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219.輜重隊出征8

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輜重の方にカリバーが目を向けると
ファブリッツィオを中心に魔術師見習いの学生が
杖を構えて、ぼーと立っていた。
その前で魔術師を護衛するように護衛の騎士見習いも
ぼーと剣を構えて、ぼーと立っていた。

 カリバーは言われたことだけを
それらしく守る学生たちに苛立ちを覚えたが、
あの二人が異質な存在なのだろうと思い、
左手で魔物へ攻撃するように指示した。

 カリバーの身振り手振りの指示に
気づいたファブリッツィオは、学生を
鼓舞するように雄叫びをあげて、
魔物に向かって突撃を開始した。
つられるように諸学生も雄叫びをあげて、
突撃を開始した。

「なっ!あほか!魔術師まで突撃させやがって」
学生たちの動きを見て、カリバーは焦った。
まさか魔術師たちまで、突撃させるとは
思いもよらなかった。
所詮は、侯爵家のぼんぼんか、
くそっ、信用しすぎたと後悔の念が生じてしまった。
「おい、ここは任せた。
俺は直接、あのひよっこどもの指揮する」
カリバーは慌てて、ファブリッツィオの方へ向かった。

上空では、輜重隊の動きと魔物の動きを
5騎の竜騎士たちが注視していた。

「しめた!輜重を守っている連中が動き出したぞ。
これで、輜重を破壊できる。隊長、指示を」
最も若い竜騎兵の男が周囲の騎兵にも
聞こえる様に大声で吠えた。

隊長らしき男は輜重の方を眺めた。
そして、地上で行われている殺し合いを見つめた。

輜重の守備を放棄して、後衛の軍を
魔物の討伐に投入していた。
無論、あちらにも竜騎兵が見えているにも
関わらずであった。
そのことに余程のアホウか、何か策があるのかと
判断に迷っていた。

公国として、ダンブルにもヴェルトール王国にも
それなりに一目置かれるのは、
竜騎兵の存在があるからであった。
竜騎兵なきは、近隣の小国として、
良いように扱われることは自明の理であった。
育成に時間のかかる竜騎兵を失うことは
避けたかった。

「撤退するぞ。4度に渡り輜重を破壊した。
我々は、盟約を既に果たし、十分な戦果を
挙げたといえる」
隊長は判断を下したが、若い男が反対した。
「ここで輜重を破壊すれば、確実に北関は落ちます!
そうなれば、我らの立場は大いに重きを置けます。
それにここで輜重を通せば、無用の疑いを受けます。
隊長、ご決断を」

「いや、撤退だ。
一騎でも失うリスクは避ける。撤収するぞ」

竜を反転させるが、若い男だけが、
そのままの姿勢を保ち、再度、具申した。
「輜重の周りには5人ほどの
弱そうな魔術師しかいません。
遠目からの攻撃の許可を!隊長、ご再考を」

しつこく食い下がる若い男を
持て余し始めた隊長であったが、
誘いを受けている様な気がして、
攻撃の許可を与えなかった。
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