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一躍時の人?
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あれから一週間が経ちました。グラネ伯爵家の若夫人とその家令を名乗った二人は騎士団に引き渡されました。その後の調べで王都を騒がせていた詐欺事件との関連が明らかになり、騎士団が詳細な捜索をしている最中だと聞きます。まさか本当に詐欺集団だったとは…我が家の影が集めた情報も多少なりとも役に立ったようです。
「大したものね、あなた。すっかり時の人ねぇ」
あの捕り物劇から、私の評判は大きく変わりました。王都で問題になっていた詐欺集団を捕らえたとして、いきなり持て囃されるようになったのです。
「別に私は何も…リシャール様のお店を潰すと言われたのが許せなかっただけで…」
そうです、私はただ、私の名を騙って店を潰すと言った若夫人が許せなかっただけです。
「でも、あなたのお陰でいくつかの店の被害を未然に防げたし、これまでに被害に遭った店も被害届を出せたのでしょ。十分お手柄じゃないの」
確かにベルティーユ様の言う通り、結果的にはあの若夫人は詐欺集団の一人で、家令に扮していた男がその首領だったそうです。詐欺集団というには少人数で金額の規模も小さく、泣き寝入りしても経営にそれほど影響が出ないレベルのものでしたが、調べれば調べるほど件数は多くなり、今のところ三十件は下らないだろうと言われているようです。
最初は高位貴族の紹介を騙って買い物を繰り返し、少しずつツケ払いをしては次回に綺麗に清算するのを繰り返して信用を得、最終的にはかなりの額のツケ払いで手にしてそのまま逃げる…これが彼らの手口でした。高位貴族の名も段々と横柄な態度に変わるのも計算の内で、店に横暴だが値切る事もない金払いがいい客との印象を植え付け、次の来店で支払ってくれると待っている間に逃げるそうです。
全く、そんな事のために名前を使われた方はたまったものじゃありません。調べが進むうちに名前を使われた高位貴族は、私以外にも少なくとも五人いるそうで、私は彼らの名誉も守ったと大変感謝されました。
そのお陰でしょうか、学園での皆さんの態度も随分と変わりました。殿下に婚約破棄した時は高慢で可愛げのない氷人形と言われていたのですが、今や詐欺を未然に防いだ聡明な令嬢などと言われているそうです。
「あちこちの商会とそのオーナー貴族から感謝されてよかったじゃない。これまでの噂も鳴りを潜めたし」
「そうなの?」
「そうなのって…あなた、自分の事でしょうが?」
「だって…興味ないし…」
そうなのです、今回の捕り物は別に狙ったわけでもなんでもなく、ただリシャール様のお店のためにやっただけです。
「もう。でもこれのお陰で、少しはあの三男との距離も縮まるんじゃない?」
ベルティーユ様が私の気分を上げようとしてか、そう言いましたが…
「それはないわ。だって…リシャール様にフラれてしまったもの…」
「は?」
そうです、あの一件で私はすっかりリシャール様に嫌われてしまったようなのです。距離が縮まるどころか、今ではお店に行く事すら出来なくなったのですから、どうして喜べましょうか…
「大したものね、あなた。すっかり時の人ねぇ」
あの捕り物劇から、私の評判は大きく変わりました。王都で問題になっていた詐欺集団を捕らえたとして、いきなり持て囃されるようになったのです。
「別に私は何も…リシャール様のお店を潰すと言われたのが許せなかっただけで…」
そうです、私はただ、私の名を騙って店を潰すと言った若夫人が許せなかっただけです。
「でも、あなたのお陰でいくつかの店の被害を未然に防げたし、これまでに被害に遭った店も被害届を出せたのでしょ。十分お手柄じゃないの」
確かにベルティーユ様の言う通り、結果的にはあの若夫人は詐欺集団の一人で、家令に扮していた男がその首領だったそうです。詐欺集団というには少人数で金額の規模も小さく、泣き寝入りしても経営にそれほど影響が出ないレベルのものでしたが、調べれば調べるほど件数は多くなり、今のところ三十件は下らないだろうと言われているようです。
最初は高位貴族の紹介を騙って買い物を繰り返し、少しずつツケ払いをしては次回に綺麗に清算するのを繰り返して信用を得、最終的にはかなりの額のツケ払いで手にしてそのまま逃げる…これが彼らの手口でした。高位貴族の名も段々と横柄な態度に変わるのも計算の内で、店に横暴だが値切る事もない金払いがいい客との印象を植え付け、次の来店で支払ってくれると待っている間に逃げるそうです。
全く、そんな事のために名前を使われた方はたまったものじゃありません。調べが進むうちに名前を使われた高位貴族は、私以外にも少なくとも五人いるそうで、私は彼らの名誉も守ったと大変感謝されました。
そのお陰でしょうか、学園での皆さんの態度も随分と変わりました。殿下に婚約破棄した時は高慢で可愛げのない氷人形と言われていたのですが、今や詐欺を未然に防いだ聡明な令嬢などと言われているそうです。
「あちこちの商会とそのオーナー貴族から感謝されてよかったじゃない。これまでの噂も鳴りを潜めたし」
「そうなの?」
「そうなのって…あなた、自分の事でしょうが?」
「だって…興味ないし…」
そうなのです、今回の捕り物は別に狙ったわけでもなんでもなく、ただリシャール様のお店のためにやっただけです。
「もう。でもこれのお陰で、少しはあの三男との距離も縮まるんじゃない?」
ベルティーユ様が私の気分を上げようとしてか、そう言いましたが…
「それはないわ。だって…リシャール様にフラれてしまったもの…」
「は?」
そうです、あの一件で私はすっかりリシャール様に嫌われてしまったようなのです。距離が縮まるどころか、今ではお店に行く事すら出来なくなったのですから、どうして喜べましょうか…
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