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第6章 一蓮托生
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しおりを挟む「お疲れ、結永。弥桜の友人だ、弥桜を助けてもらった」
「雪藤健吾です」
「あ~、なるほど、朝夜結永でーす。よろしく。で、大丈夫なん?」
静先輩に凭れかかりながらちょっとだけ顔を上げて、結永先輩と雪藤の会話に視線を向ける。
軽い自己紹介だけなのに、すぐ距離を詰めたように見えるのは結永先輩らしい。
僕は元々人間不信ぎみだったから早々簡単には打ち解けたりとかしないけど、結永先輩自体は話てみればすごくフレンドリーで話しやすい雰囲気があるなって、仲良くなってから気付いた。
この場の誰もが気を遣って話づらいことも、なんでもないことのように言ってくれて頭も撫でてくれるから、必要以上に気にし過ぎなくて済む。
「ちょっと、昔の話をしてな。今日は出かけるのはやめて帰ることにする」
「その様子じゃ電車無理だろ。そっち寄るぐらいの時間はあるから、送ってくよ」
「助かる」
「なんかすいません。余計なこと聞いたみたいで」
「まあね、側から見てたらよくやるなって思うけど。それでも本人が頑張ってるから、俺たちは知った上で気にしないように見守ってやるのが一番かなと思ってる」
結永先輩の言葉が心に響いて涙が込み上げてくる。
自分自身とも、静先輩とも、たくさん、数えきれないぐらいたくさん話し合ってきた。
でも、近くで見守ってくれている人の思いを聞くのは、初めてだった。
特に結永先輩は当事者じゃないのに、いっぱい頼って迷惑かけて、でもいっぱい助けてくれて。
静先輩に隠し事を頼んだのも、一回だけじゃない。
本当はめんどくさいとか、こんなΩなんてとか、思ってんじゃないかって。
考えたことがなかったわけじゃない。
どうしても静先輩以外の人は、どこまで行ってもあと一歩信じきれずにいたから。
今の言葉でやっと本当の意味で信じられるようになった気がする。
「昼ご飯は帰ってから食べよう。こっちに寄ってもらうんだ、あんまりのんびりもしてられないだろう」
「あ、じゃあ雪藤、僕たち帰るから。ほんとさっきはありがとう。また今度会おう」
「おう。じゃあ、またな」
結永先輩が戻ってきてまだそんなに話てたわけじゃないけど、僕の状態を気にしてか静先輩が早く帰ろうと席を立つ。
僕も今はあんまり外にいたい気分じゃなくなってたから、雪藤に声をかけてから静先輩の後ろを追うように喫茶店を後にした。
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