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第六章 乳兄弟、さらなる事態に頭を抱える、父子は…♡
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可愛い顔をしたスリ少年の名は、ラミといった。
彼は詐欺や盗みなどを働く港町のギャング団の一員で、先日ヴァニオンから盗んだ金はすぐに『元締め』に上納したという。あまりの大金だったので親分に至極褒められ、その晩は他のスリ少年ら共々、ごちそうにありつけたのだとか。
…ところが、ギャング団のナンバー2の男がその晩、アジトから、金目のものを一切合財、持ち逃げしてしまったそうなのだ。
「そのナンバー2、親分が溜め込んでたお宝を盗んで別の大陸で新しい人生を始めるとかで。
身分を偽ってこの船に乗るところを見た、と町の人から聞いて、悔しいからオイラも自分で盗んだ分ぐらいは取り戻そうと出航ギリギリで飛び乗ったはいいんだけど…」
「男が見当たらねえのか?」
「ううん、出航するなり船酔いで吐いちゃって…しばらく横になってた。人探しどころじゃなくて」
そう言ってラミは寝台の薄いマットに頽れるように腰かけた。顔色はたしかに良くない。
「大丈夫か? 水飲むか?」
「あ、ありがとう」
ヴァニオンが荷物の中から差し出したボトルで水分を摂ると、ラミは少し回復したようだ。
「で、(オレたちの金含む)盗賊団の収益を持ち逃げしたそのナンバー2てのは、本当にこの船に乗ってるのか?」
「探してみないと分からないよ」
「ちなみにどんな奴だ?」
「褐色の肌に目立つ金髪。20代後半ぐらいかな。背はお兄さんと同じぐらい高い。見た目ものすごくイケメンだから、そいつ普段は結婚詐欺とかそういうので儲けてるんだ。頭がいいから親分も何かと色々頼りにしてたのにさ」
「ふぅん、イケメンの結婚詐欺師ねえ……ん? 待てよ。褐色の肌に金髪……?」
聞いていたヴァニオンの眉がぐっと降りる。
……猛烈に嫌な予感がしてきた。
「そいつ、もしかしてアシール・アルファーヴとかいう名前じゃねえだろうな」
「アシール? そいつが使ってる偽名の一つだよ! 詐欺師だから他にもラティフとかジャハールとかいくつも偽名使っててさ。本当の名前は誰も知らないんだ。……って、お兄さん、大丈夫? どうしたのいきなり頭抱えて」
「い、いや……ちょっと急に頭痛が」
ヴァニオンは頭髪をかきむしる。よりによって詐欺師!?
じゃ、ナシェルがあのナンパ男に貢がせようと目論んでるカネの原資には、おれたちの旅の資金も含まれてるってことかよ…?
これはひょっとして……至極単純なようで超面倒くさい事態になってるのでは…?
とにかく、ことの仔細を早く主君親子に報告せねばならない。
特に危ないのはナシェルだ。とりあえず保護者が現れたので一両日ぐらいはおとなしくするだろうが、下手をすると父王の目を盗んで色じかけを実行しかねない……。お高くとまってるくせに貞操感覚がどこか緩いのだ。とくに『万が一、父子喧嘩が発生した場合』に反動でナンパ男に色じかけをかます…というパターンが一番ありえそうで、怖い。というか、あり得る。
ああ、一刻も早く「イケメンに貢がす」なんて回りくどいことをする必要はないと教えてやらなければ。……叩きのめしてそいつからカネを取り返せばいいだけの話だ。
「やべえ……ナシェルにとにかく知らせなきゃ……だけどこの階からVIP船室まで行くのは至難の業だぞ、どうすりゃいいの俺~~!?」
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