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第二章

難航《ルカ side》③

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「てか、公爵様の要求を叶えることは出来ないのか?」

 『娘の仇を連れてくるか、娘を生き返らせるか』という滅茶苦茶な言い分を話題に出し、俺は身を起こす。
いくら魔法のある世界と言えど、不可能なことがあるのは分かっている。
でも、『もしかしたら……』という可能性に縋りたかった。

「私達もその方向で、考えてみたことは何度かあるよ。でも、ベアトリス嬢の殺害は他殺ということしか分かってなくてね……魔法か何かで痕跡を完璧に消されていたんだ。しかも、ご遺体は今、公爵の方にあるし……」

 『調べようがない』と主張し、グランツは額に手を当てた。

「あと、ベアトリス嬢を生き返らせるのは普通に無理。一応、死者蘇生に関する文献は粗方読み漁ったけど、どれも死霊術みたいなやり方で……公爵の望むような蘇りじゃない」

 『逆に神経を逆撫でするだけ』と述べるグランツに、俺は小さく肩を落とす。
何となくそんな気はしていたが、こうもハッキリ断言されると落胆してしまって。
『まあ、出来るなら最初からやっているよな』と納得する中、タビアが不意に顔を上げた。

「確かに死者蘇生は無理だが、ルカの協力を得られれば────公爵の娘は間接的に生き返るかもしれない。いや、死を回避出来ると言った方が正しいか……」

「はっ?どういうことだよ?」

 訳が分からず聞き返すと、タビアは神妙な面持ちでこちらを見据えた。

「公爵の娘が死ぬという過去を覆すんだ────時間を巻き戻して」

「「!?」」

 逆行という新たな選択肢を前に、俺とグランツは大きく目を見開いた。
いつも、『これから・・・・どうするのか』ばかり考えていたから。
一からやり直すなんて、思いつきもしなかった。

「そ、そんなこと可能なのか……?」

「ああ────この世界の理に縛られないルカなら、出来る筈だ」

 『私達はこの世界の住民だから難しいが』と補足しながら、タビアは両腕を組む。
何かを思い悩むように。

「ただ、時間を巻き戻せば当然────ルカは元の世界へ帰ることになる」

「マジかよ……」

 あからさまに嫌な顔をする俺は、後ろへ仰け反った。
すると、タビアが風魔法で紙とペンを引き寄せた。

「でも、方法がない訳じゃない」

「えっ!?マジで!?」

 『それを早く言えよ!』と叫び、俺は身を乗り出した。
グランツも興味津々といった様子でタビアを見つめ、少しばかり前のめりになる。
────と、ここでタビアが魔法陣を描き始めた。

「ただ、様々な制約を受けることになる。本来干渉出来ない場所へ来たというだけでも異例なのに、お前の存在しない時間軸へ行くのだからな」
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