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第二章

同席②

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 護衛騎士のイージス卿に片手を挙げつつ、中へ入る父は防音結界に気づくなり眉を顰める。
そして、グランツ殿下にチラリと視線を向けると、一も二もなく結界を破壊した。
軽く人差し指でつついただけなのに。

「マジかよ、この人……物理特化の結界じゃないとはいえ、こんな簡単に……」

 『強すぎんだろ』と零し、ルカは僅かに頬を引き攣らせた。
────と、ここで父が私のことを抱き上げる。

「変なことでも吹き込まれたのか?」

「えっ?いや、そんなことは……」

「では、どんな話をしていたんだ?防音結界まで張って」

「そ、それは……」

 今ここで言っていいのか分からず、私はグランツ殿下の顔色を窺った。
すると、彼は『任せて』とでも言うようにウィンクする。

「もちろん、公爵の話さ」

「……具体的には?」

「一言で言うと、大厄災の活躍ぶりかな?ほら、ベアトリス嬢は当時とても幼かっただろう?だから、私の知っている範囲で君の武勇伝を話してあげたんだよ」

「そうですか」

 少しばかり態度を軟化させ、父は私を抱っこしたまま椅子に腰掛ける。
と同時に、優しく頭を撫でてくれた。

「それくらい聞いてくれれば、いくらでも話したのに」

「じゃあ、今からでも話してあげてよ。所詮、私の知っている話は伝聞に過ぎないからさ。当事者の体験談に比べると、やはり劣る」

 『あと、単純に私も聞いてみたい』と乞い、グランツ殿下はニコニコと笑った。
ここから自然に、ジェラルドの話へ持っていくつもりなのだろう。

 お父様の登場は完全に予想外だった筈なのに、それすらも片手に取るなんて凄いわね。
きっと、グランツ殿下みたいな人を『ピンチをチャンスに変える天才』と呼ぶんだわ。

 ────と、感心したのも束の間……

「何か知りたいことがあるならそう言ってください、殿下」

 父はあっさりグランツ殿下の思惑を見破った。
話の流れそのものは凄く自然だった筈なのに。
『えっ?何で?』と動揺する私の傍で、父はスッと目を細める。

「このように探られるのは、大変不愉快です」

「ははは……それはすまなかったね。直球で聞いても、答えてくれないと思っていたんだよ」

 口元に手を当て困ったように笑うグランツ殿下は、『公爵相手に駆け引きなんてするものじゃないね』と呟いた。
かと思えば、コホンッと一回咳払いする。

「じゃあ、改めて質問させてもらうよ」

 そう前置きしてから、グランツ殿下は真っ直ぐ前を見据えた。

「ジェラルドについて知っていることがあれば、教えてほしい。特にあの大厄災のときにジェラルド関連で、何か変なことはなかったかい?」
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