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第七章 ナシェル、墓穴を掘ろうとする
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二人の唾液が混じり合い、息つぎのたびに糸を引く。
アシールは口づけの合間にナシェルの首筋や耳元に吐息をふきかけ、扇情的な言葉を囁き込む。
「ふふ……可愛い方だ、気が強そうなのに快楽には従順なんですね。薬の効果もあるとはいえ、口づけだけでそんなに乱れて……さっきまでの貴方とは別人みたいだ……ほら、ここもこんなに高まってる」
上に乗ったアシールに下半身を固められ、勃ちあがったものを衣装ごしに撫でられた。
「は……、っあ……っは……」
ナシェルはもう視界がぐらぐらして抵抗できない。それどころか、棹を擦られると勝手に腰が動いてしまう。
叫んで助けを呼ぼうにも息も吸えないほどのキスに翻弄され、酸欠に近い状態となっていた。
「お辛いでしょう……いいですよ、全て脱いで私に身を任せても……二人だけで、初夜の儀式を済ませてしまいましょう。一度体を交わせば、あなたも私と結婚したくなるはずです……」
やだ、いや、と自分が言えたのかどうかすら分からない。
ナシェルは手でなおざりな抵抗を見せただけでほとんどされるがまま、さらに腰帯までも解かれてしまった。
アシールは舌なめずりしながら自分もローブ脱ぎ、腰帯を外してズボンを下げ、ふたたびナシェルに覆い被さる。
「さぁ、もう一度可愛い声を聞かせて……? 怖がらないで。もっと貴方の深いところが知りたい―――」
「んっ……ぁん……」
再び口づけされながら乳首や、ズボンに手を入れられ中心を撫で廻されたところ……
ドンドンドン!
「お客様! アルファーヴ様!」
突如、扉を叩く音とともに騒々しい声が廊下から聞こえてきた。船員と思われる。
アシールは一瞬反応しかけたがキスをやめることはなく、ナシェルのアソコをいじる手も止めない。判断力が低下しているナシェルは、アシールを押し返すこともない。ドアを叩く音にもほぼ反応しないで朦朧と口づけを貪り、体の先端をいじられる快感に身を委ね続けた。
「――んんっ……ふぁ……、」
――ドンドンドン!
「お客様、至急、お伝えしたいことがあり……」
「後にしてくれ、いま取り込み中なんだ!」
アシールはそう答えて船員を追い返そうとした。しかしあまりにしつこく船員が戸を叩くのでとうとうナシェルから身を離した。恍惚とした表情のナシェルが、突然快楽を断ち切られて切なげな吐息をつく。濡れた唇と上気した頬、乱れた衣装から覗く肌……全身が色香を放ち、アシールを誘う。
アシールは後ろ髪ひかれる思いで「少し待っていて……」とナシェルに告げ、船室の戸口に向かった。
「今、取り込み中だと云ってるだろう。何の用件だ?」
「商談のお相手から言付けを預かっております。急を要するとのことで、それからメモを残せない内容なので口頭で―――」
「くそっ、分かった、廊下で聞こう。いま開ける」
扉を細く開けた瞬間、外から船員がものすごい勢いで体当たりしてきてアシールの肩に扉をぶつけた。ひるんだ彼をドアごと蹴り飛ばすようにして、船員らしき服の男が部屋に傾れ込んできた。
「ナシェル!! 無事か!?」
ナシェルは長椅子に横たわったまま、ぼんやりと戸口のほうを仰いだ。
目深に被っていた船員帽を脱ぎ捨て、倒れ込むアシールに馬乗りになっているのはなんとヴァニオンだった。船員の制服はどこからか調達してきたらしい。周囲の目をごまかしてVIP階まで上がってきたようだ。
ナシェルがソファで半裸のまま身動きがとれないのを見て、ヴァニオンはすぐに何があったか気づいた様子だ。馬乗りでアシールの胸倉を持ち上げ締め上げる。
「てめぇ~~ナシェルに何しやがった!?」
「ひいぃっ……」
「答えろ、このエロ詐欺野郎!! テメーが宝石商だなんて嘘ついてるのはバレてんだぞ!! 持ってる宝石、全部盗品なんだろーが!!」
「なっ、なんのことです……!私にはさっぱり~~」
「……詐欺?……」
ナシェルはぽやんと宙を見上げる。
状況がよく呑み込めないが乳兄弟のおかげで間一髪、助かったのは確かなようだ。
ヴァニオンがアシールを本気でブン殴る音が聞こえる……いや一発殴りたいのはナシェルも山々だが、ヴァニオンの筋肉隆々の腕が繰り出す鉄拳はさすがにただの人間には重すぎるだろう、止めな、ければ。
「ヴァニオン……―――」
やめろそこまでだ、とはっきり発声したかったが弱弱しいかすれ声しか出ない。
幸いにも(?)アシールを数回殴打したヴァニオンは、相手が失神状態になったところで我に返り、ナシェルの方へ駆け寄ってきた。
「ナシェル! 大丈夫か!?」
「ああ……助かった……礼、を云う……」
抱き起こされたナシェルはまだ酒に混ぜられた薬の効果で興奮状態にある。大量の汗をかき、ろれつも少々怪しい。そのまま長椅子で乳兄弟の胸を借り、呼吸を鎮める。
「な、何された!? 俺、ちゃんと間に合ったか?」
「間に、合った……大丈夫だ、う、上に乗られて、口吻されただけ……」
良かった……! いや良くねえけど良かった……、と胸を撫で下し背中をかき抱くヴァニオンに、ナシェルも安堵して身を預けた。
「……ヴァニオン、すまぬ、」
「何が」
「……か……『甲板で寝ろ』などと云ったことだ……」
おまえの護衛があったからこそ、こうした危険を今まで回避できていたのだ、とナシェルは改めて思い知っていた。
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