遠距離から確実に軽くないダメージ、もしくは即死させてくるスナイパーは何時の時代であっても恐ろしく、そして忌み嫌われる存在だ。FPS経験者ならその恐ろしさと厄介さ、そして向けられる殺意なんてものは説明する必要はないだろう。だからこそ、見つけたら確実に切って捨てるか脳天をぶち抜いておかなければならない。自分達を護る為に。
「ジャグド、何とかして逃げろ!」「畜生、振り切れねえ! アースの足が速すぎる!」
慌てたのだろうか、パーティチャットではなく直接の声によるやり取りがグラッドとジャグドの間で行われる。が、もうこちらの弓の間合いに入っている。八岐の月を構え、より一層走る速度を早めて勢いをつけた後にアーツではなく自分の動きでスライディングをして草の上を滑るような感じで移動する。高さが減った分、グラッドの短剣射出による攻撃を受けにくくなるだろうと踏んでの行動だ。そして、ジャグドの胴体、心臓付近を狙って矢を放つ。
「ぐはっ!?」
矢が貫通し、ジャグドを地に伏せさせた。どうやら命中してくれたようだ。不慣れな体勢であったが、何とかと言った所だ。ほとんど曲芸に近かったが、当たればいいのである。当然鎖をジャグドに向かって投げつけて拘束されるまでの間グラッドによる鎖破壊を阻止する。そしてジャグドの救出失敗を理解したグラッドは──全力で逃げを打った。何かしらのアイテムを使ったのだろう、異様な速度で走り去っていく。
(あの異様なスピード、一定時間だけ効果があるがその後に多分反動があるタイプだな。だがら今は逃げるしかないと判断するときまでは使わなかったのだろう。ジャグドと言うスナイパー要因がいなくなった以上、作戦が破綻したから全力で逃げを選択できる……そこもグラッドの侮れない所だ)
変身をしたのだから少しでもダメージを与えたい、そう普通のプレイヤーなら少し欲が出る所だろう。そんな欲を出さず、次の機械に備えて消耗を最大限に抑える選択を取る事はそうそうできる事じゃない。こういう点も、プレイヤーとしての強さの一つと言えるだろう。一方でジャグドは、かなりの遠距離から狙撃してきていた。射撃の射程を伸ばせるアイテムもあるとみて良いな。
(幾つものアイテムが分かってきたな、妨害用、強化用、そして変身補助関連もあるかもしれない。厄介だけど、そう言ったアイテムが無きゃこちらに対抗できないか)
なんにせよ、ジャグドを一時的とはいえ拘束できたのは大きい。レンジャーであるジャグドは、グラッドパーティの中で一番機動力を持っているプレイヤーだ。だからジャグドが欠ければ、グラッド達の探索能力はかなり鈍るだろう。今のうちにもう一人、二人を発見して捕まえてより探索能力を低下させたいところだ。
とにかく、想定外の戦いはあったが当初の目的通り市街地に向かおう。そして宝箱の空きぐらいで探索の度合いを測ろう。移動しながら考えを纏め、市街地に自分は足を踏み入れた。市街地は人族の街並みとそっくりに作られているようで、かなり家が多い。この家を一つ一つ巡って調べるのは骨が折れそうだ。
なので大雑把に家の中を調べてみる。宝箱が開いている割合は四割弱と言った所か。道端の見つけやすい奴はほぼ開いているが、家の中を調べ回っている時に自分が強襲してきたら逃げ場がない事を恐れて避けているのだろうか? と、そう考えた時に一瞬だけ《危険察知》の反応が出た。すぐさま反応は消えてしまったが……このエリアに誰かがいる事は間違いない。
(出会っていないゼラァか、ザットのどちらかかの可能性が高いだろうな。とにかく反応があった付近に移動してみよう)
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