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第十四章:脈動

14-27ジュメルの鼓動

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「全てはジュメルが裏で絡んでいるのですわ!」

 
 アニシス様はそう言って私たちを見る。
 それを受けてユカ父さんは静かに言う。

「アニシス、学園長室へ来てください。話はそれからです」

 ユカ父さんにそう言われ、アニシス様も静かに頷くのだった。


 * * * * *


「今までの事を考えるに、ジュメルの活動が活発化していますわ」


 学園長室に来てアニシス様はそう言い放った。
 ユカ父さんはそれを聞き、駆け付けて来たマーヤ母さんに傷の手当てを受けながら頷く。

 アニシス様はそれを見てから話を続ける。


「もともとスィーフに出た魔物は単独でスィーフの『鋼鉄の鎧騎士』を襲いましたわ。あの地域は古代より数多くの遺跡があるのでこう言った古代の魔物が何かしらの原因で復活する事もありましたわ」

 アニシス様はそう言いながらみんなを見渡す。
 事情を知っている人は相づちを打っている。
 確かにあそこには古代のモノがゴロゴロ眠っているらしく、私たちも田ウナギの件では苦労させられた。

「ですので最初は単に魔物の復活と思っていたのですが現地に行って他にも巨人族の影や集団でうごめく魔物たちがいたとの話でしたわ」

 アニシス様がそんな話を続けていると、ユカ父さんの手当てが済んだマーヤ母さんがお茶を始める入れ始める。
 
「そして今回の連結型魔晶石核の強奪、あのアリーリヤという女学生もジュメルの関係者でしたわ。連結型魔晶石核の使い方としては本来は『鋼鉄の鎧騎士』の動力源として使うのですが、そこから発生する一時的な膨大な魔力は色々な物に影響をしますわ。但し、制御する必要があるので無限に魔力を引き出すというわけにはいきませんがですわ」

 マーヤ母さんはお茶をみんなに配る。
 ユカ父さんはそれを手に取りお茶をすする。
 それから静かに聞く。


「高出力の動力源を手に入れなにをしようとしているのですか、ジュメルは?」

「考えられる事はあの魔物の強化ですわ……」


 ユカ父さんのその質問にアニシス様はそう答えた。
 同時にアニシス様のその答えにこの場にいるみんなの表情がこわばる。


「魔物にあの連結型魔晶石核が使えるの?」

「ソルミナ教授、魔物の定義はなんでしたかしら?」

 ソルミナ教授はアニシス様に質問するとアニシス様は逆に魔物について聞いて来た。
 
「魔物は大きく分けて魔獣と幻獣、そしてそれ以外の魔法生物たちに分けられる。そしてどれもこもこれも共通しているのは魔力結晶を持つと言う事。これが魔物たるゆえんね」

「そう、魔物と称される生物は全て魔力結晶体を持っていますわ。あたかもそれが動力源と言わんばかりに。通常の獣には無いものですわ。大小の差はあれ、魔物を倒すとその体から魔力結晶が手に入りますわ。冒険者などはその魔力結晶をお金に換金する者もいますもの。ではその保有する魔力結晶が連結型魔晶石に置き換わったとしたらですわ……」

 アニシス様がそう言った途端周りのみんなも理解する。


「でも、連結型魔晶石核を魔物の魔力結晶に置き換えるだなんて、そんな事出来るの!?」

「普通では出来ませんわ…… でも相手はあのジュメル。最盛期には異界の神ですら呼び出す事があったと聞きますわ。だとすれば彼らの持つ技術力は相当なものですわ」


 アニシス様にそう言われソルミナ教授は言葉を失う。

 以前話には聞いてたし、そう言えばあのアンダリヤも「賢者の石」とか言うの作っていた。
 天候の塔でもなんかあの赤い指輪掲げて叫んでたジュメルもいたけど、そう考えるとかなりの技術を持っているんだ……


「ですから、考えられるのはあの魔物の強化ですわ。旧型とは言え、ティナの国の素体とガレント王国の外装を併せ持った『鋼鉄の鎧騎士』を一撃で破壊する魔物ですわ、それが更に強化されたらですわ……」


「ジュメルはまた世界を滅ぼそうとしているというのですね?」

 ユカ父さんは湯呑を机に置きながらそうアニシス様に聞く。
 アニシス様は何も言わずに首を縦に振る。

 ジュメルが、あの面倒な連中がそんな大それたことを望んでいただなんて……


「お姉ちゃん、やっぱり悪の組織は叩かなきゃだめだよ!」

「いや、そう言われても私たちに何が出来ると言うのよ?」


「そうですよルラ。この件は私たちに任せないさい。その為の世界連合軍です。マーヤ、すぐにロディマス将軍に連絡を。そして各国に緊急招集を掛けましょう。事態は深刻になりつつあります。国の防衛のかなめ、『鋼鉄の鎧騎士』が対処できない相手が現れるかもしれないのですから!」

 ユカ父さんはそう言って立ち上がり手をかざして言う。
 それはいつもの優しいユカ父さんでは無かった。
 まるで今にも戦場に飛び出そうとするかのように。

 私とルラはユカ父さんのその姿を見て黙ってしまうのだった。


 * * * * *


「宿舎は半壊、緊急で逃げ出した生徒たちはゲストハウスに暫定収容か…… まさかこの学園であそこまで大事になるとはね」

 ヤリスはそう言いながらソルミナ教授の研究室で魔晶石の原石をいじっている。
 アニシス様はティナの国の代表として、そして今回の問題について解説する為にユカ父さんと一緒にゲートを使ってガレント王国へと行った。
 
 話しでは連合軍も一旦ガレント王国へ戻っているらしいけど、緊急招集でガレント王国で各国の要人で会議が開かれるらしい。
 ヤリスは第四王女なのでガレント王国へは戻らなくていいと言わらたらしい。

 そして私もルラもユカ父さんに言われて絶対に大人しくしていろと言われている。


「はぁ~、研究室は使えるようにはなったけど、アニシスがいなければ連結型魔晶石核は作れないもんね。私たちはどうしようか?」

 ソルミナ教授は魔晶石核をいじりながらそう言う。
 一応一つは取り返せているからもう一つ作り上げればアニシス様の言う最強の「鋼鉄の鎧騎士」を作る為の動力は足りる。
 しかしソルミナ教授の言う通りアニシス様がいないと新型の連結型魔晶石核は作れない。

 みんなが落ち込んでいたらどこかに行っていたルラが戻って来た。


「たこ焼き買って来たよ! みんなで食べようよ~」

「ルラ、あんたどこに行ったかと思ったらたこ焼き買って来てたの?」

 ニコニコと湯気が立ち上るたこ焼きを手にルラは嬉しそうにしている。
 そしてそれをテーブルに置いて言う。


「だってみんな暗い顔しているんだもん。あたしたちに何かできるかどうか分からないなら今はちゃんとご飯食べて準備してなきゃだめだよ!」


 そう言ってびっと爪楊枝を差し出す。
 私はそれを受け取りながら思わず笑ってしまった。

「ぷっ! ご飯食べとけって、あんた今朝もちゃんとおかわりしてたじゃないの? でもそうね、今は悩んでいても仕方ない、たこ焼き食べよっか?」

「うん!」



 ルラはそう言てヤリスやソルミナ教授にも爪楊枝を手渡すのだった。 
 
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