34 / 124
第二章.家族になろうよ
32.黒髪の村
しおりを挟む
傷薬でケガは全快しているので、体調に問題はない。次の日は、ジョエルのお母さんと、街に買い物に出かけた。ジョエルも護衛兼荷物持ちでついてきたが、店には入ってこない。
「素敵だわ。娘に洋服を選ぶのが、夢だったのよ!」
お母様は、朝からずっとスーパーハイテンションだ。下着だけ買えればそれで良かったのに、洋服、小物、パジャマときて、今はドレスを試着させられている。
私の職業は、確か魔法使いだったハズだ。ドレスを着るような生活はしていないのだが、私に拒否権はない。ずっと断り続けているのだが、試着は無料よ、と着せられて、いつの間にか購入されてるの繰り返しだ。財布は7つあるから、大丈夫の一点張りで、まったく話を聞いてもらえない。7つ持ってきたから何だというんだ。無駄遣いには、違いないよね。
緑以外の服も欲しいと言ったら、ゴールドの服も許してもらえたんだけど、なんでゴールドなんだ。差し色くらいならともかく、全身ゴールドが許される冒険者はジョエルくらいじゃないのか。意味がわからない。
やっと買い物が終わったと思ったら、緑のドレスでお茶会だ。服だけ見繕われても、私は作法がなっていない。礼儀作法がなっていないことを突きつけられるのが、ツライ。お茶会の前に、お茶会の講習を受けさせて欲しい。
ジョエルとキーリーも、正装をさせられて、強制参加で白目をむいている。仲間だ。
「あの顔に、巨乳属性が付くなんて、悪夢だ」
「こんなことになるなら、洗濯板のまま放置しておけば良かった」
「そうだ! 折角、正装したし、2人にプレゼントがあります!!」
忘れられてるかもしれないが、私の中で、初任給で親孝行プロジェクトは、まだ続いていた。不思議魔法の制御訓練を兼ねて、みんなお揃いのアクセサリーを作ってみたのだ。
「ジョエルがイヤーカフで、キーリーがペンダント。私のは指輪。みんなでお揃いだよ」
ドラゴンのところでくすねてきた黒と緑と茶色の石をカットして、同じく槍を削って作った土台にはめこんだ。溶かして固めたのではなく、風魔法で削って作ったため、うっかり失敗すると1から作り直しになる。作り終わるまでの緊張感が、半端なかった。デザインは、日本で見た物をパクったので変じゃないハズだが、ちょっと荒い作りだ。首からダイレクトに足が生えてる子どもの絵を喜んで受け取る親のような温かな気持ちで受け取ってくれたら、ありがたい。みんな違うアイテムにしたのは、お揃い気持ち悪い、と言われないための対策だ。
ちなみに、タケルの分は、もう渡してある。虎にも子猫にも人間にもなるタケルは、どうしたらいいものか困ってしまったのだけど、細い金属板をギザギザに組み合わせ、虎サイズのネックレスを作り、縮めると太短い首輪に変形させることで解決した。考えるところまでは良かったが、チェーンソーで木の鎖を作る様な技法で作るのだ。あれより細いし、細かいし、やってみたら、大変なんて言葉じゃ足りない難易度だった。でも、ちゃんと面倒をみる約束もしたし、タケルは私の大切な猫ちゃんだ。あとちょっとで出来上がるところで失敗作になってしまったり、何度も心が折れかけたが、私は海より深くタケルを愛してる! とセルフ洗脳をして、なんとか作りあげた。私の愛の勝利だ。もう2度と作りたくない超力作だ!
「「指輪!」」
「え? 指輪が良かった?」
「「指輪!!」」
何故、指輪に食いついたし。
「でも、サイズがわからなかったから」
すごい勢いで、手が2つ突き出された。怖い。
「じゃあ、次があったら指輪を作るよ。すぐは無理だけど、気長に待ってて」
イヤーカフとペンダントも受け取ってもらえたから、まぁいいか。
釣り書を送ってくるのを辞めてくれる約束ができたそうで、帰ることになった。キーリーとの仲を認めてもらえたらしい。良かったね。
「次は、シャルルちゃんと2人で帰って来れるといいわね」
「やっぱりバレたか」
「母親ですもの」
「頑張るよ」
ジョエルは、お母様と別れの挨拶をしている。お兄さんズとは素っ気ないのだが、お母様は好きなのだろうか。やっぱりお母さんは、いいよね! 私は、お兄さんズに囲まれて、うっとうしく思っているよ。
「シャルルに期待しなくても、そろそろ兄貴たちが1人くらい連れてくるだろう」
「そうね。ちょっと前までは、私もそう思っていたけれど、もう無理じゃないかしら?」
「兄貴、恋人いたよね?」
「私にとっては、5人全員、平等に可愛い息子たちなのよ? だからね、誰がシャルルちゃんを連れ帰って来ても、構わないと思ってるわ」
「絶対、止めて。無職男は、いらないから」
「そうね。しばらくは、止めておくわ。だから、頑張ってね。キーリー君に負けたら、許さないわよ」
「誠心誠意、努力致します」
村に帰ってきたら、大変なことが起きていた。村人の髪色が、みんな黒に変わっている。何が起きた?
「天使様、おかえりなさい」
宿で出迎えてくれたローちゃんさんも、黒髪だ。
「なんで黒髪になっているのよ! 誘拐されるよ!!」
「大丈夫ですよ。ただの染料ですから」
確かに、私は毛染め剤の開発を依頼していた。だが、私が欲しかったのは、自分が黒じゃなくなる染料だ。皆を黒くしたかった訳ではない。
「違うんだってば! 私の髪色を変えたかったんだよ」
「存じておりますが、黒い物を黒以外にするより、他の色を黒くする方が、簡単だったのです」
言われてみれば、それはそうかもしれないけど、違う。私は、真剣に悩んでいるのに、一大ムーブメントとか言って、皆で黒髪になってふざけているのを見ると、自分こそおかしいような気がしてくる。
ちょっと目を離している間に、ジョエルとキーリーも黒髪に変わっていた。黒髪でも王子様スマイルとか、マジふざけんな! 美形が黒髪になるとか、最悪だろ。
「まあ、いいじゃん。これを流行らせたら、お前の頭も染めてんだろな~、ってなるだろ」
そうだね。そうなるといいね。でも、黒髪信仰をやめてくれたらいいだけだと思うよ。
「素敵だわ。娘に洋服を選ぶのが、夢だったのよ!」
お母様は、朝からずっとスーパーハイテンションだ。下着だけ買えればそれで良かったのに、洋服、小物、パジャマときて、今はドレスを試着させられている。
私の職業は、確か魔法使いだったハズだ。ドレスを着るような生活はしていないのだが、私に拒否権はない。ずっと断り続けているのだが、試着は無料よ、と着せられて、いつの間にか購入されてるの繰り返しだ。財布は7つあるから、大丈夫の一点張りで、まったく話を聞いてもらえない。7つ持ってきたから何だというんだ。無駄遣いには、違いないよね。
緑以外の服も欲しいと言ったら、ゴールドの服も許してもらえたんだけど、なんでゴールドなんだ。差し色くらいならともかく、全身ゴールドが許される冒険者はジョエルくらいじゃないのか。意味がわからない。
やっと買い物が終わったと思ったら、緑のドレスでお茶会だ。服だけ見繕われても、私は作法がなっていない。礼儀作法がなっていないことを突きつけられるのが、ツライ。お茶会の前に、お茶会の講習を受けさせて欲しい。
ジョエルとキーリーも、正装をさせられて、強制参加で白目をむいている。仲間だ。
「あの顔に、巨乳属性が付くなんて、悪夢だ」
「こんなことになるなら、洗濯板のまま放置しておけば良かった」
「そうだ! 折角、正装したし、2人にプレゼントがあります!!」
忘れられてるかもしれないが、私の中で、初任給で親孝行プロジェクトは、まだ続いていた。不思議魔法の制御訓練を兼ねて、みんなお揃いのアクセサリーを作ってみたのだ。
「ジョエルがイヤーカフで、キーリーがペンダント。私のは指輪。みんなでお揃いだよ」
ドラゴンのところでくすねてきた黒と緑と茶色の石をカットして、同じく槍を削って作った土台にはめこんだ。溶かして固めたのではなく、風魔法で削って作ったため、うっかり失敗すると1から作り直しになる。作り終わるまでの緊張感が、半端なかった。デザインは、日本で見た物をパクったので変じゃないハズだが、ちょっと荒い作りだ。首からダイレクトに足が生えてる子どもの絵を喜んで受け取る親のような温かな気持ちで受け取ってくれたら、ありがたい。みんな違うアイテムにしたのは、お揃い気持ち悪い、と言われないための対策だ。
ちなみに、タケルの分は、もう渡してある。虎にも子猫にも人間にもなるタケルは、どうしたらいいものか困ってしまったのだけど、細い金属板をギザギザに組み合わせ、虎サイズのネックレスを作り、縮めると太短い首輪に変形させることで解決した。考えるところまでは良かったが、チェーンソーで木の鎖を作る様な技法で作るのだ。あれより細いし、細かいし、やってみたら、大変なんて言葉じゃ足りない難易度だった。でも、ちゃんと面倒をみる約束もしたし、タケルは私の大切な猫ちゃんだ。あとちょっとで出来上がるところで失敗作になってしまったり、何度も心が折れかけたが、私は海より深くタケルを愛してる! とセルフ洗脳をして、なんとか作りあげた。私の愛の勝利だ。もう2度と作りたくない超力作だ!
「「指輪!」」
「え? 指輪が良かった?」
「「指輪!!」」
何故、指輪に食いついたし。
「でも、サイズがわからなかったから」
すごい勢いで、手が2つ突き出された。怖い。
「じゃあ、次があったら指輪を作るよ。すぐは無理だけど、気長に待ってて」
イヤーカフとペンダントも受け取ってもらえたから、まぁいいか。
釣り書を送ってくるのを辞めてくれる約束ができたそうで、帰ることになった。キーリーとの仲を認めてもらえたらしい。良かったね。
「次は、シャルルちゃんと2人で帰って来れるといいわね」
「やっぱりバレたか」
「母親ですもの」
「頑張るよ」
ジョエルは、お母様と別れの挨拶をしている。お兄さんズとは素っ気ないのだが、お母様は好きなのだろうか。やっぱりお母さんは、いいよね! 私は、お兄さんズに囲まれて、うっとうしく思っているよ。
「シャルルに期待しなくても、そろそろ兄貴たちが1人くらい連れてくるだろう」
「そうね。ちょっと前までは、私もそう思っていたけれど、もう無理じゃないかしら?」
「兄貴、恋人いたよね?」
「私にとっては、5人全員、平等に可愛い息子たちなのよ? だからね、誰がシャルルちゃんを連れ帰って来ても、構わないと思ってるわ」
「絶対、止めて。無職男は、いらないから」
「そうね。しばらくは、止めておくわ。だから、頑張ってね。キーリー君に負けたら、許さないわよ」
「誠心誠意、努力致します」
村に帰ってきたら、大変なことが起きていた。村人の髪色が、みんな黒に変わっている。何が起きた?
「天使様、おかえりなさい」
宿で出迎えてくれたローちゃんさんも、黒髪だ。
「なんで黒髪になっているのよ! 誘拐されるよ!!」
「大丈夫ですよ。ただの染料ですから」
確かに、私は毛染め剤の開発を依頼していた。だが、私が欲しかったのは、自分が黒じゃなくなる染料だ。皆を黒くしたかった訳ではない。
「違うんだってば! 私の髪色を変えたかったんだよ」
「存じておりますが、黒い物を黒以外にするより、他の色を黒くする方が、簡単だったのです」
言われてみれば、それはそうかもしれないけど、違う。私は、真剣に悩んでいるのに、一大ムーブメントとか言って、皆で黒髪になってふざけているのを見ると、自分こそおかしいような気がしてくる。
ちょっと目を離している間に、ジョエルとキーリーも黒髪に変わっていた。黒髪でも王子様スマイルとか、マジふざけんな! 美形が黒髪になるとか、最悪だろ。
「まあ、いいじゃん。これを流行らせたら、お前の頭も染めてんだろな~、ってなるだろ」
そうだね。そうなるといいね。でも、黒髪信仰をやめてくれたらいいだけだと思うよ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
93
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる