奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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許可

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リアちゃんの母親の取り調べ3日目。ただ今日は取調室ではなく施設に向かっている。皆察しているだろう、リアちゃんのところだ。
昨日申請して今日会う許可が貰えたのは相当頑張ってくれたんだろうなと感謝しつつリアちゃんのところに向かう。

因みに昨日の取り調べには本当にカール班長が来た。正直冗談であってほしかったのだが。私も含め担当の騎士は全員緊張しぱなっしだった。まあ班長クラスの人と一緒に仕事するなんて普通はあり得ないから仕方無いのだが…集中はできなかったと思う。

しかもカール班長はバッジをつけてきたので彼女にもカール班長が第一班の班長であることがわかる訳で…心なし声が震えていた気がする。
まあそれでも虚勢をはって知らない振りをし続けていたのは最早称賛したい。

カール班長の静かに漂う冷たいオーラを浴びながらも(冷や汗かいて声も体も震えていたが)知らないという姿勢を貫くのはある意味凄い。
並大抵の人だったら完全に降伏するし、私も自分に向けられたオーラではないのに背中の冷や汗が止まらなかった。
第二班の先輩なんかは取り調べの間ずっと目が死んでたし途中何度もカール班長に視線を向けていた。監視役の同僚なんかはそういう雰囲気とかに慣れていないのもあってずっと部屋の隅で俯いて、取り調べが終わって部屋を退出した後気絶しかけてた。

まあそんなんでも彼女から何も情報を得ることはできなかった為今日の取り調べは一旦中止。私はリアちゃんのところに向かって話を聞きに行くが、先輩と同僚は改めて情報収集し直して調査するらしい。

被害者と話をするのも立派な情報収集の一つ。いかに相手を傷つけることなく自分の聞きたいことを聞けるか。しかも相手はまだ幼い。多少の誤りでパニックを起こしてしまうことだってあるのだ。

慎重に、かつそれを悟られないように大胆と。
許可を貰った時にカール班長に言われたことをもう一回心で唱えて、リアちゃんがいるという部屋の扉をノックした。

「…だあれ?」

「こんにちは。ライで…だよ。リアちゃんの様子を見に来たんだけど…入っていいかな?」

「お姉ちゃん!?」

敬語を外して話すのは生まれて初めてかもしれない。
でもカリナンに言われたんだよね

"子供と話す時に敬語だとどうしても向こうも距離を感じでしまうし緊張もしてしまう。私達はライがそういう性格だってことも知っているが子供はそうじゃない。たださえ表情動かなくて怖がられる可能性があるんだから敬語ぐらい外さないと"

ということらしい。言っていることは的を射ていると思うのだが…実践するのとはまた違う。かなり難易度高いぞこれ…

「どうしたの?入って入って!」

「いきなり来てごめんね…ありがとう」

「ううん!全然!どうしたの?」

「いや…リアちゃんがどうしてるか気になって…後はお話できたらなって思って来ちゃった」

「でもお姉ちゃん騎士さんなんでしょ?騎士さんはとっても忙しくて大変なんだってパパが言ってたよ」

「ん~忙しいけど最近はちょっと落ち着いてきたからね。長期休暇を取れたんだ。暇だし私につき合ってほしいな」

「!!…もう!仕方ないな!ふふっ!」

ん~この嬉しそうな顔を見ると嘘をついたことに罪悪感が生まれるな。本当は全然忙しいし、長期休暇どころか休んでいる暇なんてないんだけど…まあ本当の事を言ってギグシャクするよりは全然いっか。

まずはリアちゃんの事よく知って私の事もよく知ってもらってから。時間はかかるだろうけどカール班長からは無期限の面会許可をもらってるから大丈夫。
よっぽどの事がない限りここにはこれる。一日ずっとは無理だが最低でも一時間は行けと先輩達にも言われてるし。

「さて、リアちゃんはさっきまで何してたの?」

「ごっこ遊び!」

「へぇ…私も入れてほしいな」

「も~仕方ないな~じゃあお姉ちゃんは市民役ね!それでリアが騎士さん役!街に魔物が来て襲われるの!」

「え~じゃあリアちゃんは今日は騎士さんになるのか」

「うん!騎士リア参上!だよ!」

「じゃあそんな立派騎士さんにはこれを貸してあげる」

「騎士さんのバッジ!お姉ちゃんのだよね?いいの?」

「勿論。ちゃんと魔物を倒せるかな?」

「うん!リアは騎士だもん!」

私がつけてきたバッジをリアちゃんの胸元につければ目を輝かせてピョンピョン跳ねてる。相当嬉しかったのか。
確かにバッジは見る機会はあっても直接手に取ったりはできないだろうし、ましてや本物を実際につけるなんて騎士にならない限りは無理だろう…この間の奴は例外として。

本当は一般市民にバッジを渡す、ましてや胸元につけるなんて駄目なのだが…こんなに喜んでくれるのならやってよかった。
まあ後で報告書に全部やった事とか書かないといけないからバレて注意されるんだろうけど。

「ねぇねぇ!このバッジの模様どうなってるの!?」

「ん?あぁここは…こんな感じになってるんだよ」

「凄い!きれ~!」

もうすっかりごっこ遊びが頭から抜けているであろうリアちゃんにバッジの拡大図を紙に書くと、凄い凄いと褒めてくれる。
私達騎士にとってバッジはただの役職を表し、位置情報を仲間に伝えるものでしかない…場合によってはドックタグになるぐらいだ。
私からすればいくら偽物の製造をできなくするためとはいえ模様が複雑だと覚えるの面倒臭いしやめて欲しいな、などとと思っていたのだが…リアちゃんがこんなに喜んでくれるのならこの模様でよかったのかもしれないな。
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