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晴れの日を迎えて
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晴れ渡る青い空が広がっています。今日は私とリシャール様の結婚式です。
婚姻を結んでから一年半余り、私達がようやく本当の夫婦になる日が訪れました。学園を卒業したらすぐに…と思っていましたが、学園卒業後に結婚する方はかなり多く、式場などの手配の関係で直ぐに…とはいかなかったのですよね。結局卒業してから半年ほどかかってしまい、季節は春を過ぎ、届く風はすっかり夏の装いです。
「まぁ、レティ!綺麗だわ」
「本当に。よくお似合いよ」
涙目でそう仰るのはお母様で、それに同意したのはベルティーユ様でした。四ヶ月前にロイク様と結婚してシュマン侯爵家の若夫人となった彼女は、今日は私の付き添いです。
今日の私は、水色のウエディングドレスを纏っています。結婚式では通常、新郎が家の色を、新婦が白を纏うのが慣例ですが、我が家の場合は私が迎える側なので水色のドレスになりました。髪も瞳も水色なので、水色一色なのはちょっとやり過ぎなような気もしますが…筆頭侯爵家の我が家が慣例を外すと他の家に影響が出て混乱を招くので仕方ありません。
「レティシア様、リシャール殿がお見えよ」
ベルティーユ様の声に、私ははっと顔を上げました。リシャール様の正装がどうなのか、さっきからそちらにばかり気になっていたからです。きっととてもお似合いでしょうね。
「レティ、お迎えに上がりました」
そう言って入室されたリシャール様は…真っ白の生地に所々水色の刺繍が施されている正装ですが…背も高く引き締まったお身体をしているのもあって、と…ってもお似合いです。正に眼福ですわ…うっとりと見入られてしまった私ですが、リシャール様がその場で固まってしまったのに気が付いて、不安になってきました。
(な、何か変だったかしら…?)
実はこのドレス、今日までリシャール様には内緒にしていたものだったのです。露出は控えめ、季節柄パフスリーブにしてスカートは定番のふんわりしたプリンセスラインです。私は大人っぽいマーメイドラインを…と思ったのですが、そこは皆様に全力で止められてしまいました。薄い水色の光沢のある生地の上に、長さの違う白の刺繍を施したチュール生地を幾重にも重ねたもので、初夏の陽気にあった軽くて涼しげな仕上がりです。
そして、身に付けているアクセサリーは全て、リシャール様のデザインです。ドレスに合わせて青系の宝石がふんだんに使われていますわ。
「…リ、リシャール様?」
あまりにも反応がないので、声を掛けていいのか迷ってしまいましたわ。でも、皆様が私達を見ているので、このまま…というのも気まずいです。
「…ああ、レティ、すみません。あまりにも…愛らしくて…」
そう言ってリシャール様はまたじっと私を見つめられましたが…は、恥ずかしいですわ、そんなに見られると…でも、変だと思われていなかった事にホッとしました。
「もう、いちゃつくのは式の後にして下さる?」
「べ、ベルティーユ様…!いちゃつくなんて…」
何も抱き合っていたわけでもありませんのに。そう思いましたが、周りの皆様の視線が居たたまれませんわ。なんでしょうか、この微妙に困ったような笑みを皆さん浮かべているのは…
私が恥ずかしさに悶絶していると、係の方が呼びに来られました。いよいよ式が始まります。
「さぁ、レティ、お手を」
「ええ、リシャール様」
差し出された手に私は自分の手を重ね、一歩を踏み出しました。リシャール様に初めてお会いしたあの日から三年半余り、まだエルネスト様の婚約者だったあの時から、叶わぬ夢だと思いながらもずっと夢見てきた瞬間です。
「リシャール様、私の真実の愛をこれから一生かけて証明し続けますわ」
私がそう囁くと、リシャール様が一瞬驚いた表情を浮かべましたが、直ぐに甘く蕩ける様な笑みを浮かべられました。
「それは私の方こそですよ、レティ。これから一生を掛けて、貴女に私の愛を捧げ続けましょう。覚悟して下さいね」
それは何て甘美な覚悟でしょうか。私達の真実の愛はまだまだ始まったばかりなのです。
【完】
- - - - -
ここまで読んで下さってありがとうございました。
本編はここで完結とさせて頂きます。
尚、この後番外編に続きますので、もう少しお付き合いください。
婚姻を結んでから一年半余り、私達がようやく本当の夫婦になる日が訪れました。学園を卒業したらすぐに…と思っていましたが、学園卒業後に結婚する方はかなり多く、式場などの手配の関係で直ぐに…とはいかなかったのですよね。結局卒業してから半年ほどかかってしまい、季節は春を過ぎ、届く風はすっかり夏の装いです。
「まぁ、レティ!綺麗だわ」
「本当に。よくお似合いよ」
涙目でそう仰るのはお母様で、それに同意したのはベルティーユ様でした。四ヶ月前にロイク様と結婚してシュマン侯爵家の若夫人となった彼女は、今日は私の付き添いです。
今日の私は、水色のウエディングドレスを纏っています。結婚式では通常、新郎が家の色を、新婦が白を纏うのが慣例ですが、我が家の場合は私が迎える側なので水色のドレスになりました。髪も瞳も水色なので、水色一色なのはちょっとやり過ぎなような気もしますが…筆頭侯爵家の我が家が慣例を外すと他の家に影響が出て混乱を招くので仕方ありません。
「レティシア様、リシャール殿がお見えよ」
ベルティーユ様の声に、私ははっと顔を上げました。リシャール様の正装がどうなのか、さっきからそちらにばかり気になっていたからです。きっととてもお似合いでしょうね。
「レティ、お迎えに上がりました」
そう言って入室されたリシャール様は…真っ白の生地に所々水色の刺繍が施されている正装ですが…背も高く引き締まったお身体をしているのもあって、と…ってもお似合いです。正に眼福ですわ…うっとりと見入られてしまった私ですが、リシャール様がその場で固まってしまったのに気が付いて、不安になってきました。
(な、何か変だったかしら…?)
実はこのドレス、今日までリシャール様には内緒にしていたものだったのです。露出は控えめ、季節柄パフスリーブにしてスカートは定番のふんわりしたプリンセスラインです。私は大人っぽいマーメイドラインを…と思ったのですが、そこは皆様に全力で止められてしまいました。薄い水色の光沢のある生地の上に、長さの違う白の刺繍を施したチュール生地を幾重にも重ねたもので、初夏の陽気にあった軽くて涼しげな仕上がりです。
そして、身に付けているアクセサリーは全て、リシャール様のデザインです。ドレスに合わせて青系の宝石がふんだんに使われていますわ。
「…リ、リシャール様?」
あまりにも反応がないので、声を掛けていいのか迷ってしまいましたわ。でも、皆様が私達を見ているので、このまま…というのも気まずいです。
「…ああ、レティ、すみません。あまりにも…愛らしくて…」
そう言ってリシャール様はまたじっと私を見つめられましたが…は、恥ずかしいですわ、そんなに見られると…でも、変だと思われていなかった事にホッとしました。
「もう、いちゃつくのは式の後にして下さる?」
「べ、ベルティーユ様…!いちゃつくなんて…」
何も抱き合っていたわけでもありませんのに。そう思いましたが、周りの皆様の視線が居たたまれませんわ。なんでしょうか、この微妙に困ったような笑みを皆さん浮かべているのは…
私が恥ずかしさに悶絶していると、係の方が呼びに来られました。いよいよ式が始まります。
「さぁ、レティ、お手を」
「ええ、リシャール様」
差し出された手に私は自分の手を重ね、一歩を踏み出しました。リシャール様に初めてお会いしたあの日から三年半余り、まだエルネスト様の婚約者だったあの時から、叶わぬ夢だと思いながらもずっと夢見てきた瞬間です。
「リシャール様、私の真実の愛をこれから一生かけて証明し続けますわ」
私がそう囁くと、リシャール様が一瞬驚いた表情を浮かべましたが、直ぐに甘く蕩ける様な笑みを浮かべられました。
「それは私の方こそですよ、レティ。これから一生を掛けて、貴女に私の愛を捧げ続けましょう。覚悟して下さいね」
それは何て甘美な覚悟でしょうか。私達の真実の愛はまだまだ始まったばかりなのです。
【完】
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ここまで読んで下さってありがとうございました。
本編はここで完結とさせて頂きます。
尚、この後番外編に続きますので、もう少しお付き合いください。
応援ありがとうございます!
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