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番外編*十五年目の煩悩
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*****
「お父さん」
由輝の修学旅行三日前。
ソファに座ってテレビを見ている俺の背後に、和葉が立った。ソファの背に両肘をつき、耳元で囁く。
「私、焼肉食べに行きたい」
「焼肉?」
「うん。いつもより高いプランの」
家族で焼肉に行くと、大体は食べ放題の一番安いプラン。最近は行っていない気がするが。
「お兄ちゃんがめちゃくちゃ食べるからって、ずっと行ってないでしょ? 高級なお肉を、ゆっくり食べたい」
事実だが、そういう言われ方をすると、由輝に対して罪悪感をもつ。
「で、帰りに、近くのパフェのお店でぇ――」
「――調子に乗り過ぎ!」
更に和葉の背後に、柚葉。
「いーじゃない。お父さんとお母さんのデートの為に、お祖母ちゃん家に泊まりに行ってあげるんだから」
「泊まり?」
「お祖母ちゃんたちにお寿司をねだる気でしょう? お寿司食べて焼肉食べてなんて、太るよ!」
「若いから、大丈夫だもん!」
「お母さんも昔はそう思ってたけどね!」
何の言い合いだ。
「和葉。寿司と焼肉を続けては、胃もたれしないか?」
「胃もたれって?」
そこからか。
「いいな、若いって」
「でしょ? ね? だから!」
「わかったよ」
「やったぁ!」
和葉がソファに身体を預けてぴょんっと飛び跳ねた時、二回でバタンッとドアが閉まる音がした。
「お兄ちゃんだ」と小声で言うと、娘はリビングを出て行く。
「泊りって?」と、柚葉に聞く。
「お母さんがね、次の日の朝、学校まで送ってくれるって」
「ふぅ……ん?」
気の抜けた声が出た。
食事デートがお泊りデートに変わった。
お泊り、ってキモいな。
自分で自分の思考に突っ込みを入れながらも、下りてきた息子に何でもない表情を向けた自分は、なんて薄情な父親だろうと少しだけ反省した。
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