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【黒の創造召喚師 ―Closs over the world―】
第032話 妄執と悪意②
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(人智を超えた、人ならざる者の力……だと?)
去り際、アザエルが告げたセリフを、九条は頭の中で反芻したものの、その意図が分からず眉間に皺を寄せていた。
「さて、では参りましょうか」
室内に残されたゼクスが、眼鏡を掛け直しながら呟く。
「行くって……どこへだ?」
クルリと背を向けたゼクスに九条は問いかけると、彼の背中越しにポツリと言葉が返ってくる。
「――アザエル様からの贈り物……それを授けられる場所に、ですよ」
そして、そのまま部屋から出ようとするゼクスを、九条は慌てて跡を追った。
――何だ、コレは。
手術室のような部屋から出て数分後。
ゼクスの後追った九条は、術衣姿のまま目の前にある大きな窓の向こうに見える光景に息を呑んだ。
そこには、この世のものとは思えない生き物が檻の中で鎖に繋がれていた。
くすんだ緑色の肌を持った、人型の生き物
背中から炎を噴き出す、真っ赤なトカゲ
長さ30センチを超える牙を持った、ツノの生えた熊
翼を広げない状態で既に全長2メートルを超す体格を有する大柄の鳥
血のように真っ赤な肌と鋭い歯、頭から突き出たツノを持つ人型の生き物
……など、檻の中にいるのは、どれも九条がこれまで見たことのない生き物だ。
「貴方は『並行世界』という言葉を耳にしたことはありますか?」
「並行、世界……」
食い入るように窓の向こうを見つめる九条に、手を後ろに組んで傍に立つゼクスが問いかける。
「えぇ……ここはとある事情で私たちの世界に迷い込んだ異形の生き物――私たちは便宜上「魔物」と呼んでいますが――を秘密裏に捕獲しつつ、その秘めたる力を解明し、人類の益々の発展に寄与する研究を行っている場所なのです」
ゼクスは檻の中に閉じ込められた魔物を無表情で見つめながら呟く。
「それがアザエルが言っていた『力』とどう関係があるんだ?」
窓から視線を外し、ゼクスの顔を見た九条はさらに訊ねながら話を促す。
「魔物は先ほども言った通り、私たちとは別の世界から迷い込んだ存在を指します。それはご覧になられたことからも分かるように、あの檻の中にいる生き物は、これまで目にしたことはないハズです。魔物の生態系は当然ながら地球とは異なることから、地球には存在しない、未知のエネルギーや効果を発揮する原料が採取できる可能性があるのですよ。では、そうした『未知の力』を人間に適用するとどうなるのか……もうお分かりですね?」
金縁眼鏡を掛け直しながら紡がれたゼクスの言葉に、ブルリと九条の身が震える。
(そうか……これが『人智を超えた力』か……)
この力を取り込めば、常識では考えられいほどの高い身体能力が得られたり、超常的な力を得られる可能性がある。
(これだ……この力があれば!)
完膚なきまでの敗北を味わい、どこか生気の抜けた目をしていた九条の瞳に火が灯る。
それは彼にとっての生きる希望、と読み替えてもいいのかもしれない。ただし、その取り戻した光は「復讐」や「妄執」といった類の、決して喜ぶべきものではないものなのだが。
「理解されましたか。ですが、これは強大な力や可能性を秘めている反面、人によってはこれまでの『人生』すら変わってしまう危険も存在します。何せ未だその全容が解明されていませんから。それでも貴方は挑戦してみますか?」
九条の腹の底、その真意を探るようなゼクスの目。彼の眼鏡越しに見つめてくるその冷徹さを宿した目に、
「ハハッ……『これまでの人生が変わる』リスクだと? そんなものはあの時にとうに味わってるさ。なら……」
九条は凶悪な笑みをその顔に貼り付かせながら呟く。
彼の人生は、あの時――ジムの同輩による讒言からマスコミにバッシングを受け、協会から追放された瞬間から、九条武治の人生はがらりと変わっている。
光り輝く「世界チャンピオンとして」の自分から、黒い闇の「不良集団のヘッドとして」の自分に。
――既に底まで堕ちているのなら
――もう、失うものは何一つ無いのなら
「こちらこそ……是非頼む」
九条はゼクスからの申し出に、頷きながら嬉しそうに呟いた。
去り際、アザエルが告げたセリフを、九条は頭の中で反芻したものの、その意図が分からず眉間に皺を寄せていた。
「さて、では参りましょうか」
室内に残されたゼクスが、眼鏡を掛け直しながら呟く。
「行くって……どこへだ?」
クルリと背を向けたゼクスに九条は問いかけると、彼の背中越しにポツリと言葉が返ってくる。
「――アザエル様からの贈り物……それを授けられる場所に、ですよ」
そして、そのまま部屋から出ようとするゼクスを、九条は慌てて跡を追った。
――何だ、コレは。
手術室のような部屋から出て数分後。
ゼクスの後追った九条は、術衣姿のまま目の前にある大きな窓の向こうに見える光景に息を呑んだ。
そこには、この世のものとは思えない生き物が檻の中で鎖に繋がれていた。
くすんだ緑色の肌を持った、人型の生き物
背中から炎を噴き出す、真っ赤なトカゲ
長さ30センチを超える牙を持った、ツノの生えた熊
翼を広げない状態で既に全長2メートルを超す体格を有する大柄の鳥
血のように真っ赤な肌と鋭い歯、頭から突き出たツノを持つ人型の生き物
……など、檻の中にいるのは、どれも九条がこれまで見たことのない生き物だ。
「貴方は『並行世界』という言葉を耳にしたことはありますか?」
「並行、世界……」
食い入るように窓の向こうを見つめる九条に、手を後ろに組んで傍に立つゼクスが問いかける。
「えぇ……ここはとある事情で私たちの世界に迷い込んだ異形の生き物――私たちは便宜上「魔物」と呼んでいますが――を秘密裏に捕獲しつつ、その秘めたる力を解明し、人類の益々の発展に寄与する研究を行っている場所なのです」
ゼクスは檻の中に閉じ込められた魔物を無表情で見つめながら呟く。
「それがアザエルが言っていた『力』とどう関係があるんだ?」
窓から視線を外し、ゼクスの顔を見た九条はさらに訊ねながら話を促す。
「魔物は先ほども言った通り、私たちとは別の世界から迷い込んだ存在を指します。それはご覧になられたことからも分かるように、あの檻の中にいる生き物は、これまで目にしたことはないハズです。魔物の生態系は当然ながら地球とは異なることから、地球には存在しない、未知のエネルギーや効果を発揮する原料が採取できる可能性があるのですよ。では、そうした『未知の力』を人間に適用するとどうなるのか……もうお分かりですね?」
金縁眼鏡を掛け直しながら紡がれたゼクスの言葉に、ブルリと九条の身が震える。
(そうか……これが『人智を超えた力』か……)
この力を取り込めば、常識では考えられいほどの高い身体能力が得られたり、超常的な力を得られる可能性がある。
(これだ……この力があれば!)
完膚なきまでの敗北を味わい、どこか生気の抜けた目をしていた九条の瞳に火が灯る。
それは彼にとっての生きる希望、と読み替えてもいいのかもしれない。ただし、その取り戻した光は「復讐」や「妄執」といった類の、決して喜ぶべきものではないものなのだが。
「理解されましたか。ですが、これは強大な力や可能性を秘めている反面、人によってはこれまでの『人生』すら変わってしまう危険も存在します。何せ未だその全容が解明されていませんから。それでも貴方は挑戦してみますか?」
九条の腹の底、その真意を探るようなゼクスの目。彼の眼鏡越しに見つめてくるその冷徹さを宿した目に、
「ハハッ……『これまでの人生が変わる』リスクだと? そんなものはあの時にとうに味わってるさ。なら……」
九条は凶悪な笑みをその顔に貼り付かせながら呟く。
彼の人生は、あの時――ジムの同輩による讒言からマスコミにバッシングを受け、協会から追放された瞬間から、九条武治の人生はがらりと変わっている。
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「こちらこそ……是非頼む」
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