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7話 ラインハルトとの語らい

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 久しぶりの舞踏会……私はお兄様に連れられて参加したのだけれど、なんと参加して早々、ラインハルト様と会話することになった。あの、全ての貴族令嬢の憧れと言われている公爵令息様と。

 まあ、全ての貴族令嬢の憧れの的というのは比喩かもしれないけれど、彼と結婚したいと考えている令嬢は相当数に上るはずだ。これだけは間違いない。


「なるほど、レレイ殿の趣味は射的なのですか?」

「はい、左様でございます。あとは、ビリヤードとダーツも趣味と言えるでしょうか」

「そうなんですね。貴族令嬢の嗜みとしては珍しい部類になるでしょうね」

「はい、ですのであまり、表沙汰にはしていないのですが……」


 クローヴィスやアルカは知っているけれど、クローヴィスと婚約してからはその趣味とは離れていた気がする。理想論を押し付けてくる彼は、私の趣味を否定していたから。

「おや? では私に話しても良かったのですか?」

「そうですね……私は自分の趣味についての話を封印せざるを得ない立場でしたから。それから、解放された反動でしょうか」

「なるほど、そういうことですか。お噂は聞いております。なかなか、大変だったとは伺っておりますが……」


 クローヴィスとの婚約解消をラインハルト様に話してはいないけれど、やはり知っているのね。そして彼は、すぐに事情を察知してくれた。もしかすると、ある程度の束縛を受けていたことも知っているのかもしれないわね。


「クローヴィスとは、もう終わった関係ですので……彼は確かに、私の趣味を認めてはくれませんでしたが」

「やはりそうでしたか。まあ、その部分については個人の感想になってしまうので、私からは何とも言えませんが……射的やビリヤード、ダーツという趣味をお持ちであるというのは、非常に興味深いと思います」

「ほ、本当ですか……?」

「ええ、私も嫌いではない遊びになりますので。今度、一緒に如何ですか?」

「そ、それはもう……! ラインハルト様が宜しければ、喜んで!」

 趣味の話でこんなに盛り上がるとは思わなかった。クローヴィスとのことを知られているのは少し残念だったけれど、それは仕方ないわよね。ラインハルト様が本当にダーツなどを好きなのかは不明だけれど、ある程度の経験はあるのだと思う。そして、私に合わせて話してくれている……少し、卑屈な考えかな?

 私はそんな彼を現在、独り占めしてしまっている……普通ならば優越感に浸っても良い状況だけれど、後ろめたさというか、申し訳なさの方が先立ってしまうわね……。

 周囲の貴族令嬢が妬んでいないかとか、引きこもっていた分際で、いきなりラインハルト様と話しているのを不公平に感じていないかとか。

 おそらくは、私の思い過ごしだと思うけどね。どうしても、クローヴィスとの一件以来、卑屈になる部分が大きいわね。

「レレイ嬢、大丈夫ですか? 病み上がり……というわけではないでしょうが、舞踏会は幾つか欠席していたと聞いております。無理をなさっているのではありませんか?」

「いえ、大丈夫でございます。お気遣いさせてしまい、申し訳ありません」

「いえ、それは良いのですが……」


 いけない、いけない……私はせっかくの楽しい時間を無下にしてしまうところだった。これは、周りの貴族令嬢に対しても失礼だったわ。

 もっと、ポジティブに考えなきゃね! 今度、ラインハルト様とビリヤードやダーツを楽しめる。これはとても楽しみなことだし。クローヴィスとか、アルカに会ったりすることはないと思うけれど……大丈夫よね?
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