【R18•完結】「子どもさえできれば自由にしていいから」と言った夫が執着溺愛して離婚してくれません

紀ノこっぱ

文字の大きさ
21 / 47

20.君から★

しおりを挟む
 ぱたり、と乱れたシーツの上へ無造作に手が落ちる。

 私が寂しさを匂わせて行為に誘ったせい?
 埋め合わせる義務でもあるかのように、今夜のシリルはとても執着深い。
 わたしの中の、『なにか』を探すように。
 満たして、満たして、『なにか』がこぼれ落ちないかと狙うように。

「なかなか、認めてくれないから、僕のお姫様は」

 シリルは的確に追い詰めて私を乱す。
 我慢できず、背を逸らし弓形になって、震えた。
 目尻の涙を優しく拭うシリルは意地悪な笑顔をしている。

 腰の動きがぴたりと止められた。
 隘路から名残を残して楔が引き抜かれる。

 手を引かれ起こされて、私はシリルの太ももを股がされた。

「……あの、あなた、これは?」

 横腹だけを、かすかに……水面に触れて波紋ができないよう気をつけるみたいになぞられる。

「……あ、……ぁ」

 興奮で敏感になってしまった身体は、それだけで勝手にくねる。
 けれど。
 足りない?
 喉から、はっは、と、白く霞みそうな熱い吐息が漏れる。

「挿れてもいないのに、僕の太ももに擦り付けて。淫らだね」
「ちがうから、私、そんなことしていない……」
「ふうん、じゃあもう、無意識で求めちゃっているんだね?」

 じり、じりと、あわいから受ける刺激はシリルが太腿を微動させているせいだと思っていた。
 でも、ちがう。
 私、我慢できなくて、腰が……勝手に?

「頑ななのは、なぜ? 誰も困ることじゃないのに」

 くす、と喉奥で笑いを転がして、シリルは続ける。

「君の身体はこんなにも素直に僕を覚えていってくれている」

 ふわっと後頭部を手で掬われる。
 音を楽しんで簡単に触れる唇へのキスもされた。

「あ……」
「こわくない、甘くして、溶かしてあげる」

 シリルが、私の蜜で濡れそぼった太腿を持ち上げる。

「ここ、すりすりってしてごらん……?」

 従う気はなかった。そんな恥ずかしいこと、できるわけない。

「あ、……あッ、あぁ……なんで」

 身体の動きが、意思のもとに収まらない。シリルの太腿で、私はあわいを滑らせる。
 しかも、それが……気持ちいい。

「僕の言うとおりにしちゃって……素直になってきたね」
「そんなつもりは……」
「なかったの? でも、もう……たまらないんでしょ?」

 ぎゅっと、素肌が密着するように抱きしめられた。
 腰骨のすぐそばに、たくましく主張するシリルのが押し付けられる。
 硬くて、熱い。

「君がかわいいから、……惑わされて、僕は、こう。君って無自覚なんだから……」

 否定に首を振れば、シリルは意地悪にため息を吐いて取った私の手を『それ』に導いた。

「──っ!」

 その熱を、手で触れるのははじめて。

「触ったこと、なかったでしょ。……君の奥には、毎晩これでたっぷりキスをあげてるけど」

 その熱さの脈動まで伝わってきそう。
 する、と親指を滑らせて触覚で確かめる。

「ん。君の指、ふわふわだ……」

 離そうとしても、シリルの指が絡んで許されない。

「震えてるね……嫌だった?」
「いやじゃ……ない」

 なに言っているのかしら、意地悪に困っているのに。

「ふうん。……じゃあ、どうしたい?」

 目を合わされた。深みのある瞳の色は、暗がりに紫水晶のよう。
 うっとりとする私を、まだ知らないところに誘う。

「……あの、ね」
「なに?」
「…………っ」

 恥ずかしくて、言葉がかすれて音にならない。
 こんなこと、口にできない。

「欲しいなら、君からおいで」

 どうしよう。
 そんなことをしてしまったら……彼が最初に言ったみたいに、行為に溺れているみたい、じゃない。

「ほら、やっぱり無自覚だ、僕を焦らして」
「あ! あなたってひとは……っ」

 自分こそ、さんざん煽って、焦らしたくせに。

「ほら」
「あっ」

 シリルの指が、背骨をつっと、素早く引くようになぜていった。
 ゾクゾクする。
 もどかしくて、足りなくなる。

 熱を求め、彷徨う眼差しを、シリルに捉えられた。
 見つめあって、吸い寄せられる。心が、引きずられて、身体が……

「ダリア」

 だめ、だめ……この一線だけは守らないといけなかったのに。
 義務でしていなきゃ、いけなかったのに。

「……ぅ」

 私は、膝で身体を持ち上げて、シリルの中央に合わせると、深く腰を下ろした。
 欲しくて、蜜を滴らせていた花は、しなやかな茎の先端を咥え込んでいく。

「──やっ、ふか……っ、あっ、あ──」

 たった、一息で。
 すべてがシリルに書き換えられる。
 柔らかな内壁は、シリルの硬い熱を迎え入れた瞬間、白い炎を宿したみたいに熱く潤って、深い場所のキスを何度も欲しがる。

「ああ……いいね。君も気に入ったね?」
「ああっ、ああ……っ、やああああ」

 こんな快楽、逃れられない。戻るなんて……もうできないっ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...