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472.王都1

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誠一たちの主城までの護衛任務は大きなトラブルなく完了した。
既にこういった護衛任務で主城に戻った魔術院や騎士学園の学生は
一時待機となっていた。

誠一たちもその例に漏れず、宿舎か実家へ各々、戻った。


「ななななん、なぜ、アルフレート様がここに」
辛うじて誠一に対する礼節をミシャは保っていたが、
驚きを隠しきることは出来なかったようだった。

「それは主城までの護衛の任務だったからだけど」
何か問題あるとでも言いたげな意地の悪い表情を
しているんだろうなと誠一は思ったが、特に改めることはなかった。

「いえそのお噂では反乱軍に投降しただの寝返っただのと
良からぬことを吹聴する輩がおりまして。
無論、このミシャはアルフレート様に限って
そのようなことはないと強くいっておりました」

あっこいつはいの一番にそれを信じた輩だなと
誠一は必至になって取り繕うミシャを見てそう思った。
自分がこの屋敷にとって、煙たい存在であることは
重々承知していた。

「ミシャ、そううろたえるな。明日には魔術院へ行く。
どの道、軍役の最中だ。次の指示を受けねばならないから」

ミシャは隠し切れぬ笑みを湛えながら、
何とか謹直な表情で言った。
「わかりました。本日の寝室とお食事は直ぐに用意いたします。
明日、魔術院に向かうにあたって、ご入用となるものを
お伝えくだされば、出来る限り準備いたします」

誠一は、特になしと伝えて、屋敷の自室に向かった。
遠巻きに二人を見ていた使用人たちは、ミシャに一瞥されると、
慌てて日々の業務に戻った。

 翌朝、魔術院の集合時間よりかなり早く誠一は
学び舎に到着していた。
南京錠により施錠されている地下へ向かう扉を開錠すると、
螺旋階段を下った。薄暗い通路に誠一の足音だけが響いていた。

魔術陣を起動させて『深淵の回廊』の最深部まで誠一は移動した。

誠一の目の前には、巨大な樹木群へ果実の様に
ぶら下がる数多の巨大なクリスタル群が広がっていた。
久々に見るクリスタル群に以前、見なかった人や異形なモノが
増えていた。

剣豪が去った今、ここに来るのは自分かファウスティノの
いずれかだけであった。

「戦争の影響かな」

答えを求めるでもなく誠一は一人呟いた。
戦火は至る所に飛び火しているようで、
最早、ダンブルの反乱に留まらない程に広がっていた。
そのため高レアクラスの死が相次いでいるようであった。
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