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夏の雨と共に現れたあなた

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あまりにも私の気持ちを大事にしてくれる九条さんの言葉に、ずっとずっと何層にも積み重なっていた思いが、堪えきれずに一気に溢れ出した。


周りの目もある、九条さんにも申し訳ない、でも、その涙を止めることなんて出来なかった。


次から次へとこぼれ落ちる雫、押し殺す声。


九条さんは迷惑そうな顔1つせず、


『泣かないで…』


そう言って、私の頬に伝う涙の跡を親指でそっと拭ってくれた。


『君は素晴らしい女性だ。その優しい気持ちを持つ君と、そして…俺達の子どもを、これから先は何よりも1番大切にしたい』


もう…


九条さんに全て覚られてしまった。


この人に、これ以上隠し通すのは不可能だと思った。


『九条さん…黙っていて本当に…すみませんでした。確かに、あなたの子どもです。でも、私は素晴らしくなんてありません、優しくもありません。だって私は…麗華の婚約者であるあなたを…』


『彩葉、それは違う。俺は、麗華ちゃんとは何もない。見合いの話も…父にはすぐに断っていた。でも、なかなか受け入れてもらえず。話がどんどん先に進んでいくのが…正直、怖かった』


そんな…


お見合いを断っていたなんて、そんなこと全然知らなかった。


九条家、一堂家、お互いの家柄を考えると、そう簡単に取り消すことが出来なかったのかも知れないけど…


『…いつもめんどくさいって必ず断っていた麗華が、九条さんとのお話は受けたって聞いて、2人はお互いに想い合っていたんだと…そう思っていました』


だから、私は、麗華のために九条さんを諦めようとずっと必死だった。


お見合いの話がきて、麗華はいったいどう思ったんだろうか?


たくさんボーイフレンドがいても、九条さんとの話を受けたのはなぜ?


私達はいつも近くにいた姉妹なのに、そんなことも知らずにいたんだ。
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