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第3章 沖縄防衛戦

第21話 沖縄強襲揚陸作戦(アイスバーグ作戦)

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 沖縄攻略の為に九州と呉を主目標に行われた作戦は、我が軍の壊滅的な被害を受けただけで終わった。出撃した部隊の内、帰還出来たのは3分の1以下、どの機体も帰還出来たものの修復不可能な機体や着艦の際の衝撃に耐えきれずに損傷するなど散々だった。

「帰って来たのは、これだけか・・・」
「我々は先に帰還したとはいえ、帰ってきたのがこれだけですか?」

 三四三航空隊との戦闘で被弾し、一足先に帰還した小隊は、帰還してくる仲間達の機体を空母フランクリンの甲板から見ていた。
 まばらに着艦していく機体はどれも主翼に穴が空いたり、胴体にいくつもの銃痕が付いていた。

「おいノース!何があった!攻撃隊はどうした?!」

 ヘルダイバーから降りてきた同期のノーストレス・ヘッダー中尉に話しかけた。

「・・・・奴らは、怪物だ!蒼い機体と緑の機体が通り過ぎたら目の前を飛んでいた機体がバラバラになっていた。俺は、怖くなって逃げ帰ってきたんだ!仲間を見捨てて!自分だけ助かろうとして!!」

 そう話す彼は、顔を真っ青にして叫んだ。そのため、しばらく、搭乗員達は無言になっていた。

 
「賑やかだった甲板が静かだな」
「約100機の航空機が出撃して、帰ってこれたのは半数以下ですから」
「他の空母も似たような状態か?」
「はい」

 遠目に見える姉妹艦にもまばらに着艦していく、航空機を艦橋から見ながらフランクリン艦長のマグッダシュ大佐は、本来の作戦の成功を願っていた。



 愛媛県の松山飛行場では、三四三航空隊の隊員達が滑走路の側で、帰還していない仲間と三ニ五航空隊の帰還を待っていた。

「帰ってきてないのは?」
「江崎と曹達、且元と杉谷に林さんです」
「無事に帰ってきてくれるといいんだが」

 そうしていると呉の方から多数の編隊が見えた。

「白蛇部隊が帰ってきてた!」

 蒼き機体を先頭に紫電改よりも2回りは大型の機体が次々に着陸していく。
 滑走路の奥で方向を変えて、滑走路脇の待機位置に整列して行く。
 その中の蒼い機体から白蛇部隊隊長である大尉が歩いてきた。

「護衛機の相手ご苦労様でした。こちらの損害は無し、敵機は8割は撃墜しました」
「お疲れ様。こっちは約40機撃墜、被害は5機だな」

 杉浦一飛曹は、顔を落としながら話した。

「まだ、生きているかも知れません、最後まで希望を持ちましょう」
「俺も同じだ。信じて待とう」

 菅野大尉と大尉が話していると1機の零戦が着陸した。降りてきたのは、未帰還だった林一飛曹だった。

「遅れながら林一飛曹!ただいま帰還いたしました」

 側まで来ると姿勢を正して敬礼した。
 何故零戦で帰還したのかと聞くとエンジンと燃料タンクに被弾して、そこから近くの飛行場に着陸して、紫電改の代わりに零戦で帰えってきた、と言う事らしい。
 日が暮れると江崎飛行兵長と曹達二飛曹と且元飛曹長がトラックに乗って戻ってきた。

「撃墜されましたがなんとか脱出して海面に漂ってました。その後、曹達と且元と一緒に近くの米兵を出来るだけ集めて救助を待ちました」
「漁船や哨戒艇、水上機がすぐに救助に来てくれたんですが、漁船の連中が米兵を殺そうとしたんで、それを止める為に乱闘になってしまって、遅れました」

 江崎飛行兵長と曹達二飛曹の頭や顔をには包帯が巻かれており、顔には殴られた跡がくっきり残っていた。
 はじめは、撃墜された時の負傷かと思ったがどうやら違ったらしい。民間人とのケンカで負った負傷だった。ちなみに且元に怪我が無いのは、米兵に向かってくる民間人を投げ飛ばしていたかららしい。

「何はともあれ、全員無事で良かった」

 菅野大尉の言葉で締めくくられ、その日は宴会となった。



 沖縄では、アメリカ軍の上陸に備え陣地の構築が急がれていた。特に優先されていたのが榴弾砲や対戦車砲の陣地とそれらを地下で結ぶ地下道。民間人の避難と各種補給物資の集積だった。
 陣地の構築に関しては、神国の重機が惜しみなく投入され今までに無いほど素早く完成されていった。
 民間人の避難も女性や子供、老人に病人は輸送機で本土に渡り、残りも輸送船で避難していた。護衛機や護衛艦が目を光らせており、史実の対馬丸の様な事は起こさせなかった。

 夜明け前の3月24日午前4時、夜間の暗闇に紛れ、第52任務部隊が沖縄中部西海岸に接近し、航空機による空爆と艦船による艦砲射撃とロケット弾に斉射が開始された。
 空母12隻、戦艦7隻、重巡洋艦8隻の攻撃は1時間以上続き、それと呼応して、攻撃が止む数分前に第81歩兵師団を主力とする上陸部隊が読谷・北谷海岸に上陸した。
 
 海岸線の隠蔽監視所からその攻撃を見た歩哨は、司令部にすぐさま連絡を入れた。

「司令部!司令部!!こちら第六監視所、読谷・北谷海岸にアメリカ軍が攻撃開始!アメリカ軍攻撃開始!!」

 帝国陸軍と神国陸軍の防衛部隊は、警報が鳴ると急ぎ、重機や道具を所定の場所に置き、地下坑道に入り、各自の配置予定の場所に付いた。

 航空機と艦砲射撃が一瞬収まると上陸支援型のLCSが前進して甲板所に設置されたロケット弾を海岸に発射し、辺り一帯を更地に変えた。ロケット弾を全弾撃ち尽くすと後退し、M 4シャーマン、歩兵を乗せた揚陸挺が、歩兵が乗った水陸両用車が次々と海岸に揚陸して行った。未だに海岸線以外の場所は、航空機の攻撃と艦船からの艦砲射撃が行われており、上陸部隊は上陸地点の確保と各部隊の集結を行っていた。

「急げ!急げ!艦砲射撃が続いている間に部隊の編成だ!」
「第1中隊は、点呼!装備の点検補給を急げ!」
「第8戦車部隊のこっちだ!」
 

 対する帝国陸軍と神国陸軍は、艦砲射撃と空爆が止むまで動けずにいた。
 首里城近く深くにコンクリートで固められた司令部では、各部隊から報告が上がっていた。

「海岸線の部隊は、退避が間に合わず数百名が死傷したとの報告が来ています」
「空港から駐機されていたの零戦と陸攻が半数以上破壊されたと報告が」
「民間人の避難は?」
「8割が完了しています。残りも今残っている船に乗り込み次第、本土に向かいます」

 帝国陸軍、神国陸軍双方の指揮官は、受けた被害と民間人の避難の状況を確認していた。

「何故発見が遅れたのだ?」
「航空機の攻撃の隙を突かれたのと航海灯を消して接近していたため、見逃したそうです」
「作戦は、援軍を待ちつつ敵に被害を与える撤退戦術で問題ありませんか」
「民間人を守る為にもそれしか無い」

 帝国陸軍、神国陸軍は敵の前進をひたすら地下に籠もって待っていた。
 敵からの砲撃が止み、辺りが静まり返る。それを合図に各砲座の対戦車砲、榴弾砲、迫撃砲が各銃座の機関銃が小銃を手に取る歩兵が配置に付いた。
 前線の隔測所から敵部隊の座標が送られ、戦いの始まりを告げる砲声が響いた。

 

    
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みんなの感想(7件)

しゃあっ
2023.06.12 しゃあっ

なるほど。
神国側の歴史はそういう歴史か。

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しゃあっ
2023.06.12 しゃあっ

神国海軍の使者に驚きました!
まさか、、、この人達とは。

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ミル
2022.06.09 ミル

いつも楽しく拝見しています。
第2章、第3章などに登場した兵器の解説も楽しみにしています。

naosi
2022.06.10 naosi

感想ありがとうございます。3章が終わったらあげようと思っていますので、楽しみにしてください

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