神の国に生まれ、天の川を渡る
北海道の小さな村「神の国」に生まれた14歳の裕人は、いつものように村を流れる「天の川」で桜鱒釣りに向かう。川のほとりで焼身自殺した男女の死体を発見する。丸焦げになった女性の一部から、小さい頃に憧れた、東京へ行ったはずの義理の姉だと判明する。
翌年、トマップ山の麓に住む祖父が何者かに襲われ逝去する。犯人はヒグマだった。ヒグマは人喰い熊となり、神の国村の人々を連続襲撃する。思春期に描く正義感から、ひょんなことでヒグマを罠にかけ村の英雄となるが、ヒグマが人を襲うのは病気の小熊を養うためだと知りショックを受ける。
”人や動物は呆気なく死んでしまう”と悲しむ間もなく裕人は成長していく。やがて、
カトリック系の進学校に入学した裕人は、海水浴の事故で親友を死なせてしまい悲しみに沈む。
「死はいつもすぐ側にいて、どうしてこんなに苦しいのか…」
そんな彼を励まし、支え、ともに成長する友人達と自然。
海に沈む夕陽を背に浴び、街の明かりが蛍のようにともるまで、漆黒の海のなかで考え裕人が決心したことは、”人の死に共なう悲しみをなくしたい”であった。
東京の医学部に入学し、ヒポクラテスの医の倫理から始まり、目の前にいる苦しむ人々を助ける事が自分の責務だと学んだ。
阪神淡路大震災の際には、医学生として奔走。自分の進む道を救命救急医と定め医学の道をスタートする。
ただガムシャラに、鳴り止まないホットラインを受け患者を治療し、ヘトヘトになってベッドに寝堕ちる。空いた時間は大学院で炎症性メディエーターを研究する生活。自分の専門分野を選ぶ際に先輩達は反対していた。その疑問が心に引っかかったまま、5年目の夏。運命の出逢いが訪れる。
救急で運ばれてきた薫だ。薫は雑誌の編集者で東京生まれ、東京育ち。名門女子校出身であったが、拡張型心筋症を患っていた。
いつも恋愛に消極的だった裕人だったが、初めて自分から恋に落ち、病床の薫を励まし支え、ついに結婚する。しかし、薫に必要な治療は心臓移植しかなく、アメリカに行かなければならず、マサチューセッツ州にある大学病院が引き受けてくれることとなる。渡米と心臓移植には莫大な費用がかかる。裕人は資金集めに奔走し、なんとか渡米する。
しかし、薫の血液型や体格は欧米人では稀であり、人工補助心臓を装着していても徐々に衰弱していく。渡米から1年5カ月、薫は移植を受ける事ができないまま帰らぬ人となる。
裕人は無力感と生きる意味に悩みながら、日本に帰国し東京の小さな病院に救急医として働き始める。ただ手術と治療を漫然と繰り返す毎日を過ごす。
そんな時、3月11日東日本大震災に遭遇し、DMAT災害派遣活動を開始する。
多くの人の「死」に触れながら、裕人が出した「生きること」「死ぬこと」の意味とは?
そして明日も生きて行くと、心に決めた裕人の成長物語であり。
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