トラウマを抱えたDKがトイレに入れない話

こじらせた処女

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第七章

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「海だーーっ」
「おい、もうちょっとゆっくり行こうぜ。こけるぞ」
「こけないよー、わっ」
行っているそばから小さな段差につまづきよろける時田。咄嗟に引っ張った腕は、やっぱり細い。
「言わんこっちゃない。体がびっくりするだろ」
「ごめんごめん、でも何で海?泳げないよ?」
「お前、久しぶりの外だろ。いきなり人多いとこいったらバテるぞ」
「そっか…気使わせてごめん、ね?」
「別に。体が慣れればお前の行きてえとこ、行けば良い」
「また、一緒に行ってくれる?」
「来週、な」
「っうん!で、今日は何するの?」
「ろくに運動してなかっただろ。だから、バトミントンしようぜ」


 しばらく動いていなかったから、少し体が重い。でも、やっぱり運動するって楽しい。
「っは、っはぁ、」
 時田はもっと疲れたようだ。10分もしないうちに息が浅くなっている。
「ちょっと休憩しよう」
自販機で2本水を買い、そのうち一本を時田に渡す。
「あ゛~!涼しかったのにあっちい…時田?飲まねえの?」
「いや、俺は…」
 あ、そっか。時田はアレを心配している。
「体壊すぞ。行きたくなったら帰ればいい。ちゃんと飲め」
キャップを開けて無理やり渡すと、少し迷ったのち、少しずつ口に含み始めた。


「ごめん篠田、そろそろ…」
「え、ああ。そーだな、帰るか」
「ごめん…」
「いーよ。また来週、な?」
「うん…ねえ、ちょっと、行ってもいい?」
「いいけど…無理してねえか?」
「ううん、一回は治ったから…そろそろ頑張らないと…」
「わかった。あそこのボロいところだったら人来ねえだろ」
夏や祭りになれば、このトイレも使われるんだろうが、この季節。人がいたとしてもコンビニ横に設備の整ったトイレがある。あんなうす汚れたところを使う物好きなんていないだろう。
「いく…ついてきて、くれる?」
「もちろん」


 会話が少なくなっていく。さっきのはしゃぎようはどこへやら、隣を見ると、別人のように顔が白い。この前までは怖がりながらもトイレに入っていたのに。
あいつは犯罪者だけど、まがいなりにも凄い奴だったのかもしれない。
「着いたぞ」
 背中をさすり、入ることを促すけれど、やはりというか、足が震えていてとても入れる状態ではない。
 ふるっ…時田の体が震える。汗で冷えた体、すぐ近くで聞こえる波の音。催さない方がおかしい状況。

 ざぁ…ざぁ…
 どれほどの時間が経っただろう。きっと5分にも満たない。でも互いに無言で、ただ突っ立っているだけ。
「時田、先行ってくる。俺も小便してえ」
 水を飲みすぎたのだろうか、俺もトイレに行きたくなってきた。
 錆びついて、埃まみれで虫が浮いている。別の意味で行くのを戸惑ったが、普通に用を足して戻る。
「しのだぁ…」
 半泣きになりながら前を押さえてモジモジしている時田。
「おしっこしたいぃ」
「じゃあ入らないといけないな」
「入れないぃ…」
でもこいつの膀胱はかなり切羽詰まっているだろう。今から帰って間に合う保証はどこにもない。
 ここでさせなければならない。
「いつもの、するか?」
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