いつまで私を気弱な『子豚令嬢』だと思っているんですか?~前世を思い出したので、私を虐めた家族を捨てて公爵様と幸せになります~

ヒツキノドカ

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強制イベント:手合わせ

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 屋敷に戻ろうと城門へと移動している途中。
 私はふと声をかけられた。

「……ティナ・クローズ殿。貴殿を探していた」
「トリスロッド殿?」

 呼び止めてきたのは近衛騎士団団長、トリスロッド氏だった。

 探していた? 私を? 
 一体何の用件だろうか。

「……時間はあるか」
「そうですね。特に急ぎの用件はありません」
「……では、頼みがある。――自分と手合わせしてもらいたい」

 唐突にそう告げられる。

「……理由をお聞きしても?」
「……いや、特に深い理由はない。ただ、純粋な好奇心だ。近衛騎士団の団員すら軽くあしらう貴殿の実力を知りたい」

 確かにその動機はシンプルこのうえない。

「……さきほど、修練場でノアが暴走させずに魔術を使っているのを見た。あれは貴殿が何かしたのだろう?」
「まあ、そうですね」
「……貴殿が今この城に来ているのは、ノアが魔力制御を覚える手助けをするため。それが達成できそうな今、貴殿がいつまでここに来るかわからん」
「なるほど」

 言われてみれば、ノアに『吸魔の腕輪』を渡し終えた現在、私が王城にやってくる理由は消滅している。
 トリスロッド氏からすれば、私と手合わせする機会はもうないかもしれない、と判断できる状況だ。

 受ける理由はない。
 けれど、受けない理由もない。

「わかりました。では、一度だけ」
「……感謝する」
「場所はどうしますか?」
「……ここでいい。この一角には昼間通りかかるものはほとんどいない」

 トリスロッド氏の言う通り、私がいるのはちょうど建物と建物の隙間のような場所だ。模擬戦を行うくらいのスペースはあるけれど、日中誰かがやってくることもないだろう。

「……誰も目撃者はいない。だからティナ・クローズ殿、貴殿も本気を出すといい。――自分がそうするように!」

 甲高い音を立ててトリスロッド氏は背に吊った鞘から大剣を抜き放った。

 それを私目がけて振り下ろしてくる。
 私はそれを回避したけれど、直前まで私の立っていた場所はトリスロッド氏の大剣によって地面に亀裂が入っていた。

 ……当たっていたら私は大怪我では済まなかっただろう。
 トリスロッド氏は再度告げる。

「……本気を出せ、ティナ・クローズ殿。自分が見たいのは貴殿の本当の実力だ」

 殺気。
 これはただごとじゃない。

「私のことを買ってくれるのは嬉しいですが、真剣で手合わせをするというのは危険です」
「……寸止めなら問題ない」
「それに、わざわざ人目のない場所で行う意図もわかりません」
「……目立つ場所では、貴殿は実力を隠そうとするだろう?」

 どうも買いかぶられているような気がする。
 いや、そうでもないのか。
 今の私は前世よりもはるかに弱いけれど、この時代は平和ゆえに強い人間が少ない。今の私ですら、この時代においては強者なのだ。

「……行くぞ」

 トリスロッド氏は有無を言わさず剣を構えた。
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