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1巻
1-1
プロローグ 運命の出会い
「おい平民! 物品鑑定のノルマを千個追加だ! 明日までに終わらせろ!」
「なっ──!?」
ドラムド王国のとある倉庫で働いている、しがない鑑定士である俺――アルトに、貴族の上司が理不尽に怒鳴っていた。
「ちょっと待ってください! 俺の魔力量じゃ千個も鑑定なんて──」
「うるせぇ!! お前みたいなヤツでも、グラウス帝国の連中と戦争が近いのは知ってんだろ!? 知ってるよな!? お前は栄えあるドラムド王国の一員だもんな!?」
「……はい。知っています」
確かにこのクソ上司の言う通り、隣国のグラウス帝国との戦争が間近に迫っている。
理由はよく知らないが、ドラムド王国が一方的に宣戦布告をしたらしい。どうせ偉い連中同士が金や物資や土地の利権なんかで揉めたのだろう。貴族じゃない俺には関係ないことだ。
「だったらキリキリ働け、平民!!」
クソ上司は吐き捨てるように怒鳴りつけて、バタン! とボロボロのドアを閉めた。
上司の足音が遠ざかっていく。追加のノルマを運んでくる平民を探しに行ったのだろう。
すきま風が吹き抜ける倉庫に俺一人。周囲には、鑑定されるのを待っている品々の山。
「これに追加で、千個……」
どう考えても無理だ。魔力を極限まで絞って鑑定魔法を使ったとしても、一日に九百個が限界。それ以上は、魔力が尽きて死にかねない。だけど、終わらなかったら、給料なしで飯抜き。
目の前にあるのは使い道のよく分からない部品や謎のアイテムばかりだ。クソ上司が戦争に言及したってことは、軍事関連の品だろう。適当にやったり、鑑定したと嘘をついたりすると、バレた時に戦犯扱いになる。そうなればすぐに処刑だ。
「終わらせる以外に、生き残る道はない、か……」
蜘蛛の巣が張る天井を見上げながら、俺はそう呟いた。
ドラムド王国は貴族主義こそが至上とされている国だ。平民は一生奴隷まがいの扱いを受け、貴族のために命をかけて働き、血税を納め続けるしかない。
いつもより頭痛がひどい。ずっと視界が揺れている。だけど、目眩が、なんて言っていられる状況じゃない。
「これが俺の仕事だからな……」
はぁ……と大きな溜め息をこぼして、背筋を伸ばす。
俺はペシン! と強く自分の頬を叩き、その痛みで意識を保ちながら、鑑定待ちの物品の山に手を伸ばした。
──その時。
「やめた方がいい」
不意に、何者かに後ろから手を掴まれた。
「なっ!?」
「これ以上鑑定魔法を使ったら、魔力切れを起こしてキミの命に関わる」
背後に人がいる!? こいつ、いつの間に……!?
振り払いながら叫ぼうとしたが、その前に手で口を塞がれてしまった。
「暴れないでくれ。これは、キミのためでもあるんだ」
落ち着いた調子の、男の声だった。
こいつは、いったい……
「キミの実力は見させてもらった。帝国に来ないか?」
俺の実力? ていこく? なんの話だ?
何がなんだか分からない俺に、男はなおも言葉を続ける。
「我々の国は、常に実力のある者を求めている。キミなら金持ちに──この国で言うところの貴族になれると僕は思っているよ」
貴族になれる? 平民の俺が? 本当に意味が分からないのだが……
「混乱させてしまって申し訳ない。これから手を放すが、暴れないと約束できるか?」
口を塞がれて言葉を発せないため、コクリと首を縦に振る。
ゴツゴツとした男の手が、俺の口元からゆっくりと離れていった。
「振り返らないでくれ、いいな?」
「……分かりました」
背後を確かめたい気持ちはあるが、不要な動きはしない。いつ死んでもおかしくないほどの激務をさせられてはいるが、死にたいわけじゃないからな。
今はそんなことよりも、情報収集が先だろう。
「俺が貴族になれるというのは、どういう意味でしょうか?」
「言葉通りの意味だよ。我々の国は実力主義だ。生まれや身分に関係なく、実力があれば出世できる。キミが望みさえすれば、相応の地位を手に入れることができるだろう」
実力主義? 我々の国? 出世?
これはあれか? クソ上司が考えた新手の業務妨害か? 貴族様お得意のお遊びか?
その可能性は高いが、俺の困った顔が見られる正面の特等席には鑑定品の山があるだけで、誰もいないように見える。
背後にいる男の物腰からも、貴族特有の傲慢さを感じない。
……ダメだな。悩むにしても、情報が少なすぎる。このあとの仕事に備えて魔力の節約をしたかったが、仕方がないか。
俺はできるだけ魔力を細くして、背後にいる男の足元に流した。自分の魔力を対象に流すことで、鑑定魔法を発動できるのだ。
すると、俺にしか見えない鑑定結果の画面が眼前に表示される。
──────────────────────────────────────────
【 名 前 】アルズ・ベラルト(31歳)
【 職 業 】帝国軍士官:5/11(少佐)
【 技 術 】剣術:24/40 潜入:40/40
──────────────────────────────────────────
「なっ──!?」
──いや、ちょっと待て! 帝国軍士官!?
ていこくに来ないか? ってのは、グラウス帝国のことか!?
どうして敵対している国──それも、こちらが一方的に宣戦布告をしたせいで、戦争まで秒読みとなっている国の人間が、ここに!?
能力を見る限り、どうやらこの男は諜報員で間違いなさそうだが……潜入の技術がレベル40って相当な実力者だぞ!?
俺は震えた声で問いかける。
「……俺を、殺す、つもりですか?」
「いや、それはないな。もしそうなら、声なんてかけていない。ただ、一つ聞きたいんだが。僕に何かしたか?」
――なっ、バレた!?
「すみません! いつのもの癖で鑑定を……」
「鑑定? ……キミは、人の鑑定ができるのか!?」
「……? えぇ、できますよ。俺は鑑定士ですから」
男はなぜか、俺が人間を鑑定したことに驚いたようだった。
というか、初めて鑑定したことに気付かれたな。違和感程度、と言った雰囲気だが、俺から流れ出る微量の魔力を感知した、ってことだろ? 今までバレたことなんてなかったのにな……
いや、そんなことより余計な動きをしたと気付かれたのはやばい! 俺なんかじゃ抗う間もなく殺される!! どうにかして、逃げる方法を探さないと――
「キミにますます興味が湧いた。亡命が円滑に進むよう、僕の推薦状も付けよう」
「……は?」
「我々ならキミを正しく評価できる。帝国に来る気があるなら、闇夜に紛れて南門に来てくれ」
コトン、と何かが置かれる音がしたと思ったら、背後から人の気配が消えた。
ゆっくりと振り向いて見ても、誰もいない。
「これは……?」
床の上に、表面が削られた丸い魔石が落ちていた。先ほどまではなかったものだ。
これって、映像を撮るために加工された魔石だよな? 背後にいた男が、置いていったのか?
再生、してみるか。
魔石に念を込めると、中に映像が映し出される。
そこで俺が目にしたものは……
『はっはっは! 閣下のご威光に乾杯!』
『ははは、乾杯。それにしても、あの平民上がりの鑑定士をこき使って得られた利益は莫大なものだよ。いやはや、さすがはアンメリザくん。平民の使い方が分かっているねぇ』
『平民は搾れるだけ搾れ。私は閣下のお言葉を実行しただけですから』
『くははは。あの平民がいつ死ぬか見ものだな。どうだ、ひとつ賭けでも?』
『いえいえ、常に120%で働かせていますが、最低限の手加減はしているのでそうそう死ぬことはないかと』
『なるほど、ギリギリの見極め、と言ったところか。いやぁ、アンメリザくんは実に優秀だ』
……下品な笑い声を上げながら酒盛りをするクソ上司と、馬鹿な上級者貴族の姿だった。
☆★☆★☆
「このヤベールの街ともお別れ。それがいいよな?」
誰に問いかけるでもなくそう呟いて、俺は街道の暗闇の中をゆっくりと歩いていく。
誰もが寝静まるこんな夜遅くでも、いくつかぼんやりと明かりが漏れている建物がある。大抵は貴族様が通う酒場か、そうでなければ大量のノルマを押しつけられた平民の仕事場だ。どんな人が何をさせられているのかも知らないが、過労による目眩や頭痛と戦いながら仕事しているのは間違いないだろう。
「えーっと。冒険者ギルドがこっちで、クソ上司の豪邸があっち、大通りが一本隣だから、南門はこっちだな……たぶん」
仕事以外のことで倉庫の外に出るのも、ずいぶんと久しぶりだと思う。街のどこをとっても、たいした思い出があるわけでもない。むしろ、思い出したくもないことの方が多すぎる。
「道に迷う心配はあるけど、指定されたのが真夜中でよかったのかもな」
──この街をまじまじと見ずに済むから。
そう思いながら、両手に「はー」と息を吹きかけて、誰もいない道を歩く。
産まれ育ったこの街を離れて、俺は本当に生きていけるのか? 突然現れたあの軍人の言葉は、俺を騙すための嘘なんじゃないのか?
そう思っては立ち止まって、倉庫の方を振り向いて……苦笑いと共に歩きだす。
「あのまま鑑定品の山に埋もれていても、死ぬだけだからな」
藁だろうが、蜘蛛の糸だろうが、掴めるものがあるのなら死ぬ前に掴んでみたい。
俺の苦労を酒の肴に「くははは」と笑っていたクソ上司や上級貴族と、突然現れた敵国の軍人。どちらを信用するのかと聞かれれば、間違いなく後者だ。
南門から少しだけ離れた場所で、巨大な壁を見上げながら周囲に魔力を流していく。
鑑定魔法の結果、雑草が生い茂る林の中に何者かがいると分かった。そこに向かって歩くと、大きな木の陰から、商人の格好をした男が姿を見せる。
「すみません。お待たせしました」
「いや、時間も指定せずに呼び出したのはこちらだ。来てくれて嬉しく思う」
そう言って男はこちらに手を差し出した。俺は素直に握り返して、笑ってみせる。
聞き覚えのある声だった。どうやら彼が、俺を誘ってくれた敵国の軍人らしい。
「いろいろとキミに聞きたいことはあるんだが、それはヤベールの街を脱出しながらにしよう。僕の後に付いてきてくれないか?」
「分かりました」
俺としてもその方がいい。この街にいると、誰かに捕まえられてあの倉庫に連れ戻されそうな気がして、どうにも落ち着かない。
男のあとに続いて歩いていると、不意に彼が立ち止まり、落ち葉の積もった地面に手をかざした。
男の手に魔力が集まり、何もなかった場所に地下へ続く階段が姿を見せる。
「行こうか」
「……はい」
ここまで来て、今更帰るなんていう選択肢はないだろう。
先の見えない地下を下りていく。男が手のひらに光の球を浮かべると、入口がひとりでに閉じた。
彼はこちらを振り返って口を開く。
「名前はアルトで間違いはないな? 年齢は二十四歳。身寄りはなく、親しい友人もいない。職業はアンメリザ男爵に仕える鑑定士──いや、今はグラウス帝国への亡命希望者か」
「……よくご存じですね」
「キミには申し訳ないと思ったんだが、調べさせてもらった。それが僕の仕事だからね」
潜入の技術がレベル40の彼からすれば、そのくらいたいした手間でもないのだろう。
「それでなんだが。キミは僕の名前を知っているか? いや、知っているな?」
「……ええ、鑑定しましたから。アルズ・ベラルト少佐、ですよね?」
「あぁ。その通りだよ。そしてその名前は、本国であるグラウス帝国の人間しか知らない本当の名だ。潜入中に使っている名前もあるが、キミにそっちを教える必要はなさそうだな」
ベラルト少佐の雰囲気をうかがう限り、怒っているわけではないらしい。
亡命希望者を相手にドラムド王国の情報収集をしている。もしくは俺個人に面接をしている、と言ったところか?
「次の質問だ。南門の側で隠れていた僕の位置を、キミは瞬時に見破っていたな。差し支えなければ、その手法を教えてはもらえないか?」
「え? えーっと、見破った、ですか? 俺はただ、鑑定結果が見えた方向に向かっただけです。隠れている場所を見破ったわけではないですね」
そう答えたら、少佐の足が止まった。振り向いた顔が、なぜか驚いているように見える。
俺、何か変なことを言ったか?
「なるほど……キミのことは入念に調べたつもりだったが、表層すら見えていなかったらしい」
「え……?」
どういう意味だ?
身寄りのない二十四歳の鑑定士。その言葉に、俺の全てが詰まっていると思うのだが……
「回りくどい問答はやめよう。一番重要なことを聞かせてもらいたい。キミの″鑑定魔法〟では、何ができるのかな?」
「鑑定で何が、ですか?」
鑑定でできること……何かを鑑定する、それ以外にないよな?
……質問の意図が読めない。
俺の困惑を察知したのか、ベラルト少佐は再び口を開いた。
「──いや、質問を変えよう。僕に鑑定魔法を使用した。そう言っていたね? その結果を教えてもらうことは可能だろうか?」
「ええ、もちろんいいですよ。口頭では大変なので、何か書くものを借りられますか?」
「これでいいかな?」
「ありがとうございます」
最低限の荷物しか持ってこなかったからな。少佐が紙とペンを持っていて助かった。
少佐に魔力を流して、先ほどより深く鑑定を施す。それを書き写して……
「できました。ベラルト少佐の鑑定結果です」
「ありがとう……」
思えば、人間の鑑定結果を誰かに見せるのはずいぶんと久しぶりだ。昔、上司が見せろと言うから紙に詳しく書いて見せたのに、「適当なことを書くな!」と激怒されたっけ。それ以来、物品にしても最低限の品質しか報告しないようにした。
少佐も、激怒までは行かずとも、気分を害さなければいいのだが……
彼は紙をまじまじと見て、訝しげに尋ねてくる。
「申し訳ないが、ここに書いてあることについて説明してもらえないか?」
「え? あっ、すみません。もちろんです」
初めて結果を見せる相手になら、説明も必要か。
俺は紙に書いてある項目を指差しながら、順に話す。
「上から順番に、【名前】と年齢、現在の【状態】と【能力値】。その下にあるのは、これまでに積み上げてきた【技術】。最後に【素質】、つまりその人が持つ才能のようなものが書いてあります」
もう少し深く鑑定すれば、奴隷にした時の価値やこれまでの経歴なんかも見られるが、本人が知っても仕方がないため見ていないし、書いてもない。
ベラルト少佐は【素質】の欄を見ながら言う。
「剣術より弓術の方がランクが高いね……つまり僕は、剣術を学ぶよりも弓術を学んだ方がいい。そういうことかな?」
「いえ。確かにそのような鑑定結果が出てはいますが、ゼロから始めるならどっちがいいか。その程度です。素質よりも、努力した時間の方がはるかに重要ですから」
「……なるほど。ゼロから始めるなら、か──もしかするとキミは、女王陛下の側に立つべき人物なのかもしれないね」
「え……?」
少佐が小さく笑った?
「いや、こちらの話だよ」
少佐はそう言って、自分の鑑定結果を見ながらゆっくりと歩き始めた。
考えを巡らせているようなその横顔に何も言えなくて、俺は少佐の後ろを静かに付いていった。
そうして、十分ほど歩いただろうか?
階段を上がって通路を抜け、たどり着いた先に見えたのは、丸太を積み上げたような小さな家。
「本格的な移動は明日からにしよう。夜も遅いしね」
ベラルト少佐は大きく伸びをして、凝り固まったらしい肩を回しながら楽しそうに笑った。
どうやらここは、ヤベールの街から少し離れたところにある森の中であるようだった。外壁の張り出しから放たれる光が、木々の向こうにぼんやりと見えている。
背後にあった通路の出口は、入口と同じようにいつの間にか消え去っていた。
「この家は?」
「僕たちの隠れ家だよ。ちょっと準備してくるから、そこに座っていてくれ」
「分かりました」
家の中へ入っていくベラルト少佐を見届けたあと、近くにあった切り株のような椅子に座って、ほっと息を吐く。
空を見上げると、無数の星が静かに輝き、二つの月が俺を優しく照らしてくれていた。
──ゆっくりと空を見るなんて、いったい何年ぶりだろう? 木々の揺れる音や木の葉の擦れ合う音が、今は心地好く感じる。
ぼんやりとしていると、ベラルト少佐が戻ってきて対面の椅子に座った。
「寝る前に酒を飲みながら話でも……と思ったんだが、あいにくとココアしかなくてね」
「あっ、いえ、すみません。いただきます」
受け取ったカップにゆっくりと口を付け、はぁー……と白くなる息を空に吐き出す。
ベラルト少佐は俺たちの間にある焚き火台に薪をくべ、魔法で火を付けた。
「個人的な質問で申し訳ないんだが、キミはどうして鑑定士に?」
「……」
俺が鑑定士になった理由、か……
「これも、亡命に関わる質問、ですよね?」
「いや、僕の個人的な関心で深い意味はないよ。だから、答えたくなければ無理に答えなくてもいい」
「いえ、そういうわけではないのですが……」
明確な理由なんてないし、何より、面白い話じゃない。
「それしか生き残る道がなかった。ただ、それだけです……詳しく、聞きますか?」
「あぁ。キミが辛くないのであれば、聞かせてもらうよ」
「分かりました」
胸の中に溜まっていた何かを吐き出すように、ふぅー……とため息を吐いて、ココアが入ったカップを傾ける。
バチバチとはぜる焚き火を眺めながら、小さく笑ってみせた。
「うちの王国じゃよくある話です。平民の両親が早くに死んで子供だった俺だけが残され、家を追い出されて道の上で寝起きをする生活が始まりました。同じ境遇の子供たちと固まり、物乞い紛いの生活を続けていましたが、ある日突然、貴族様の兵に捕まって『鑑定魔法を覚えた者には、飯をやろう』と言われました。三日で覚えられなかった者は、どこかに連れていかれて。なんとか俺や他の何人かの子供たちが覚えましたが、それからは鑑定の仕事をこなす日々の始まりですね」
毎日のようにノルマが増えて、人が倒れる。人が倒れて、またノルマが増える。
「俺らの命なんて、本当に使い捨てです。自分自身の鑑定はできないから実際のところは分からないのですが、俺には鑑定の才能があったのでしょう。気が付けば、俺一人だけが生き残っていた」
最後の最後まで、人が補充されることはなかった。
家族との思い出なんてもはや残っていない。
あの壁の向こうにあるのは、辛い日々の記憶だけ。
「でも、最後にいい思い出ができたみたいです。俺を認めてくれる人と出会えました」
最初こそ冗談かと疑っていたが、ひとときの笑いのために地下通路なんて用意するはずがない。
この人は本当に、俺のことが必要だと思ってくれたのだろう。
「僕が責任を持って、グラウス帝国にたどり着けるよう手配するよ。必ず」
軽く空を見上げたベラルト少佐は、外ばかりを照らす櫓を睨みつけているように見えた。
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