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第二章 冥王、愛しの王子を追いかけてくる
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(まさか見つからなかったからといって、本気で戻ってこないつもりか? ヴァニオンのやつ……)
戻ってこなかったら誰が今まで飲み喰いした分を払うのだ。自分で金策に走らねばならんではないか。
そんなみっともない真似はうんざりだ。……しかも、ここは限られた船の上なのである。どうやって金を見繕えというのだ。
内心の不安を打ち消そうと乳兄弟をこき下ろしていると、不意にナシェルの目の前に、横からワイングラスが突き出された。
「?」
驚いて振り向くと、一人の若い男が両手にワイングラスを持ち、にこやかな笑みを浮かべて立っていた。
「ぼんやりしておいででしたね……美しい方、」
虚をつかれているナシェルに、船客と思しき男は片手のワイングラスを差し出してきた。
「あなたも一杯、どうですか?」
「………………」
なんだこいつは。人間のくせに私に馴れ馴れしく話しかけおって……。
思いきり不審げな目つきのナシェルに対し、男はグラスを持ったままの手で後ろにあったテーブルを示す。
「いえね、私もあちらのテーブルで夕陽を眺めていたのですが、一人酒はどうしても、感傷的になってしまっていけませんね。話し相手が欲しくなってしまって……。そうしたら貴方がそこへやってきて、手すりに凭れて私と同じように感傷的になっておられる……様子でしたので……つい、」
褐色の肌をした男はそういってナシェルに朗々とした笑みを向ける。
「一緒に、夕陽を眺めて乾杯していただけませんか?」
……ナンパだ。それもかなりクサい部類の……。
つまり冥界の王子たるこの私は、とうとう人間の男にまでナンパされているというわけだ……。
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