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番外04.通常研修が始まらない
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「軽っる」
研修コテージに到着した甲斐は自分の脚では歩けない状態だった。ふにゃふにゃと意味の成さなない呻きとも喘ぎとも取れる言葉を紡ぐばかりなので、千里は甲斐を横抱きにしてコテージの中に入る。細くてしなやかで柔らかい甲斐の身体は極上で、良い香りがした。
設えられたベッドに甲斐をそっと降ろすと、千里は受付で渡されたレジュメに目を通す。
「ふむふむ。なるほど」
レジュメにはコテージに向かう際に甲斐が使っていたディルドから得られた情報を分析するアプリの使用方法が載っていた。
「うっわ、すご」
「メスビッチお兄さん簡単診断」のアイコンをタップすると、甲斐の性器を診断することが出来た。
「なんだろう? オールA判定? やっば」
アナルの締め付け具合、内部の構造、分泌液の多さなど、分析は多岐に渡っていたが、かなり結果はよいようだった。
「えっと、MTC特製ディルトと、エネマグラ? えげつないなこの研修」
千里が一通りレジュメを読み込んだ感想を零していると、コテージの内線電話が鳴り響いた。
「もしもし」
「千里くん?」
内線の相手は千里が在籍した頃にひよこ組で講師を務めていた田中だった。結婚を機にMTCを退職し、今はMTCとも関係の深い、性犯罪対策機構に在籍していると話していた。
「どう? 研修は」
「はい。今のところ順調に研修を進めていると思います」
コテージまで乗って来たカートのいかがわしさについて話すと、ディルドは強いて使わなくてもカートは動いたのにと一笑に付された。
「でもだいたいメスビッチお兄さんはあの機能使うんだよな……僕の奥さんも何度言っても使うんだよ……」
「田中さんの奥さん?」
「ああ、僕の奥さんもメスビッチお兄さんだよ。今はマスターメスビッチお兄さんになっている」
マスターメスビッチお兄さんとは、ただ一人の人にしか抱かれないことを宣言したメスビッチお兄さんだと聞いて、千里は心の底から田中のことが羨ましくなった。
「うちの奥さんはメスビッチお兄さんとはいえあまり性に積極的ではなかったので、僕がお願いしなくてもマスター宣言してくれたけれど、甲斐くんはどうだろう?」
「今のところ必死にガードしているのですが……他のメスビッチお兄さんの事を知らないので比較対象がなくて。一般男性よりは快楽に弱そうではありますが」
ひよこ組に通っていたとはいえ、千里のメスビッチ認定が誤診であったとわかった時点でMTCへの通所がなかった千里である。思春期以降のメスビッチお兄さんは甲斐しか知らないのである。
「そっか……ランチはまだだよね?ランチをルームサービスではなく食堂でとれば他のお兄さん達を見ることが出来るよ」
「なるほど、食堂ですか」
ひよこ組には刺激が強いからと食堂に行くことは止められていた。小さい頃に遠くから目にしていた食堂のガラス扉が不透明だったことを思い浮かべる。千里も甲斐もまだ高校生ではあるが、将来菊谷財閥を統べる人材として既に何度も菊谷ホールディングスのオフィスには足を運んでいが、その菊谷ホールディングスの会議室そっくりなガラス扉。スイッチを入れると電圧がかかり、一瞬にして不透明になるガラスだ。あの向こうにはどんな空間が広がっているのか……千里はごくりと喉を鳴らした。
研修コテージに到着した甲斐は自分の脚では歩けない状態だった。ふにゃふにゃと意味の成さなない呻きとも喘ぎとも取れる言葉を紡ぐばかりなので、千里は甲斐を横抱きにしてコテージの中に入る。細くてしなやかで柔らかい甲斐の身体は極上で、良い香りがした。
設えられたベッドに甲斐をそっと降ろすと、千里は受付で渡されたレジュメに目を通す。
「ふむふむ。なるほど」
レジュメにはコテージに向かう際に甲斐が使っていたディルドから得られた情報を分析するアプリの使用方法が載っていた。
「うっわ、すご」
「メスビッチお兄さん簡単診断」のアイコンをタップすると、甲斐の性器を診断することが出来た。
「なんだろう? オールA判定? やっば」
アナルの締め付け具合、内部の構造、分泌液の多さなど、分析は多岐に渡っていたが、かなり結果はよいようだった。
「えっと、MTC特製ディルトと、エネマグラ? えげつないなこの研修」
千里が一通りレジュメを読み込んだ感想を零していると、コテージの内線電話が鳴り響いた。
「もしもし」
「千里くん?」
内線の相手は千里が在籍した頃にひよこ組で講師を務めていた田中だった。結婚を機にMTCを退職し、今はMTCとも関係の深い、性犯罪対策機構に在籍していると話していた。
「どう? 研修は」
「はい。今のところ順調に研修を進めていると思います」
コテージまで乗って来たカートのいかがわしさについて話すと、ディルドは強いて使わなくてもカートは動いたのにと一笑に付された。
「でもだいたいメスビッチお兄さんはあの機能使うんだよな……僕の奥さんも何度言っても使うんだよ……」
「田中さんの奥さん?」
「ああ、僕の奥さんもメスビッチお兄さんだよ。今はマスターメスビッチお兄さんになっている」
マスターメスビッチお兄さんとは、ただ一人の人にしか抱かれないことを宣言したメスビッチお兄さんだと聞いて、千里は心の底から田中のことが羨ましくなった。
「うちの奥さんはメスビッチお兄さんとはいえあまり性に積極的ではなかったので、僕がお願いしなくてもマスター宣言してくれたけれど、甲斐くんはどうだろう?」
「今のところ必死にガードしているのですが……他のメスビッチお兄さんの事を知らないので比較対象がなくて。一般男性よりは快楽に弱そうではありますが」
ひよこ組に通っていたとはいえ、千里のメスビッチ認定が誤診であったとわかった時点でMTCへの通所がなかった千里である。思春期以降のメスビッチお兄さんは甲斐しか知らないのである。
「そっか……ランチはまだだよね?ランチをルームサービスではなく食堂でとれば他のお兄さん達を見ることが出来るよ」
「なるほど、食堂ですか」
ひよこ組には刺激が強いからと食堂に行くことは止められていた。小さい頃に遠くから目にしていた食堂のガラス扉が不透明だったことを思い浮かべる。千里も甲斐もまだ高校生ではあるが、将来菊谷財閥を統べる人材として既に何度も菊谷ホールディングスのオフィスには足を運んでいが、その菊谷ホールディングスの会議室そっくりなガラス扉。スイッチを入れると電圧がかかり、一瞬にして不透明になるガラスだ。あの向こうにはどんな空間が広がっているのか……千里はごくりと喉を鳴らした。
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