春夏秋冬、花咲く君と僕

えつこ

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第二章:夏

25 *

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「んぁ、ああっ……、あっ、あ……」

 最初は一本だった指だが、抽挿を繰り返し、二本に増やされる。同時に、性器も扱かれ、椿は声を我慢するのを忘れて、与えられる刺激に悶えた。
 性器も後孔も他人に触らせるのは初めてで、その相手が秀悟であること、さらに両方ともに快感を与えられて、椿は混乱していた。けれど、椿の身体の反応は正直で、先走りをとろとろと流し、後孔は秀悟の指をニ本咥えて離さない。

「気持ちいい?」
「っ、わかん、ないっ……」
「でも、身体は気持ちいいって反応してるよ」
「……っ、きもち、いい……?」

 椿は快感に対する適切な表現を知らなかった。椿にとって自慰という性的な行為は、発情期に伴う煩わしいものに過ぎなかったのだ。
 しかし、今、秀悟にそれが『気持ちいい』と教えられ、合点がいく。そして、『気持ちいい』を自覚すると、快感が増幅する。

「っ、あ……きもち、いいっ……んあっ……」

 椿の声は一層甘くなり、表情はとろりと蕩ける。フェロモンは甘美に香り、秀悟を誘った。そして、秀悟のフェロモンも強く香る。二人の間にはαとΩの本能だけが残っていく。

「あっ……な、なむら、さん……んっ……」

 限界が近い椿は、息も絶え絶えで秀悟を呼ぶ。早く楽にさせて欲しい気持ちと、もっと続けて欲しい気持ちがせめぎ合って、椿の瞳からは涙が溢れた。
 椿の涙すら、今の秀悟にとっては興奮させる要因でしかない。秀悟自身は下着の中で痛いほど勃ち上がり、窮屈にしている。本能のままに椿を犯すことができる状態だが、秀悟に残った僅かな理性がそれを拒む。

「っあ……、きも、ちいっ……まって、ああっ」

 秀悟の指が椿の前立腺をこねると、椿はビクビクと身体を揺らす。性器への刺激と相まって、椿は急速に絶頂に押し上げられた。視界がちかちかと瞬き、全身にぶわりと快感が走り抜ける。

「だめ……、っあ、あ、なにかっ、きちゃう……」
「椿くん、イッていいよ」
「あっ、ななむらさんっ…、んぁ、あっ、ああっ」

 椿は目を見開き、背中を反らして達した。吐き出した精液は秀悟の手を汚し、後孔は秀悟の指をぎゅっと締めつける。

「っ……、はぁ……」

 余韻を漂う中で、酸素を求めて椿の胸は上下する。徐々に椿の身体は弛緩し、数回まばたきした後瞼を閉じた。

「椿くん……?」

 椿を心配した秀悟は様子を伺う。規則正しい寝息が聞こえ、椿が眠りに落ちただけだとわかり、安堵した。
 秀悟は興奮が残ったままで、ふーふーと荒い呼吸を繰り返す。残された理性で自制し、椿から離れ、トイレへと駆け込んだ。

 秀悟は完全に勃ちあがった性器を沈めるために、静かに自慰する。フラッシュバックするのは、椿の艶やかな表情や柔らかい肌の感触、それと熱い粘膜だ。興奮冷めやらぬ秀悟は二回射精して、ようやく落ち着いた。
 トイレから出て、汚れた手を洗っているうちに、秀悟は思考が冷静になってくる。自分がしでかしたことを後悔したが、後悔したところで、どうすることもできない。

 後ろめたさを感じつつ、眠っている椿の身体を綺麗にし、脱がせた下着とスウェットを履かせた後、ベッドへと運んだ。椿の穏やかな寝顔に、秀悟は笑みがこぼれ、続いてため息を吐いた。



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