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第十四話 役に立つために

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 マリのから精気がなくなる。。
それは、虚ろな目をした顔から一目瞭然であった。

「マ、マリ?」

 彼が呼びかけるものの、返事が無い。
目の前で、手を振っても、焦点があっていない様子を見せる。
その状況にピッタリの言葉を彼は、見出した。

(乗っ取られたやつだ!)

 そんな状況下に置かれれば、誰でも気が付くであろうが、
マリは、霊に乗っ取られた状態にある。
さっき、機嫌が良かったフラグがここで、たったというわけだ。

 小さな揺れはしているものの、動かなくなったマリ。
首をひねりながら、彼は色んな視点から見たりしていた。
決して、変態行為ではない。

───シュン!

 マリの杖から魔法陣が現れる。
何重にも重なり、複雑な模様で回転している。

───ビュン!

 俄然として氷が、くないの様に飛んだ。行き先は、当然少年の体。
右足だけを上げて、軽く避ける。頑丈に出来ていそうな床に、強く突き刺さった。

「これは、氷属性か?」

 彼が、使える氷属性の魔法とは、少し違った。
彼の場合は、対象を冷やすというものであるからだ。

「くそ、浄化魔法教えてもらうべきだった......」

 後悔を軽い愚痴として漏らしただけの発言ではあるが、
その瞬間、体から力が抜けたように、マリは倒れた。

「は?」

 思わずの出来事に、彼の理解が追い付かない。
よくあるような「目を覚ませ!」系のやつで、長引きそうな気がしていたからだ。

 困惑しつつも、マリに近寄る。
マリには申し訳ない話だが、一応、警戒はしていた。

「うぅ......」

 悪夢でも見ている様に、うなされていたが、
すぐに意識を取り戻して、目を開ける。

「せ、先輩? ......先輩!」

 頭を激突させて、彼の胸に抱きつく。そして、彼は普通に、痛がる。
だが、涙を流していたマリに釣られて、彼も頭を撫でてしまう。
そうすると、さらに、がっしりと抱き着く。

「こういうのは、もう少し頑張って、助けてからじゃないのか?」

 彼が見てきた、アニメなどの感動とは程遠い。
「くそ、〇〇を攻撃するわけには、いけないし、どうすれば......」
と、考えつつ、ダメージを食らいながらも、何とか助けるとかが定番であろう。

 それに比べて彼は、ノーダメージで終わらせてしまう。
ケガをしない事に、越したことは無いにしろ、
無双できるような実力でない者が、こうなると、カッコ悪く見えてしまう。
それでも、マリが泣いているので、形だけは出来ていた。

「先輩、浄化魔法使えないから、グスン。もうダメかと......」
マリは、また泣き出す。それも、脇の近くである。

「おい、ちょっと待て。そこで泣いたら、
右脇の汗だけ、スゴイ人みたいになっちゃうから」

 彼は、遠慮なくマリを引きはがした。
理由としては、単に恥ずかしいという気持ちもあった。
一息ついてから、ステータスが開かれる。

「ステータス」

─────────────────────────────────────
名前未設定 レベル13

肉体強化:160
魔力:210
魔法行使力:270

行使魔法:全属性攻撃魔法・軟化魔法・硬化魔法・浄化魔法・解除魔法
スキル:魔力変換(体力・空気) 攻撃魔法対象範囲の拡張 攻撃魔法の連発
魔法陣対象移動 暗眼 遠目 毒耐性 感電耐性 呪い耐性 乗っ取り耐性
─────────────────────────────────────

「って、何ですか!」

 マリがさっきの様子とは一変して、ステータスを指さす。
行使魔法とスキルが、昨日よりもかなり増えていた。

「浄化魔法、それに、解除魔法って! 
さらに、私が乗っ取られたのに、何で先輩が耐性つけてるんですか!」

 マリは理不尽な文句を言っているようだった。
それでも、気持ちが分からなくもない発言。
人の不幸を見て、耐性を付けるなんて現象であるわけだ。

「浄化魔法と解除魔法は、私の役目だったのに......」
悔しそうに、マリが下を向いて言う。

 その言葉から故意に、彼の役目が無い、
クエストを選んだ事が、容易に推測できる。
マリも失言であることに気づいたらしく、慌てて口を抑えた。

「はぁ......。マリ?」
彼は、ため息をついて、マリを見つめる。

「だって先輩、私、何も役に立てないから......」
うつむいたまま、マリはボソッと言った。

「マリ? 別に役に立とうとしなくていいから。
マリは付いて行きたいから、付いて来るんだろ。
それなら、突き放したりなんて、絶対にしないから」

 彼はずっとマリの目を見つめたまま、言う。
マリは、目を大きく開いた。泣き目である事もあり、綺麗に輝かせる。
この青い部屋でも、マリの目の光彩が水色であることが、分かる。

「先輩!」

 再度、胸にタックルを決めた。
今日で、マリが泣き虫であることが判明したのである。
そして、マリは忘れているであろうことがあった。

「マ、マリ?」
「は、はい。何でしょうか?」
彼の胸から顔を離すと、上目遣いで見る。

「まだ、クエストクリアしたわけじゃないんだけど......」
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