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第6章 一蓮托生
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しおりを挟むあれから静先輩の態度が目に見えて変化した。
「弥桜、おいで。大丈夫か」
事ある毎に僕を抱きしめてはそうやって聞いてくるようになった。
今までとは比にならないぐらい過保護で、一緒にいられる時は必ず朝晩顔を見て様子を確かめ、どうしても用事のある時でさえ細かく連絡をしてくる。
それに対して僕は今まで必死に隠していたものが、もう隠せなくなっていた。
隠す必要がないんだと思ったら、一気にタガが外れて全く隠せなくなってしまった。
静先輩が近づいてくる度にぴくりと反応して身構えてしまう。
本当はそんなことしたくないのに、本能がまだまだ受け入れられていないんだ。
でもやっぱりまた前みたいに思い切り静先輩にぎゅっと抱きつけるようになりたい。
今だって毎日毎日うざったいぐらいに気にしてくれるのはすごく嬉しいし、本音を言えばもっともっと構ってほしいくらいだった。
「弥桜、おいで。・・・・・・嫌じゃないか、気持ち悪くないか」
今も静先輩が抱きしめてくれてるけど、体は強張って上手く喜べない。
「気持ち悪くはないよ。・・・・・・でも、やっぱり静先輩が汚れちゃいそうでやだ」
今までみたいに自分の気持ちを偽って嘘を言う必要がないから、感じたことはちゃんと口に出来るようになった。
体が拒絶しちゃう分、出来るだけちゃんと言葉で気持ちを伝えられるように意識して。
「ごめんなさい・・・。早く静先輩に手を伸ばせるようになりたいのに」
「大丈夫、ちゃんとわかってるから。焦らなくていい」
「んん・・・ちゅっ。うん、ありがとう」
唇だけは、静先輩にしか許したことがなかったから、気にならずにいられた。
気持ちが溢れ出した時はこうやってキスをすることで、ちゃんと伝えられてると安心出来るんだ。
「静先輩・・・・・・絶対、絶対よくなるように頑張るから。ずっと一緒にいて」
「大丈夫、俺が弥桜を手放すわけがないだろ。ずっと隣にいるから」
ちゃんと自分から一緒にいてって言えるようになって、隣にいてくれるって言葉を嬉しいと感じられるようになった自分が、嬉しかった。
気持ちの変化に、頭も心もやっと追いついて受け入れられるようになった。
「静先輩、大好き」
だから出てきた無意識の言葉だった。
自分で言っていて全然気づいてなかった。
「っ⁉︎ ・・・うん、ありがとう、弥桜。俺も大好きだ」
静先輩から聞いた初めての言葉に、胸がいっぱいになって初めて嬉しくて涙を流した。
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