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8話 クローヴィスとの鉢合わせ その1

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「ラインハルト様……とてもお上手でございます!」

「そうですか? まだまだ、レレイ嬢には敵いませんが、褒めていただけると嬉しいものですね。ありがとうございます」


 私は貴族街にある遊戯施設でビリヤードを楽しんでいた。そのお相手は、以前の舞踏会で約束を交わしたラインハルト様だ。

 私は休日を利用してラインハルト様と遊戯施設内で遊んでいるのだ。貴族の方々がチラホラ居るけれど、基本的には男性が多く、貴族令嬢はあまり入らない場所とされていた。

 ビリヤードやダーツなどが貴族令嬢の間で流行っていないのはその為だ。そもそも、遊戯施設に来る令嬢が居ないのだから、流行りようがない。そんな中、私はラインハルト様と一緒にビリヤード勝負をしている。異端児扱いされてしまっても文句を言えない立場だろう。

 それにしても……ラインハルト様はビリヤードが非常に上手かった。昔から趣味としてやっている私とそこまで実力が変わらない程に。ビリヤードの腕は自信があっただけに、ラインハルト様を尊敬すると同時に少しだけ悔しかった。

「私よりも既に上かと思われます」

「いえ、そんなことは」

「事実です。私はビリヤードは自信がありましたのに……少しショックですね」


「な、なんと……! それは申し訳ないことです……!」


 ラインハルト様はかなり取り乱していた。私に対しても敬語で話してくださるし、お優しいお方だと思う。


「うふふ。冗談ですよ、ラインハルト様。ただし、次の遊戯であるダーツはお手柔らかにお願いしますね?」

「なかなか、反応に困る冗談を行われるのですね、レレイ嬢は。意外でした」

「お褒めの言葉として受け取ってよろしいですか?」

「ええ、もちろんですよ。さて……次はダーツにでも移りますか?」


 ビリヤード勝負は一段落着いたので、次はダーツに目をやるラインハルト様だった。ちなみにビリヤードの結果は一応、私の勝利である。ただし、次にやるときはおそらく勝てないだろうという実感を、持たされてしまっていた。


 ラインハルト様との遊戯はとても楽しかった。私の場合は趣味を行っているのだから当たり前だけれど、ラインハルト様は聞き上手であり、私の長所を褒めてくれるからだ。私を立ててくれているのが、今回のデート? から伝わってくる。

「ダーツも非常にお上手だなんてことはご容赦くださいね。私のメンタル面に影響してしましますので……」

「あははは、それは細心の注意をしなければなりませんね」

「うふふふふ」

「はははははっ」


 私とラインハルト様の間に流れるのは静寂か。私達は笑顔で話しながら、ダーツ広場の前に立った。次に始める遊戯はダーツだ。ラインハルト様の腕がどのくらいなのか、気になるところね。そんなことを楽しく考えていたら……。


「レレイ? レレイじゃないか! やっぱり、ここで会えたか、良かったよ!」


 この声は、クローヴィス……? 私はまだそちらに視線を合わせてはいないけれど、その声の主は確実に私に近づいて来ていた。私をロックオンしているのは間違いないようだ……嘘でしょ、勘弁してよ。
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