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第二章 冥王、愛しの王子を追いかけてくる
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「ゴテゴテした貴金属類は目立つからすべて外してきた。 余にもそれぐらいの配慮はできる」
「え!何も持ってないんスか!?」
「ああ、人目を忍ばねばならぬゆえ仕方あるまい」
胸を張る王に対し、ヴァニオンはがーんと空を仰ぐ。
「くそ、もうダメだ……」
彼のあまりの意気消沈ぶりに王は急に不安になったのか、
「ヴァニオン。軍資金なら事前にたんまり渡しておいたではないか。まさかそなた、賭博に全部つぎ込んで借金のカタに王子を……人身御供に置いてきたのではなかろうな!? 今頃……まさか、賭博場の主にあんなことやこんなことまで……!」
と胸倉を掴みあげられた。
「くう、一部痛いところをついているが全然外れてます! 実は……かくかくしかじかというわけで、殿下はあの船の中におられるんですよ。それで俺、どうしても夕方までにスリから金を取り返さなきゃならないんでして」
「なるほど。あのでかい船の中にいるのか」
王は通りの向こうに見えている大きな白帆の船を目にするや、早速そっちのほうへ歩き出そうとする。ヴァニオンは慌てて制止した。
「いやだから、おれの話聞いてました? 金を取り返さなきゃ船に戻れないんですよ。殿下がそりゃもう怒り狂ってて今、神剣抜いてる状態で手がつけられなくて」
「じゃあそなただけ別の手段で移動しろ。泳ぐとか」
「嫌ですよ! だいたい陛下だって、乗船券を買わなけりゃあれに乗れないんです」
「じゃあジョウセンケンとやらを買ってこい」
「だから買おうにも金がな……」
云い掛けてヴァニオンは、ズボンのポケットに入っている数枚の銀貨の存在を思い出す。
(どうする……ここで王にこれを差し出したらマジで俺もナシェルも船の上で腹ペコ一文無しだ。それに、これしきの金で買える乗船券が果たしてあるのか?
だが……このままこの動く地雷源みたいな陛下をここに残していくわけにはいかないぞ……。くそっ、金策に走り回ってるこのときにまさか一文無しの連れが増えちまうなんて! 冥界と違って魔物と遭遇戦になるわけでもなし、金もってない(加えて一般常識も不携帯の)陛下なんて、この状況じゃお荷物以外の何モノでもねえじゃんよ!
…いや待てよ、陛下を宛てがっておけばナシェルも多少しおらしくするかも……だけどメチャクチャ不機嫌だからかえってマズいことになるかな……? あー読めねぇ……。なるようにしかならねえか……)
……内心で苦虫をかみつぶしながら、仕方なく王を港へ連れて行き、乗船券売り場を覗く。
「一番安い乗船券ある?」
と訊ねたが、そもそも売っているのは一番格下の三等客室(相部屋)しかない。当たり前だ。上客はあらかじめもっと良い船室を予約するなどして確保しておくものだからだ。
「くっ……ぎりぎり買えちゃうのね…これが……」
懐にのこっていたなけなしの銀貨をすべてつぎ込んだ、三等客室の券を冥王に渡し、ヴァニオンは念を押した。
「いいですか、俺は時間ぎりぎりまでスリを探しますから、陛下は先にあれに乗っててください。俺が船に戻ったら殿下のおられる特等船室に案内しますから、それまでは船内をうろつきまわらずに、ここに書いてある三等船室に居てくださいよ。まあ、といってもそもそも、陛下のこの券では特等客室の階には行けないと思いますけど……」
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