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第三章ー学園生活ー
魅了と解呪
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翌週の1日目、ダレルさんに早目に学園に来てもらい、街でシェイラに会った時の話をした。
「彼女が……モンテルアーノ様に?」
「はい。モンテルアーノ様本人は気付いていなかったし、特に変化も見られませんでしたけど。魔具も着けてましたからね。」
何故、モンテルアーノ様に対して魔法を発動させていたのか。学園では自由にできないから?それとも、また色んな男性に掛けて自分を守らせる為?それとも─モンテルアーノ様を手に入れる為?
ーまた、聖女に全てを奪われる?ー
ギュッ─っと、唇を噛みしめる。
「モンテルアーノ様は、何となく大丈夫な気がするなぁ。なんと言っても…今のモンテルアーノ様は、ナディアしか見えてない感じだしね。」
「はい!?」
そんな理由で大丈夫って──それ、関係無いんじゃないかなぁ!?
「今は禁忌とされている“魅了”はね、心の隙を埋める魔法なんだ。ほんの僅かの隙間があれば……一度で駄目なら、二度三度……と、重ね掛けしていくんだ。それで、重ね掛けされ続けると……心が壊れるんだ───」
ー心が壊れるー
「だけど、今のモンテルアーノ様は、心に隙がないくらい、色んな意味でナディアの事でいっぱいになってるから、喩え精神に関わる魔法を発動されても、その魔法に掛かる確率は低い──殆ど無いと思うよ?」
「………」
さっきの真面目な……ピリッとした空気を纏ったダレルさんはどこへやら……今度はまたニヤニヤと笑っている。
「とっ……兎に角!また、彼女が動き出すかもしれませんから、気を付けましょう!って、言いたかっただけです!」
「そうだね。ははっ……ナディア、顔が赤いよ?」
「放っといて下さい!」
ーやっぱり、ダレルさんは意地悪だ!ー
******
シェイラの側には、伯爵家の令息が2人寄り添っていた。今迄、殆ど関わっていなかった2人だ。何故なのか─答えは明白だ。きっと、彼女はこの週末に、街で出会った2人に魔法を掛けたのだろう。
第三王子達には、特に変化は無い。寧ろ、シェイラ達3人を、何とも言えない顔で見ている。以前の自分達を見ているような気持ちになっているのかもしれない。第三者王子の横で……オレリア様が素敵な笑顔をしているから、きっと、弄られたんだろう。
『あら、以前の殿下を見るようですわ』
なんて、言われてそうだ。
チラッと視線をダレルさんに向けると、ダレルさんはコクリと頷いた。
「あー、そこの窓際に座っている2人は、手伝って欲しい事があるから、放課後、魔法科準備室に来て下さい。」
「先生、私も……お手伝いしても?」
「ありがとうございます。でも、男手が欲しいだけなので……その気持ちだけ受け取っておきますね。」
手を挙げて願い出たシェイラさんに、ダレルさんが断ると
「はい…分かりました。」
と、素直に頷いたシェイラだけど、私には彼女が苛立ったように見えた。笑っているのに、微笑んでいるのに、その瞳は色を変える事なく冷たいままなのだ。
第三者の立場で落ち着いて見れば、本当に分かりやすい。いや、今世では、相手が年下─生徒だからと言う事もあるかもしれないけど。
シェイラが動くなら、こちらも動くだけだ。
何が目的なのかは分からないけど、シェイラの思い通りにはさせない──ただ、それだけだ。
放課後、言い付け通りやって来た2人は、素直に準備室へやって来て、今も素直にダレルさんの言う事を聞きながら、準備室の荷物整理を手伝ってくれている。その間、ダレルさんがゆっくりとその2人に解呪の魔法を展開させている。
たった2日しか期間は経っていないけど、どれだけ精神に負荷が掛かっているか分からない。もし、負荷が大きければ、一気に解呪してしまうと精神を壊してしまう可能性がある─と言う事で、手伝いをしてもらいながら、ゆっくりと解呪しているのだ。
魔法科の部屋で、講師が魔法を使っても、学園のシステムが反応する事はない。
手伝いをしてもらってから30分。
「2人ともありがとう。本当に助かったよ。お礼にお菓子を用意しているから、そこで食べてから帰って良いよ。」
「「はい、ありがとうございます」」
2人はお礼を言うと、用意していたお菓子を食べてから帰って行った。
「そこそこ、負荷が掛かっていたよ。」
たったの2日にしては、負荷が大きかったようで、解呪するのに思っていたよりも時間が掛かったようだった。その分、多くの魔力も使ってしまったようで、今は椅子に座って机に突っ伏している。
コトン──
と、何かの音がしたかと思えば、机の上に小瓶が1本置かれていた。
「「…………」」
小瓶の中には、綺麗な薄紫色の液体が入っている。
「魔力回復のポーション…だね」
「はい。それも…上級じゃないですか?」
おそらく、“影”の人が用意してくれたんだろう。モンテルアーノ様と言うべきか?とにかく──
「「ありがとうございます」」
と、どこともなくお礼を言うと、フッと何かが揺れた気配がした。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ε٩(๑˃ ᗜ ˂)۶з
❋“置き場”に、第三者視点の話を投稿しています。お時間あれば、覗いてみて下さい❋
(* ᵕᴗᵕ)⁾⁾ ꕤ
「彼女が……モンテルアーノ様に?」
「はい。モンテルアーノ様本人は気付いていなかったし、特に変化も見られませんでしたけど。魔具も着けてましたからね。」
何故、モンテルアーノ様に対して魔法を発動させていたのか。学園では自由にできないから?それとも、また色んな男性に掛けて自分を守らせる為?それとも─モンテルアーノ様を手に入れる為?
ーまた、聖女に全てを奪われる?ー
ギュッ─っと、唇を噛みしめる。
「モンテルアーノ様は、何となく大丈夫な気がするなぁ。なんと言っても…今のモンテルアーノ様は、ナディアしか見えてない感じだしね。」
「はい!?」
そんな理由で大丈夫って──それ、関係無いんじゃないかなぁ!?
「今は禁忌とされている“魅了”はね、心の隙を埋める魔法なんだ。ほんの僅かの隙間があれば……一度で駄目なら、二度三度……と、重ね掛けしていくんだ。それで、重ね掛けされ続けると……心が壊れるんだ───」
ー心が壊れるー
「だけど、今のモンテルアーノ様は、心に隙がないくらい、色んな意味でナディアの事でいっぱいになってるから、喩え精神に関わる魔法を発動されても、その魔法に掛かる確率は低い──殆ど無いと思うよ?」
「………」
さっきの真面目な……ピリッとした空気を纏ったダレルさんはどこへやら……今度はまたニヤニヤと笑っている。
「とっ……兎に角!また、彼女が動き出すかもしれませんから、気を付けましょう!って、言いたかっただけです!」
「そうだね。ははっ……ナディア、顔が赤いよ?」
「放っといて下さい!」
ーやっぱり、ダレルさんは意地悪だ!ー
******
シェイラの側には、伯爵家の令息が2人寄り添っていた。今迄、殆ど関わっていなかった2人だ。何故なのか─答えは明白だ。きっと、彼女はこの週末に、街で出会った2人に魔法を掛けたのだろう。
第三王子達には、特に変化は無い。寧ろ、シェイラ達3人を、何とも言えない顔で見ている。以前の自分達を見ているような気持ちになっているのかもしれない。第三者王子の横で……オレリア様が素敵な笑顔をしているから、きっと、弄られたんだろう。
『あら、以前の殿下を見るようですわ』
なんて、言われてそうだ。
チラッと視線をダレルさんに向けると、ダレルさんはコクリと頷いた。
「あー、そこの窓際に座っている2人は、手伝って欲しい事があるから、放課後、魔法科準備室に来て下さい。」
「先生、私も……お手伝いしても?」
「ありがとうございます。でも、男手が欲しいだけなので……その気持ちだけ受け取っておきますね。」
手を挙げて願い出たシェイラさんに、ダレルさんが断ると
「はい…分かりました。」
と、素直に頷いたシェイラだけど、私には彼女が苛立ったように見えた。笑っているのに、微笑んでいるのに、その瞳は色を変える事なく冷たいままなのだ。
第三者の立場で落ち着いて見れば、本当に分かりやすい。いや、今世では、相手が年下─生徒だからと言う事もあるかもしれないけど。
シェイラが動くなら、こちらも動くだけだ。
何が目的なのかは分からないけど、シェイラの思い通りにはさせない──ただ、それだけだ。
放課後、言い付け通りやって来た2人は、素直に準備室へやって来て、今も素直にダレルさんの言う事を聞きながら、準備室の荷物整理を手伝ってくれている。その間、ダレルさんがゆっくりとその2人に解呪の魔法を展開させている。
たった2日しか期間は経っていないけど、どれだけ精神に負荷が掛かっているか分からない。もし、負荷が大きければ、一気に解呪してしまうと精神を壊してしまう可能性がある─と言う事で、手伝いをしてもらいながら、ゆっくりと解呪しているのだ。
魔法科の部屋で、講師が魔法を使っても、学園のシステムが反応する事はない。
手伝いをしてもらってから30分。
「2人ともありがとう。本当に助かったよ。お礼にお菓子を用意しているから、そこで食べてから帰って良いよ。」
「「はい、ありがとうございます」」
2人はお礼を言うと、用意していたお菓子を食べてから帰って行った。
「そこそこ、負荷が掛かっていたよ。」
たったの2日にしては、負荷が大きかったようで、解呪するのに思っていたよりも時間が掛かったようだった。その分、多くの魔力も使ってしまったようで、今は椅子に座って机に突っ伏している。
コトン──
と、何かの音がしたかと思えば、机の上に小瓶が1本置かれていた。
「「…………」」
小瓶の中には、綺麗な薄紫色の液体が入っている。
「魔力回復のポーション…だね」
「はい。それも…上級じゃないですか?」
おそらく、“影”の人が用意してくれたんだろう。モンテルアーノ様と言うべきか?とにかく──
「「ありがとうございます」」
と、どこともなくお礼を言うと、フッと何かが揺れた気配がした。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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