あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第4章 その暗躍、本当に必要ですか?

第46話 迂闊な伏竜鳳雛

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「ご機嫌よう、レーキ・ノモ様、ジョウジ・シキン様」

 白銀の妖精が微笑んでいた。

 綺麗にカーテシーを披露するウェルシェはとても優雅で、その周囲の空間だけキラキラしいエフェクトでもあるようだ。なんとも幻想的な美少女である。

 そんな絶世の美姫にレーキとジョウジは惚けたように魅入ってしまった。

「私はウェルシェ・グロラッハと申します」
「こ、これは、失礼しました」
「名高き『妖精姫』ウェルシェ・グロラッハ様にお目にかかれて光栄に存じます」

 ウェルシェの挨拶に我に返ったジョウジとレーキが慌てて一礼する。

「お二人がとても熱く語らっておられてので、悪いとは思いましたがつい声をかけてしまいました」

 先ほどまでエーリックとウェルシェの陰口とも取れる内容を話し合っていた。どこまで聞かれたのか、二人の背中に冷汗が流れる。

(迂闊だった)

 レーキは己の軽はずみな発言を悔いた。

 これは警告だ。

 誰が聞き耳を立てているか分からない場所で王族を批難するなと。

「それはお耳汚しでございました」
「ジョウジも私も将来さき災禍なんを見通す目が曇っていたようです」
「優秀なお二人でもそうなのですから、学園の生徒達が実際に目に見える猛獣を恐れるのは仕方のないことですわ」

 今も目の前の令嬢は幻想の世界の住人としか思えぬほど透き通っている。だが、その愛らしい唇の間から出た内容は現実的で、自分達の会話の真意を読んだ鋭い言葉にジョウジとレーキは警戒を強めた。

(誰だ、グロラッハ嬢を柔和な姫と噂したのは)
(これは見た目に騙されてはダメだ)

 レーキとジョウジは目配せして頷き合った。

「あなたのような素敵なレディの心を煩わせるような発言をしてしまい申し訳ございません」
「いいえ、とても興味深いお話でしたわ」
「そうは申されますが、レーキも私もオーウェン殿下の不興を買った身ですので、我らに関わるのは御身の為にはならないかと」

 ウェルシェが何を目論んでいるのか分からず二人はけむに巻こうとしたが、ウェルシェはまったく意に介した様子もない。

「隆盛の者への媚びはすぐに忘れられ、苦境の者への援助はいつか我が身に返ってくると思いますの」

 レーキとジョウジの背筋に冷たいものが走った。

「それが伏竜鳳雛ふくりょうほうすうなら尚更です」

 つまり、ウェルシェはレーキとジョウジに恩を最大限で売りたいと言っており、二人はそれを正確に読み取ったのである。

「私とレーキを伏竜鳳雛とは畏れ入ります」
「ですが、それはウェルシェ嬢の買い被りですよ」
「学園きっての俊英と名高いレーキ様と名高きシキン家の嫡男であるジョウジ様と親交を結びたいと思うのは少しも不思議ではありませんわ」

 人畜無害そうな令嬢に見えるウェルシェのニコニコとした笑いの下に古竜ドラゴン鳳凰フェニックスよりも恐ろしいものが隠れているように二人には感じられた。

「そう言えば先程は面白いお話をされておられましたね」

 二人はぎくりとした。

 先程まで王家への反逆ともとられかねない話題をしていた自覚はある。

 果たしてどこまで聞かれてしまったのか……
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