黒衣の姫は、奪えない。~離縁された俺は“不吉な男”と捨てられたが、実は魔物を遠ざけていたらしい。今さら戻れと言われても遅い~ これタイトル

嵐の翌朝。黒砂の浜で倒れていた少女は、そう言った。

「安心して。あなたの魂は、すぐには奪わないわ」

漁師の青年カイルが拾ったのは、魔族の第三王女リリス。
魂を糧とし、感情を持てば力を失う種族の少女だった。

「魔力が戻れば、あなたの魂をもらうわ」
「好きにしろよ」

家族を魔族に奪われ、さらに「不吉な男」として婚約者と村に見捨てられたカイルは、目の前の魔族にも一切の恐れを見せない。

だが——おかしなことが起きていた。

本来なら簡単に奪えるはずの魂が、なぜか奪えない。
それどころか、彼のそばにいると魔物すら近づかなくなる。

理由は分からない。
それでも、リリスは彼のそばを離れられなかった。

温かい食事。
何気ない会話。
名前を呼ばれる日々。

触れてはいけないはずのものが、少しずつ形を持ち始める。

やがて村は知ることになる。
カイルを追い出してから、魔物の被害が増え続けていることに。
そして彼こそが、“それらを遠ざけていた存在”だったことに。

手のひらを返すように差し伸べられる復縁の言葉。
だがカイルは、もう振り向かない。

崩れ始める村。
迫り来る魔族。
そして、すべてを失った元婚約者は——彼のもとへ縋りつく。

「お願い……助けて……」

だが返ってきたのは、変わらない一言だった。

「知らないな」

奪うはずだった命を、守るために。
黒衣の姫は、選ぶ。

——これは、すべてを奪われた青年と、
奪えなくなった姫が紡ぐ、静かな逆転の物語。
あらすじ
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