糟糠の妻

栗菓子

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第1章 ありふれた夫婦

第2話 夫の不満

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両親が何故あの凡庸な女を俺の妻にしたのかは、妻と過ごすにつれ段々わかってきた。

両親は俺の本性を見透かして、妻を与えて普通の夫婦の道を歩ませようとしている。妻は両親の息がかかった監視者だ。忌々しい。忌々しい。

時折、荒ぶる感情が制御できない。妻は丁度良いはけ口だった。

妻を壊れる寸前まで性交で責め立てた。傷がつかないように子宮が潰れる寸前まで責め立てた。その点、とても狡猾で汚い面が彼にはあった。夫は妻が監視者であり、生け贄であることはもうわかっていた。

何もない弱者であるから、親を助けた恩を着せ、大金を払い、世間体を守るための肉の壁にさせられたのだ。

くつくつと夫は口角を歪んでつり上げた。

凡庸な女は、己の不幸を恥と感じ、誰にも言えないだろう。妻も妻なりのささやかな自尊心があるらしい。
馬鹿な女。そんなもの。命には代えられないのに。馬鹿な女。お前の実の親はお前を売り渡して生き延びた愚かな親に過ぎない。そんな親に義理を立て、俺の親に尽くすなど愚かにもほどがある。

肉体だけは良かった。まだ未熟な処女であり、それを無理矢理征服するのは興奮した。
だが夫は面食いだった。凡庸な顔が気に入らなかった。痛みに泣く顔も気に入らなかった。
彼は性交をする時だけ、顔に白い布をかぶせた。悲鳴をあげようなものなら、抑えつけて後ろから獣のように挿入した。膣が切れたらしい。血が流れた。でもこれで俺の性器が滑らかに挿入できる。ぐしゅぐしゅと俺と妻の性器が重なる音がする。肉と肉が打ち合う音。俺は夢中になって妻を限界まで責め立てた。気が付いたら妻は気絶していた。
死んだように息をたてない。俺は慌てて、布をはずし妻の顔を寄せる。息がかすかにする。良かった。心配させおって。俺は身勝手にも腹を立て妻を叩いた。

妻は目を覚ました。脅えながらも、「申し訳ありません」と気丈に謝った。
妻は決して俺に弱みをみせまいと気を使っていた。

虚ろな死んだ魚の目が煩わしい。凡庸な顔がただでさえ、醜くなっている。

妻が美しく花のような笑顔を見せるのは、幼馴染の男が時折、商談の折に両親の手紙を渡しに来る時だ。
その瞬間、妻はあどけなく気を許した花のような笑顔を見せる。その時だけは、凡庸な顔も美しく見える。

忌々しい。忌々しい。 気に入らない。 気に入らない。

何故その美しい笑顔を俺には見せないのか? いや答えは解っている。

俺は妻にとって脅かす敵に過ぎないのだ。


俺はどうしようもない不満を抱えながら、美しい女達を求めて娼館へいった。

俺は両親に監視され成功することを求められている。それには暴行や一線をこえた行為をしてはならないらしい。

俺には普通の人のルールがわからなかった。
なるほど、俺は人でなしだ。妻も人でなしだ。 女奴隷だ。
何かに縛られて役目を果たしている女。 奇妙な運命で夫婦になった女。

俺は妻と一緒に両親の望む通り、成功者への道を歩むことにした。

妻への不満を抱えながら俺は、商会を開いた。


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