僕を拾ったのは大富豪のお嬢様

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「気付いてよ…」

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 一月十三日。

 修二郎が登校すると、クラスメイトの女子生徒と笑顔で会話する舞の姿が視線の先に映る。


 昨日はどうしたんだろうな…。


 そんなことを心で呟くと、自身の席の机にバッグを置く。同時に、旭が笑顔で修二郎の元へ。

 
 「どうしたんだよ?舞見つめて」


 旭の問いに修二郎少し反応が遅れた。そして、我に返ったように旭を見る。


 「あ…。ごめん…。何か、色々あってさ、昨日…」

 「悩み事か?」

 「悩みというほどのものじゃないんだけどさ…」

 
 修二郎がそう答えると、旭は舞を見る。



 「それでね…!」


 楽しそうな舞の声が二人の耳に届く。

 そして、何事もなかったかのような舞の笑顔が目に映る。


 昨日のは何だったんだよ…。


 心で舞に尋ねる。当たり前だが返答はない。

 修二郎はため息をつくように息を吐き出す。そして、一時間目の準備を始めた。


 
 昼休み。

 修二郎は携帯電話の画面を見つめる。

 彼の耳には朝と同様に、女子生徒と会話する舞の楽しそうな声が。

 一瞬だけ、舞を見る修二郎。しかし、舞は彼の視線に気付くことなく、会話を続ける。

 どこか寂しそうな表情を浮かべる修二郎。

 
 何だったんだよ…。本当に…。



 六時五十七分。

 練習を終え、東山取駅へと歩く修二郎。

 駅舎が見えると同時に、修二郎の背後から女子生徒が会話する声が。

 修二郎は思わず振り向きそうになったが、気持ちを抑え、駅舎内へ。

 会話する声が近くなる。

 その中に聞き覚えのある声。

 修二郎はその瞬間、逃げるように定期券で改札機を抜け、ホームへと向かった。


 エスカレーターでホームへ降り、列車を待つ修二郎。すると、一人の女子生徒が彼の元へ。

 彼女に気付いた修二郎は軽く会釈。

 応えるように女子生徒も。


 「偶然だね、修」


 笑顔でそう話しかけたのは舞だった。


 「普段はもっと遅くまで練習してるからな」


 笑顔で応える修二郎。

 二人は会話しながら列車を待つ。

 その中で。


 「そういえばさ、昨日どうしたんだよ?あのメール」

 「ああ…」


 すると、舞は僅かに顔を俯ける。

 どこか恥ずかしそうな表情を浮かべて。

 修二郎にはその表情が何を意味しているのか分からない。


 すると。

 
 「気付いてよ…」


 ふと、修二郎の耳に少女の声が。

 心配するように少女を見る少年。


 「舞?」


 次の瞬間、舞は顔を更に俯け、小走りで女子サッカー部員の元へ。そして、何事もなかったように笑顔で言葉を交わす。

 それが何を意味しているのか、修二郎には分からない。

 少年の頭の中では少女のあの言葉が。


 舞の声だよな…。間違いなく…。どういう意味なんだろ…。


 修二郎がその意味を知るのはいつになるだろうか…。
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