目が覚めたら弟に縛られて監禁されていました。

アメショもどき

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2話 トイレ

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 カレーを食べ終わって、布団の上で少しまったりタイム。

 直哉が持ってきてくれたペットボトルの水を飲む。

 辛口のカレーを食べた後だから水が美味しい。

 ……飲ませてもらってるのは少し恥ずかしいけどな。

「あ、わりぃ」

 ちょっと口からこぼれてしまった水を拭いてくれる直哉。

 カレーも水もそうだけど、甲斐甲斐しく世話はしてくれるんだよなぁ。

 食後に歯まで磨いてくれたし、僕に怒ってるとか嫌ってるとかって態度ではない。

 むしろ今まで以上に仲良くやっている感じすらする。

 直哉が進学してからはモデルの件とかあって会えばケンカしてる感じだったからなぁ。

 すぐに仲直りはするんだけど、仲がいいかと言われると『うーん』って感じだ。

 昔は『おにいたんすきすきオーラ』が溢れてたのになぁ……。

 どれくらい昔かって?

 小学生低学年くらいだ。

 まあ、ともかく態度だけ見ていると監禁とかするようには見えない。

 もう分からないからには素直に聞いてしまおう。

「直哉、どうしてこんな事するの?」

 ペットボトルとかの片付けをやっていた直哉を見つめてストレートに聞いてみた。

 少し楽しそうにすら見えた直哉の動きが止まって沈んだ顔になる。

「バカなにーちゃんには分かんねぇよ」

 それだけ言って、納戸から出ていってしまう直哉。

 最後まで僕のことは見てくれなかった。



 ――――――



 一大事である。

 意味深なことを言って去っていった直哉の真意を考えていたんだけど、そんなことなんてどうでも良く……はないか。

 ひとまず横に置いておきたくなるほどの一大事である。

 おしっこしたい。

 辛口カレーを食べていつもの調子で水を飲んだせいで、すごくおしっこしたい。

 バカげた話だけど、笑い事じゃない。

 足枷のせいで納戸から出られない僕にとってトイレは死活問題だ。

 このままだと漏らしてしまうかの瀬戸際だ。

 マヌケな話だけど、中途半端に我慢してしまったせいで決壊が近い。

「直哉ーっ!なーおーやーっ!」

 もうどうしようもないと思って、恥も外聞もなく叫ぶ。

 叫んでも外には聞こえないって言ってたけど、家の中なら聞こえるだろうか?

 聞こえなかったら……僕の尊厳は死ぬ。

「にーちゃん、どうしたっ!?」

 そんな心配をしていたけど、直哉は僕が呼んだらすぐに来てくれた。

「直哉っ!おしっこっ!」

 階段を駆け下りようとしていた直哉が足を滑らせた。

 危ないっ!

 と思ったけど、手すりを握ってなんとか耐える直哉。

 び、びっくりさせないでほしい、ダムが決壊するから。

「な、なんだ、そんなことかよ」

「そ、そうは言うけど、僕的には死活問題です……」

 モジモジしてないとヤバいくらいにはもう限界です。

「ちょっと待ってろ」

 足枷を外してくれるのかと思ったら、納戸の外に出ていってしまう直哉。

 死んだかな?僕。

 死を覚悟する僕だけど直哉はすぐに戻ってきてくれた。

 手になんか見慣れたものを持って。

「えっと……それはもしかして……」

「ああ、尿瓶だ」

 やっぱり。

 直哉が手に持ったプラスチック製のそれは、漫画とかで見慣れた形をしていた。

「ど、どこで買ったの?それ」

 いろいろなツッコミの前にまず浮かんだ疑問がそれだった。

「Amazon」

 Amazonすげぇ。



「いやいやいや、待とう落ち着こう。
 それはない、それはないって」

 尿意も忘れて必死で抵抗する僕。

「漏らしたいんなら別にそれでもいいけど?」

 パニクる兄に対して弟は冷静だ。

 だって尿瓶って言ったらあれだよ?

 アレをアレしてアレするためのものだよ?

 むしろなんで直哉が冷静でいられるのかが僕には不思議で仕方ない。

 兄とは言え人のアレをアレするなんて嫌でしょ?

 ……って、ああ、そうか。

「手枷、外してくれるの?」

「は?」

 違ったらしい。

「は?じゃなくってっ!
 手枷外してくれないとおしっこできないじゃんっ!」

「出来るだろ。
 今させてやるから大人しくしてろよ」

 やばい、こいつ本当に僕のアレをアレするつもりだ。

 流石にそんな訳にはいかないので、膝を曲げて出来る限り丸くなる。

 後ろ手で縛られているのでだいぶ不格好な感じだけど、これが今の僕に出来る最大限の防御態勢だ。

 これなら直哉も手出しできまい。

「別にしたくないならいいけど、漏らすだけだぞ?」

 呆れた感じで言われた。

 直哉の言葉を聞いて、あまりの事態に引っ込んでいた尿意がまた襲いかかってくる。

「お、おしっこのときだけでいいから手枷外してくれない?
 終わったらまた大人しく縛られるからさ」

 直哉の慈悲にすがってみるけど……。

「はっ」

 鼻で笑われた。

 もう僕には漏らすか直哉にしてもらうかの2択しか残されていないようだ。

 どちらにしても僕の尊厳は死ぬのか。

 それならもう無駄に意地を張るのはやめよう。

「えっと……お願いします」

 せめて布団は汚すまいと、足を伸ばして防御態勢を解除する。

「始めっから素直にそうしときゃいいんだよ。
 にーちゃんのチンコなんて見慣れてるんだから無駄に時間かけさせんなよ」

 いや、見慣れてるって言ったってそれは一緒にお風呂に入ってた小学生までの話で……。

 その頃とはもう色々事情が……。

 いや、もう直哉にやってもらうと決めた以上はいらないことを考えるのはやめよう。

 余計恥ずかしくなるだけだ。

 大人しくなった僕に、尿瓶を持った直哉が近づいてくる。

 そして、僕の腰の辺りに膝をつくと寝巻き代わりのスウェットに手をかけた。

 何故かそこでためらうかのように手を止める。

「直哉?」

 やるならやるで早くしてほしいんだけど……。

 そろそろ決壊しそう。

「あ、ああ。
 ズボン下ろすからな」

 一言そう言うと直哉はスウェットを降ろして、僕のボクサーパンツが丸出しになる。

「パ、パンツも下ろすぞ」

 いちいち宣言しなくていいので早くしてください。

 本当にそろそろ限界です。

 僕の気持ちも知らずに、直哉はゴクリと大きく喉を鳴らしたあと焦らすようにゆっくりとパンツを下ろしていく。

 尚弥にパンツを剥かれて、まろびでてくる僕のアレ……ていうか、チンコでいいや、もう。

 とにかく早くしてほしい。

「にーちゃんのチンコだ……」

 思わずといった感じでなにか言ってる直哉。

 見慣れてるって言ってた割にやたらとまじまじと見てくる。

「にーちゃんでっかいのに皮被ってる……」

 実況はいいので早くおしっこさせてください。

「あの、直哉?
 そろそろ本気でやばいんだけど……」

 僕の声を聞いて尚弥もハッと我に返ったみたいだ。

「あ、ああ、今すぐ用意するから。
 さ、触るぞ」

 直哉はそう宣言すると、恐る恐るといった感じに僕の股間に手を伸ばしてくる。

 ようやく気づいたけど、さっきっからの宣言は僕に断っているというより、自分を奮い立たせるために言ってるんだな。

 そんなに嫌ならこんな事しなきゃいいのにと思うけど、申し訳ないけどもう僕には余裕がない。

「直哉、悪いんだけど本当にもう限界なんだ。
 早くお願い」

「わ、分かってるって!」

 僕に催促された直哉が、思い切ってという感じで勢いをつけて僕のチンコを握ってくる。

「冷たっ!」

 直哉の手の冷たさに思わず叫んでしまった。

「わ、わりぃっ!」

 直哉も僕の声に驚いて手を離してしまう。

「い、いや、今はそんなことより早くお願いします……」

 冷たくてびっくりしたせいもあって、もう本当に無理。

 ここまで恥ずかしい思いしておいて、この上漏らせるかという意地だけで我慢している状態だ。

「わ、わりぃ、今すぐやるから」

 直哉は慌てた様子で、また冷たい手で僕のチンコを握ってくる。

 冷たいのは分かっていたので我慢だ。

 そのまま、直哉の手によって僕のチンコは尿瓶の中に入れられた。

「よし、いいぞ」

 直哉の言葉が終わる前に、我慢に我慢を続けたおしっこを放出する。

 狭い納戸の中に僕が放尿する音が響く。

 おしっこの臭いはするし、直哉は放尿しているチンコをジッと見つめてるし恥ずかしさが半端ない。

 早く出切ってくれないかと願うけど、我慢し続けただけあってなかなか終わらない。

 と言うか、使い方よく分からないけど、尿瓶の中にチンコ突っ込んだらあとは手離していいんじゃないかな?

 直哉も使い方よく分かってないのか僕のチンコつまんだままだけど。

 もう色んな意味で恥ずかしすぎる。

 永遠に続くかと思った羞恥タイムも当然終わりが来て、水音が止まる。

「あ、あの終わったけど……」

 僕のチンコをつまんだままボーっとしている直哉に声をかける。

「あ、ああ……」

 直哉はボーッとした感じのまま尿瓶を下ろすと、一緒に持ってきていたティッシュを一枚取って先っぽを拭いてくれる。

 振って水気切れないからね。

 さすが直哉、アフターフォローも完璧だ。

 ……もう恥ずかしすぎて自分がなに考えてるかもわかんない。

「じゃ、じゃあ、これ捨ててくるから。
 またしたくなったら呼べよ」

 尿瓶を持った直哉が、こぼさないようにか腰の引けた変な姿勢で階段を昇って納戸から出ていった。

 監禁生活中はずっとこんな感じなんだろうか?

 恥ずかしくて死ぬかもしれない。



 ――――――



 尿瓶の中身を捨てに行った直哉はそのまま戻ってこなかった。

 まあ、僕に用がなければ当然か。

 それにしても、直哉は一体何をしたいんだろう?

 ヒマつぶしのテレビを見ていても、頭に浮かぶのはそのことばかりだ。

 そう、この納戸にはテレビが置いてある。

 どう見ても今までリビングに置いてあったテレビなので直哉が運び込んだのだろう。

 元々地下室としても使えるようになっている納戸だったので、テレビアンテナも電源コンセントもついている。

 お陰でテレビも見れるし、電気ファンヒーターも有る。

 直哉のだけどベッドマットも布団も敷いてあるし、後ろ手で縛られているせいでチャンネルを変えるのが面倒くさいということを除けば、結構快適に過ごせてる。

 このことからも、今までの様子からも僕に危害を加えようって気はないと思うんだけど……。

 本当に直哉が何をしたいのか分からない。

 何度も同じことばかり考えているけど、答えが出る気がしない。

 とりあえず、直哉を呼んでもう少し話を聞いてみようか。

 さっき聞いたときは僕には分からないって言われちゃったけど、こうなってしまった以上、僕に出来るのは話をすることだけだ。

 そんな事を考えたせいでさっきのことを思い出してしまい、恥ずかしくなる。

 と同時に、変なことに気づく。

 さっき直哉を呼んだとき、いくらなんでも来るの早すぎなかったか?

 家の中なら声が届くとしてもいくら何でも一瞬で来すぎてる。

 それにあの冷たすぎる手。

 ……嫌な予感がする。

「直哉、もしかしてそこにいる?」

 家の中に響くはずのない程度の声で、納戸の前にいなければ聞こえない程度の声で呼びかける。

「なんだ?またおしっこか?」

 返事はすぐにあった。

 まるでずっとそこにいたみたいに。

 うちにある暖房の中で動かせるのは今ここにあるファンヒーターだけ。

 他は動かしようのないエアコンだけだ。

 リビングの扉を開けてエアコンを全開で使ったとして、階段の吹き抜けまで有る廊下が暖かくなるんだろうか?

「直哉、僕大変なことになっちゃったんでちょっと入ってきて」

「どうした?もしかして漏らしたんじゃねえだろうな?
 遠慮すんなって言ったろ」

 扉から入ってきた直哉は家の中なのにダウンコートを着ていた。

 12月の日が暮れたあとではそれでも寒いのか、顔は真っ白だ。

 もしかしてさっきもこんな顔だったんだろうか?

 切羽詰まってて顔色とか見ている余裕がなかったのが悔やまれる。

「直哉、僕、寂しくて死にそうだから一緒にテレビを見よう」

「はあっ!?何言ってんだ?」

 言葉通り、何いってんだって呆れた顔をしている直哉。

 やっぱりダメか。

 こうなったらストレートに温まるように言うか?

 いや、それじゃダメだろう。

 なにを考えているのか分からないけど、直哉だって寒くないはず無いのに我慢してまでやってるんだ。

 僕が少しなにか言ったからって止めるはずがない。

 いや、仮に素直に止めるって言ったとしても、直哉の姿が見えない以上安心はできない。

「寂しいので一緒にテレビを見ましょう」

 もうこれで押し通すしか無い。

「何いってんだよ。
 バカなこと言ってないでのんびり寝てろ」

 呆れた様子の直哉は階段を登って出ていこうとしてしまう。

「直哉っ!」

「んだよ?」

 思わず呼び止めたけど、なにも考えていない。

 なにか、なにか引き止める方法はないかな?

「監禁したんだから責任とって、僕が寂しくないようにここにいなさい」

「はぁっ!?」

 いや、自分でも何いってんだって思う。

 思うけど……悪くないんじゃないか?これ。

 監禁するような相手に言うセリフじゃないのは分かってるけど、直哉の場合、監禁している割に僕への対応が甘い。

 甲斐甲斐しいとすら言える世話の焼き方を見てると、監禁したことを後ろめたく思っているようにすら思える。

 そこに漬け込んでみよう。

「直哉が監禁なんてするから、1人でテレビ見ているしかなくて退屈だなー。
 寂しくないように直哉も一緒に見てほしいなー」

「バッカじゃねぇの?」

 失敗か、なら泣きわめくか?

 そんな事を考えていたけど、意外にも直哉はマットの端の方に座ってくれる。

「これで満足か?」

「もっと近く」

 ファンヒーターはそんなに大きくないので、そこだと風が当たらない。

「はぁ?」

 直哉は僕を睨みつけてくるけど、素直に少し近寄ってくれる。

「もっと」

 具体的にいえば、僕にべったりくっつく辺りが一番暖かい。

 重ねて言う僕に、直哉は大きなため息をつくと、また少し近寄ってきてくれる。

 まだまだ、まだ足りない。

 度重なる攻防――僕の全勝――の結果、直哉は僕と肩を触れ合わせて座ってる。

 うん、満足。
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