文字の大きさ
大
中
小
29 / 52
第八章 乳兄弟、ラッキースケベで絶叫す
2
「ギャ――!! でで、出たぁあ――!!!」
戸口のほうを振り仰いだヴァニオンが、肝試しも顔負けの絶叫を放つ。いやオバケ屋敷でも……冥界でモンスター類と鉢合わせした時ですらこんなには驚かないだろう。切っ先を乳兄弟の尻穴に半ばねじ込みかけていたナシェルも、からくも身動きを止めた。
重低音の声の主は、腕組みし問いを重ねる。
「一体、これは、どういう風の吹き回しだ? そなたら……またしても余の目を盗んで……!」
「いやっこれは、あのちが、違います殺さないで!! 痛゛ッ」
ナシェルが脱力したせいで後頭部から床に転げ落ちたヴァニオンは、ズボンを引っ張り上げながらアシール・アルファーヴを指し示した。
「もっもっもとはといえばその男がナシェルを襲おうとして―――」
「ほう」
「俺が突入したんで殿下は無事なんですけど、媚薬のようなものを盛られてるみたいで変なんですっ! 今度は俺が押し倒されて……」
冥王はつかつかとアシールの船室内に入って来、終わりかけの食事やワインボトル、伸びているニセ宝石商などを一瞥してざっと状況を把握した。
パッと見で一番状況が悪いのはナシェルで、長椅子の上に顔を伏せ丸くなり、肩で息をしている。冥王が首根をつまみ背中を起こしてみると完全に目が座った状態で、まだ勃起状態のペ○スを掴んでいる。
王は動じることなく静かに命じた。
「……ヴァニオン、その男を縛り上げておけ。細かい話はとりあえずこれを処置してからだ」
「はっはひっ……」
処置……、尻の穴貸すの陛下が……?
いや違うよね……、と見守るヴァニオンの前で、王は声を掛けてナシェルを抱き起こし、半ば肩にかつぐようにして船室内のバスルームに入って行った。王が何やらやんわり嗜めるような声と、ナシェルがベソベソ泣き言を言っているのが聞こえたが、冥王が低い囁き声に変えると、すぐにナシェルも甘い喘ぎ声に変じた。
「あん……っああん………!!♡っちちうえ……あぁっもっと、ひぁう……」
マジですか丸聞こえですけど何されてんだろ……。
アシールを縛り上げるためのロープを探しながらヴァニオンは汗びっしょりだ。父子が何をしているのか気が気でなく、どっと疲れも噴き出してくる。
犯されなくて良かったけど肝は冷えるし聞きたくなくても聞こえてくるし……。もうオレ有給取って一時帰国したいんスけど……あの親子放っておくわけには行かねぇわな……。
***
「……さて、何がどうなっているのか、どちらか説明してくれぬか」
……騒動がおちつき、小一刻ほど後のこと。
食器類を片付けさせ、冥王は中央のテーブルに尻を載せるようにもたれかかった。
ニセ宝石商のイケメン・アシールはというと、完全降伏状態で床でお縄についている。
状況説明を求められていると感じたヴァニオンはちらりとナシェルを窺った。ナシェルはもう会話にくわわることすら放棄したように長椅子の隅で膝を抱え放心している。薬を盛られて意識が飛び、周囲に迷惑をかけたことをさすがに反省しているようだ。
ヴァニオンは溜息をつき、直立不動で口を開いた。
「……寄港地で、俺がスリ少年に財布を掏られたって話は聞いてますか」
「それは昨夜ナシェルから聞いた」
「俺、三等客室に降りたらたまたまそのスリの子供と船室が一緒で鉢合わせしたんですよ。その子供に事情を聞いたところ、上納金を収めてる犯罪グループのナンバー2が分け前をネコババして逃げ、この船に乗ったらしく、それを追いかけて乗船してきたとかで」
「犯罪グループ?」
「港町のゴロツキ集団でしょう。孤児たちにも置き引きやスリなんかもさせてるようです。ナンバー2となると、そこそこ頭の切れる奴らしく金庫番をしていて、容姿に自信があるのか結婚詐欺やら女性をひっかけて儲けていると。
んで、その逃げたナンバー2の使っている偽名の一つが「アシール・アルファーヴ」だって言うんですよ」
「結婚詐欺……」
冥王は床で後ろ手に縛られ観念しているアシールと、膝を抱えしょげているナシェルを見比べた。
「どうして結婚詐欺なんぞにナシェルが引っかかった……?」
「引っかかってなどおりませぬ」
何も聞いていないように見えたナシェルが、少し顔を上げて反論した。
「引っかかったフリをしていただけです。デカい宝石持ってたし、羽振りが良さそうだったので、逆にこっちが引っかけようとしたっていうか」
「赤裸々すぎる……」
ヴァニオンが思わず突っ込む。もう少し婉曲に言い回せないのか。
「後でもう一回話があるよ……」
王は咳払いして腕を組みなおし、ナシェルは唇を尖らせた。
感想 0
あなたにおすすめの小説
【BL】記憶喪失中に「男の婚約者なんて気持ち悪い」と僕を蔑んだ元婚約者へ。お望み通り消えてあげましたので、今更記憶が戻ったと泣きつかれても
記憶を失った婚約者・アルヴィンから向けられたのは、見知らぬ他人を見るような冷たい視線と容赦ない罵倒の日々だった。
それでも「記憶が戻れば、あの優しい彼に戻るはず」と耐え続けたニコラス。
しかし、アルヴィンがみんなの前でニコラスの手紙を破りながら嘲笑した時、ついに限界を迎える。
「僕が愛したアルヴィンは、あの日死んだんだ」
誰も信じられなくなったニコラスは隣国へ留学することになった。
留学先で過去を乗り越え、新しい幸福を掴んだニコラス。
そこへ「記憶が戻った」と涙を流すアルヴィンが現れるが、すでにニコラスの心には少しの情も残ってなくて―――……。
【BL】惚れた男に嫌われたくなくて「男遊びならしてもいい」と言ったら、本当に男遊びを始められて絶望している侯爵令息の話
多額の借金で没落寸前の実家を救うため、結婚相手を探していた男爵令息のラキにカムグロス侯爵家から求婚状が届く。
お相手は同性のディートリヒで、初対面で歓迎されるどころか冷たく突き放されてしまう。
『必要最低限関わるな』
『愛人を作るな』
『男遊びならしてもいい』
ディートリヒから実家の借金を完済する条件を言われたラキは、学園で令息たちとの交流を満喫中。
褒め上手なラキの周りには可愛い令息が集まり、推し活状態に。
一方、ディートリヒだけが嫉妬で胃を痛める日々。
ラキへの恋心を隠し続けた不器用侯爵令息に、幸せな未来は訪れるのか?
.
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『嘘の病気で同情を買うな』と私を死に追いやった婚約者、私の墓標の前で額を叩きつけ、血の涙を流して号泣する大破滅!
婚姻届を出す前日、久世景人はようやく、十年遅れの婚約指輪を私の指にはめた。
銀色の輪が薬指に滑り込んだ瞬間、私は照明の下で光るダイヤをぼんやり見つめた。長く続いた待ち時間が、やっと終わったような気がした。けれど次の瞬間、彼は私の手を見下ろし、まるで似合わない品物を評するように静かな声で言った。
「正直、澪の手ってあまりきれいじゃないよな」
私は言葉を失った。
景人はそのまま私の指先を取ると、さっきはめたばかりの指輪を抜き取った。十年待ち続けた指輪は、彼の手のひらの上で冷たく光っていた。
「この指輪、瑠奈の手にあったほうが似合うと思う」
私は手を引き戻し、信じられない思いで彼を見た。
「どういう意味? 瑠奈と結婚するつもりなの?」
景人は目を伏せ、指輪の縁を指先でなぞった。まるで、たいしたことではない問いを少し考えているだけのようだった。
「そこまでじゃない。ただ、会えない時間が長くなると、どうしても瑠奈のことを考えるんだ」
その瞬間、私は自分がどうやってあのタワーマンションを出たのかさえ覚えていない。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。