上 下
75 / 116
花火が咲いた夜、君と見た景色~慶都side~

7

しおりを挟む
『…本当に…私…慶都さんの側にいてもいいんですか?』


『ああ。もちろん』


ニコッと笑いかけたら、彩葉はギュッと目を閉じてポロポロと大粒の涙を落とした。


『慶…都…さん、私…あなたの側に…いたい。ずっと一緒に…』


必死で泣く声を抑え、絞り出すように言ってくれた言葉。


震える唇が、その言葉の重さを物語っている。


彩葉の気持ちは…嘘じゃない。


一生懸命に自分の想いを語ってくれたこの人を、今度こそ死ぬ気で守り抜きたいと強く思った。


『…俺も、君の側にいたい。雪都と3人で幸せになろう。毎日笑顔で過ごせるように、ずっと待たせた分も、彩葉の心を俺の愛で満たしてやるから』


美しい肌を涙でいっぱい濡らして、彩葉はうなづいた。


『…本当に夢みたいです。ずっとずっと私も慶都さんが好きでした…』


すぐに言葉を詰まらせる彩葉の肩に、俺はそっと手を差し伸べ、ゆっくりとさすった。


『すみません…ありがとうございます』


『ゆっくりでいい。彩葉の想い、聞かせて』


『はい… 慶都さんとは釣り合わないから、必死で忘れなきゃって思って、何度も何度も忘れる努力をしました。でも…私、慶都さんを忘れることなんて出来ませんでした。いっつもグズグズ悩んで。なのに…あなたはこんな私をずっと想っててくれて…信じられないけど、すごく嬉しくて』


『彩葉…』


『やっと、自分の本当の気持ちに素直になりたいって思えました。だって、こんなにも胸が熱いから…私、慶都さんの胸に飛び込みたい。もう、迷いたくないです』


その瞬間…


夜空を彩るように、一輪の花が美しく咲いた。


まるで2人を祝福するかのように…


俺は彩葉の顔を覗きこんでうなづいてから、その手を取って、そっと握った。


繋いだ手から伝わってくるぬくもりに、心は深くつき動かされ…


例え全て失っても、世界で1番愛おしい人の、この手だけは絶対に離さないと誓った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔族が育てる箱入り娘

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:23

悪女は愛する人を手放さない。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:2,043

黒王子の溺愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:545

はずれのわたしで、ごめんなさい。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:958pt お気に入り:5,738

夫に離婚を切り出したら、物語の主人公の継母になりました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:653pt お気に入り:3,193

処理中です...