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第3話
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第三試合の相手も注目が集まる選手だ。
なんせ相手は王国の戦力である騎士団団長であり、白き羽という冒険者ギルドのギルドマスターをしている人だからだ。
一騎当千とはこの人にあるべき言葉と言っても過言ではないほど強いと言われている。
今回も手加減せずに挑もうと控え室で準備運動をしていると、ドアを蹴り飛ばす勢いで開け、怒りをあらわにする者が現れた。
「おいアッシュ!! 貴様、俺様を騙していたのかァ!!!!」
「あれ、ザムアさんどうしたんですか」
そこには、噴火した火山かのように顔が真っ赤なザムアさんの姿があった。
「どうしたも、貴様……実力を隠していたのか! なぜ俺様に言わなかった! 他に利用できたというのに!!!」
「いや……だって必要ないって最初に言ったのはザムアさんですよ? 実力を測らずに『負けろ』って言って試合に放り出したじゃないですか」
「そういうのはいうのが常識だろうが間抜け!! 貴様は本当にムカつくやつだ!
さっきの魔女様に俺様がどれだけ金をかけたと思っている! 優勝候補を潰すとは貴様殺されたいのかァ!!!!」
一通り叫ばせた後、やれやれと思いながら呆れ混じりのため息を吐く。
正直金と場所と時間さえもらえればいいと思っていたが、1年間こいつの下で働いていたと考えるとなんだか悲しい気持ちになってきた。こんな下衆に従っていたなんて。
「ツケが回ってきた……いや、これから回ってくるかもしれないですね」
「あァ!? って、おい待てアッシュ!」
「ではこれから試合なので」
ザムアさんからの制止を無視し、控え室を後にする。後ろから怒号が飛ぶが、ただ声がでかいだけで僕に全く響かない、内容無しの怒りだった。
###
『続いてはリーヴェ王国の切り札が一つであるロブスト・ノービレ選手ッ! 騎士団団長として団を率いてギルドの運営もする彼は、順調に勝ち進んでおります!
そしてその対戦相手であるアッシュ選手ッ! どちらも快進撃を続けておりますがまだまだ止まらないのはどっちだ~~っ!!?」
茶色の髪と紅蓮の瞳を持ち、右目は縦の傷が入っていた。重厚な鎧に身を纏う筋骨隆々の姿が目の前にある。
第一試合で対戦したやつとは全くもって比べ物にならないほどの気配を感じる。強者はやはり佇まいからも感じさせるみたいだ。
「貴殿がアッシュか。先ほどの試合、俺も見させてもらったぞ。とても良い剣技であった」
「どうも、ありがとうございます」
やべー……俺この人の試合見てないや。どんな風に攻撃してくるかもわからないが、まあ何とかなるか。
楽観的に考え、腰に携えている木剣を抜いて構える。相手も背中の剣を抜き、構えた。一気に威圧感が増し、重力がます感覚がする。
『果たしてどちらの剣技が圧倒するのかぁ。それでは? レディー、ファイッッ!!!』
「こちらから行こせてもらおう。はァッ!!!」
「〝弐式・炎月斬り〟!!」
――ガギィィィンッッ!!!
ロブストさんが走り出して剣を上から振るってきたので、僕は木剣で受け止める。その威力は絶大で、地面にクレーターが出来上がるほどだった。
近距離で剣を打ち合うと衝撃波が飛び、突風が城内に吹き荒れる。
「フォルティッシムス剣術をここまで捌けるとは思わなかったぞ!」
「そりゃどうもです」
師匠から何も教わることがなくなるくらいまで刀を教わっていたが、ここまで善戦するとは思っていなかった。
得意の刀ではなく剣で戦って木で戦っているとはいえ、やはり強いなこの人。
「だが俺は少し癪だ。なぜ真剣で戦わないのだッ!」
「…………。怒らせちゃってたんですね、すみません」
『本気を出す』とは言ったものの、必要最低限の手加減はしていたのだ。それに対して怒っていたなら仕方ない。少し見せるしかないな。
【無限収納】に木剣をしまい、僕が鉄を打って作り上げた刀を取り出す。
「――ッ!!?」
瞬間、ロブストさんの顔が青ざめる。
刀を持ったことで、内に秘められていた殺意が漏れ出した。佇まい、気配、攻撃力、ありとあらゆる本質を知り、後悔しているように見えた。
「本気でいいんですよね。【縮地】」
「消え――」
呆然と僕の気配だけが残った空間だけを見つめ、背後の僕に気がついていなかった。
「〝壱式・斬光〟」
――キンッ。
わざとからぶって空に刀を振るった後、刀身を首元に当てる。空に立ち込めていた雲は真っ二つに割れていた。
ロブストさんは「ハハッ」と一回笑うと、剣を地面に落として両手を挙げる。
「降参だ。俺は敵わない」
「いい戦いでしたよ」
「フッ、貴殿の圧勝だっただろうに」
会場がどっと湧き、歓声が送られる。
「ぎ、ギルマスに勝っちまったぞ!」
「第1試合はまぐれじゃなかったのか……」
「クソ強いしいい戦いじゃねぇかよ!」
「番狂わせな野郎だ……」
「いいぞーやっちまえー!」
僕の実力を認めなかった者や、騙していて嫌な思いをしていた人もそんなことを忘れるくらいの戦いをしていたらしい。
『アッシュ選手の勝利だーーッ!! この国の頂点に上り詰めるのはお前だアッシュゥウウ!!!!』
さて……残された試合はあと二つだ。
なんせ相手は王国の戦力である騎士団団長であり、白き羽という冒険者ギルドのギルドマスターをしている人だからだ。
一騎当千とはこの人にあるべき言葉と言っても過言ではないほど強いと言われている。
今回も手加減せずに挑もうと控え室で準備運動をしていると、ドアを蹴り飛ばす勢いで開け、怒りをあらわにする者が現れた。
「おいアッシュ!! 貴様、俺様を騙していたのかァ!!!!」
「あれ、ザムアさんどうしたんですか」
そこには、噴火した火山かのように顔が真っ赤なザムアさんの姿があった。
「どうしたも、貴様……実力を隠していたのか! なぜ俺様に言わなかった! 他に利用できたというのに!!!」
「いや……だって必要ないって最初に言ったのはザムアさんですよ? 実力を測らずに『負けろ』って言って試合に放り出したじゃないですか」
「そういうのはいうのが常識だろうが間抜け!! 貴様は本当にムカつくやつだ!
さっきの魔女様に俺様がどれだけ金をかけたと思っている! 優勝候補を潰すとは貴様殺されたいのかァ!!!!」
一通り叫ばせた後、やれやれと思いながら呆れ混じりのため息を吐く。
正直金と場所と時間さえもらえればいいと思っていたが、1年間こいつの下で働いていたと考えるとなんだか悲しい気持ちになってきた。こんな下衆に従っていたなんて。
「ツケが回ってきた……いや、これから回ってくるかもしれないですね」
「あァ!? って、おい待てアッシュ!」
「ではこれから試合なので」
ザムアさんからの制止を無視し、控え室を後にする。後ろから怒号が飛ぶが、ただ声がでかいだけで僕に全く響かない、内容無しの怒りだった。
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『続いてはリーヴェ王国の切り札が一つであるロブスト・ノービレ選手ッ! 騎士団団長として団を率いてギルドの運営もする彼は、順調に勝ち進んでおります!
そしてその対戦相手であるアッシュ選手ッ! どちらも快進撃を続けておりますがまだまだ止まらないのはどっちだ~~っ!!?」
茶色の髪と紅蓮の瞳を持ち、右目は縦の傷が入っていた。重厚な鎧に身を纏う筋骨隆々の姿が目の前にある。
第一試合で対戦したやつとは全くもって比べ物にならないほどの気配を感じる。強者はやはり佇まいからも感じさせるみたいだ。
「貴殿がアッシュか。先ほどの試合、俺も見させてもらったぞ。とても良い剣技であった」
「どうも、ありがとうございます」
やべー……俺この人の試合見てないや。どんな風に攻撃してくるかもわからないが、まあ何とかなるか。
楽観的に考え、腰に携えている木剣を抜いて構える。相手も背中の剣を抜き、構えた。一気に威圧感が増し、重力がます感覚がする。
『果たしてどちらの剣技が圧倒するのかぁ。それでは? レディー、ファイッッ!!!』
「こちらから行こせてもらおう。はァッ!!!」
「〝弐式・炎月斬り〟!!」
――ガギィィィンッッ!!!
ロブストさんが走り出して剣を上から振るってきたので、僕は木剣で受け止める。その威力は絶大で、地面にクレーターが出来上がるほどだった。
近距離で剣を打ち合うと衝撃波が飛び、突風が城内に吹き荒れる。
「フォルティッシムス剣術をここまで捌けるとは思わなかったぞ!」
「そりゃどうもです」
師匠から何も教わることがなくなるくらいまで刀を教わっていたが、ここまで善戦するとは思っていなかった。
得意の刀ではなく剣で戦って木で戦っているとはいえ、やはり強いなこの人。
「だが俺は少し癪だ。なぜ真剣で戦わないのだッ!」
「…………。怒らせちゃってたんですね、すみません」
『本気を出す』とは言ったものの、必要最低限の手加減はしていたのだ。それに対して怒っていたなら仕方ない。少し見せるしかないな。
【無限収納】に木剣をしまい、僕が鉄を打って作り上げた刀を取り出す。
「――ッ!!?」
瞬間、ロブストさんの顔が青ざめる。
刀を持ったことで、内に秘められていた殺意が漏れ出した。佇まい、気配、攻撃力、ありとあらゆる本質を知り、後悔しているように見えた。
「本気でいいんですよね。【縮地】」
「消え――」
呆然と僕の気配だけが残った空間だけを見つめ、背後の僕に気がついていなかった。
「〝壱式・斬光〟」
――キンッ。
わざとからぶって空に刀を振るった後、刀身を首元に当てる。空に立ち込めていた雲は真っ二つに割れていた。
ロブストさんは「ハハッ」と一回笑うと、剣を地面に落として両手を挙げる。
「降参だ。俺は敵わない」
「いい戦いでしたよ」
「フッ、貴殿の圧勝だっただろうに」
会場がどっと湧き、歓声が送られる。
「ぎ、ギルマスに勝っちまったぞ!」
「第1試合はまぐれじゃなかったのか……」
「クソ強いしいい戦いじゃねぇかよ!」
「番狂わせな野郎だ……」
「いいぞーやっちまえー!」
僕の実力を認めなかった者や、騙していて嫌な思いをしていた人もそんなことを忘れるくらいの戦いをしていたらしい。
『アッシュ選手の勝利だーーッ!! この国の頂点に上り詰めるのはお前だアッシュゥウウ!!!!』
さて……残された試合はあと二つだ。
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