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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

08-7.

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「こればかりはどうしようもないな」

 メルヴィンは諦めたわけではない。

 日頃の行いを責められるのはしかたがないと思っているが、同時に、それを他人に口出しをされるものでもないとも思っていた。

「アデラインを悪く言われないのならば、それでいい」

「あら、意外ですわね。ご自身のことも大事になさると思っておりましたのに」

「俺は他人からの評価を気にしないからな」

 メルヴィンの言葉を聞き、アデラインは思わず頷いてしまう。

 ……評価を気にしている方ではありませんわね。

 世間の目を気にしていたのならば、アデラインの待遇は違ったはずだ。もしも、そうであればアデラインは剣を手にすることはなかっただろう。

「では、私もそういたしましょう」

 アデラインはメルヴィンの考えに便乗することにした。

「想いが通じ合ったのだと噂を流してもよろしくて?」

「好きにしてくれ。アデラインのしたいようにすればいい」

「ありがとうございます。心強いお返事ですわ」

 アデラインの意図をメルヴィンは理解しないだろう。

 しかし、それを説明する必要はない。アデラインがメルヴィンの不利益になるようなことはしないと、メルヴィンはよく知っていた。

「……お茶会というのは女性だけか?」

 メルヴィンは気まずそうに問いかける。

 ……なにか気になることでもあるのかしら。

 好きにしていいと言っていたわりには、気にかかることがあるのだろうか。

 アデラインはメルヴィンがなにを心配しているのか、すぐに理解することができなかった。

「私がお茶会に招待するのは女性だけですわよ」

 アデラインは男性を招待することはない。

 それは婚約者がいる貴族の女性ならば、当然のことである。

「ですが、時々、セシリアの護衛と称してディーンたちが参加することはありますわ。毎回ではありませんし、事前の連絡もまともに来ないものですから、今回はどうなるのかわかりませんわね」

 アデラインはわざと非常識な真似をする幼馴染たちを思い出しながら、困ったような表情をしてみせた。

 今回もセシリアに便乗して着いてくることになるだろう。

 幼馴染たちは心配性なのだ。それをアデラインは嫌になるほどに知っていた。
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