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第二章

同席①

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◇◆◇◆

「────という訳で、公爵に話を聞きたいんだ」

 久々に我が家を訪れたグランツ殿下は、挨拶もそこそこに皇后陛下からのヒントについて説明した。
『何か分かるかもしれない』と力説しつつ、少しばかり身を乗り出す。
視線をこちらに固定して。

「出来れば、ベアトリス嬢にも同席してほしい。私一人だったら、公爵は口を割らないかもしれないからね」

「……いや、多分大丈夫だろ。デビュタントの一件で公爵は完全に第二皇子を敵認定しているし、快く話してくれるんじゃないか?」

 『お前一人でも行ける』と述べるルカに、グランツ殿下は悩ましげな表情を浮かべる。

「う~ん……それはそうなんだけど、やっぱり保険は掛けておくべきだろう?」

 顎に手を当てつつ、グランツ殿下は普段と変わらない声量で受け答えした。
今日はバハルとベラーノが、席を外しているからだろう。
『確か、二人とも他の管理者の様子を見に行ったのよね』と思い返す中、ルカは腰に手を当てる。

「なら、まずはお前一人で行って無理そうだったらベアトリスを連れていけばいい」

「それだと、公爵を説得するためにベアトリス嬢を利用したように見られないかい?私、まだ長生きしたいんだけど」

 『公爵の怒りを買いたくない』と身震いするグランツ殿下に、ルカは大きく息を吐く。

「いや、どっちにしろ利用しようとしている点は事実なんだからしょうがないだろ」

「ルカ、ちょっと過保護じゃない?公爵みたいになってきているよ」

 『まあ、ベアトリス嬢を守りたい気持ちは分かるけど』と零しつつ、グランツ殿下はこちらへ視線を向ける。

「ベアトリス嬢自身はどう思っているか、聞いてもいいかい?」

 『本人の意向を確認したい』と申し出るグランツ殿下に対し、私はこう答える。

「私が居ることで何か力になれるなら、同席したいです。何より、私も────ジェラルドのことを知りたい」

 逆行前も今もきちんと見えてなかったジェラルドの本心や素顔を思い、私は強く手を握り締めた。

 正直、まジェラルドのことはまだ怖い……間接的にであれ、関わりたくないと思ってしまう。
いっそグランツ殿下達に全てを丸投げしたい、とも……。
だけど、そうやって逃げてばかりだと何も解決しない。
実際、ジェラルドはまだ私のことを狙っているようだから……いい加減、覚悟を決めるべきでしょう。

 『それに知ることで恐怖や不安が和らぐかもしれないし』と考え、私は震える体に鞭を打った。
目の前にテーブルへ手をついて立ち上がり、真っ直ぐに前を見据える。

「本当にただ同じ空間に居ることくらいしか出来ませんが、それでも良ければ力に……」

「────何の話をしている?」

 そう言って、開けっぱなしの扉から姿を現したのは他の誰でもない父だった。
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